2012 Fiscal Year Research-status Report
サンゴから放出される褐虫藻の遊泳ステージ変化と次なるサンゴへの誘引・共生
Project/Area Number |
24570028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小池 一彦 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (30265722)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 洋 独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所亜熱帯研究センター, 任期付研究員 (00583147)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | サンゴ / 褐虫藻 / さんご礁 / 白化 / 渦鞭毛藻 |
Research Abstract |
最初に,沖縄県石垣島で採取した多くのサンゴ(6種)を水槽実験に供し,定常状態,その後の高温ストレス下での褐虫藻の放出パターンを調べた。また,放出された褐虫藻の形態を詳細に観察した。その結果,定常状態では消化を受けた褐虫藻と,通常の形態の褐虫藻の二つが放出されること,一方,高温状態では,通常の形態の褐虫藻の比率が高くなることが分かった。それを受け,褐虫藻の放出が顕著であった2種のミドリイシ属サンゴをさらなる水槽実験に供し,より詳細に放出される褐虫藻の形態を観察し,新たに導入した顕微鏡光合成活性装置により,個々の細胞の光合成活性を見積もった。その結果,定常状態下で放出される,消化状態の褐虫藻においては光合成活性は検出されなかった。よって,これらサンゴは,特にストレス状態に無くても,体内の褐虫藻を光合成しないまでに消化し,それを遺棄していると思われた。これはサンゴに本来備わる褐虫藻調節機構かもしれない。一方,高温ストレス下で放出された褐虫藻は,形態がほぼ健全であるが,その光合成活性はやはり低かった。しかしそのような群集中にも,健常な光合成活性を示す細胞が散見され,これらは,放出後遊泳状態に変化し,自由生活を営めることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた水槽実験は全て成功し,示唆に富む結果が得られている。特にサンゴからは「消化された褐虫藻」が多く放出され,その生物学的意義を見出したのは初めてのことである。しかしながら,本来の目的である,放出された褐虫藻が自由生活に移行し,それが次なるサンゴに共生する,という点においては,自由生活状態に移行できるところまでは確認できたが,その次につながる培養株の作成には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
サンゴから褐虫藻が放出されることと,その生物学的な意義はこれまでの検討で考察が可能である。今後は,労力を要する定量的な水槽実験を減らし,もう少し多種多様なサンゴから放出される褐虫藻を得たいと思う。そこに置いては,定常状態で放出される「健常な褐虫藻細胞」に注目し,それらの遺伝子クレードを解析するとともに,培養株を作成し,それがサンゴに共生する能力を持つかを調べていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
サンゴから放出される褐虫藻を得るために,1~2回程度,沖縄県石垣島に赴く。そのための旅費を計上する。今年度は定常状態で放出される褐虫藻に注目し,その遺伝子クレードの判別に物品費を用いる。また,培養株の作成・維持にも消耗品を計上する。
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