2012 Fiscal Year Research-status Report
植物含窒素化合物の中心代謝から特異代謝への代謝アロケーション調節機構の解明
Project/Area Number |
24570041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山崎 真巳 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (70222370)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 代謝 / アミノ酸 / アルカロイド / 特異代謝 / リジン / トリプトファン / 脱炭酸酵素 |
Research Abstract |
植物は、種、系統等に固有の多様な物質代謝(特異代謝)を発現しており大きな化学多様性を有する。本研究では、植物体内においてアミノ酸やポリアミン等の中心代謝からアルカロイド等を生じる特異代謝への代謝配分(代謝アロケーション)について、その制御機構の分子基盤を解明することを目的とする。このためにリジンならびにトリプトファン等のアミノ酸から生合成される植物アルカロイドに焦点をあて、アミノ酸代謝からアルカロイド生産への分岐点となるアミノ酸脱炭酸反応およびそれに続く酸化反応等について各触媒酵素機能を分子生物学的に解析するとともに、それぞれの遺伝子発現レベルやタンパクレベルでの制御機構について解析した。 まず、リジン代謝からアルカロイド生合成への分岐点であるリジンの脱炭酸反応について、キノリチジン産生植物のリジン/オルニチン脱炭酸酵(LDC)をコードする遺伝子を単離し組換えタンパクを用いて酵素機能をin vitro解析した。その結果、キノリチジン生産植物の酵素は、ODC活性とLDC活性を併せ持ち、オルニチンよりむしろリジンをより効率よく脱炭酸することが示された。さらに複数の植物のホモログ遺伝子の指定アミノ酸配列の比較から、キノリチジン生産植物では多くの植物で保存されている活性部位近傍のHis残基がPheに置き換わっていることがリジンに対する反応性増大に寄与しており、このことが中心代謝中のリジン代謝をアルカロイド生産に振り分けるために重要なであることが明らかになった。また、トリプトファン代謝からインドールモノテルペノイドアルカロイド(MIA)への分岐点であるトリプトファン脱炭酸酵素について、遺伝子抑制による代謝変動解析を行いアルカロイド生合成経路を推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
リジン代謝からキノリチジンアルカロイド生合成への分岐点となるリジン脱炭酸反応を触媒する酵素の触媒機能を組換えタンパクを用いてin vitro解析した。その結果、キノリチジン生産植物であるホソバルピナスのODCホモログLaODC/LDCは、ODC活性とLDC活性を併せ持ち、オルニチンよりむしろリジンをより効率よく脱炭酸することが示された。さらに複数の植物のホモログ遺伝子の指定アミノ酸配列の比較から、多くの植物で活性部位近傍のHis残基が保存されているが、複数のキノリチジン生産植物ではいずれもPheに置き換わっていることが示された。さらにLaO/LDCのPheをHisに点変異するとLysに対する基質親和性が著しく減少することが示され、このアミノ酸残基がリジン代謝をアルカロイド生産に振り分けるために重要なであることが明らかになった。このことは、本研究の目的である中心代謝から特異代謝へ代謝アロケーションの新しい制御メカニズムを明らかにするとともに植物特異代謝の進化の足跡に関する重要な知見を提供するものである。 また、トリプトファンから生合成されるモノテルペノイドインドールアルカロイド、カンプトテシンについて、トリプトファン脱炭酸酵素を遺伝子抑制したチャボイナモリ毛状根においてカンプトテシン生産量が減少し、同時に変動する代謝物のノンターゲット分析から生合成中間体を推定した。
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Strategy for Future Research Activity |
キノリチジンアルカロイドに関するこれまでの結果をふまえて、キノリチジンアルカロイドと同様にリジンから生合成される他のアルカロイド生産植物についてもODC/LDCホモログ酵素の機能解析を行い、これらの特異代謝の進化と多様化を解明する。さらに、キノリチジンアルカロイドについては、リジン脱炭酸により生じるカダベリンの酸化反応について触媒酵素の候補遺伝子を既に得ているので酵素反応機構の解明並びに細胞内局在性の解析等を進め、リジン脱炭酸とそれに続く酸化反応の詳細を明らかにする。これらの研究を進め、リジン代謝からアルカロイド生合成への代謝アロケーション制御に共通なメカニズムを明らかにする。また、すでに得られたアルカロイド成分変種間のトランスクリプトム解析の結果をマイニングすることにより、中心代謝と特異代謝の間での代謝アロケーションの全体像を把握する。トリプトファン由来アルカロイドについては、トランスクリプトム解析の結果得られた制御因子候補について機能解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は、データ整理等の人件費を10万円程見込んでいたが依託解析を利用し人件費を使用しなかったため、次年度使用額が96,030円となった。これをH25年度分として請求した助成金のうち物品費100万円と併せて使用する予定である。
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Research Products
(14 results)