2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24570052
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
中川 強 島根大学, 総合科学研究支援センター, 教授 (30202211)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 花粉 / 生殖器官 / 小胞 / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
生殖器官の形成は生物種の存続に必須の重要なイベントである。申請者らは植物の生殖器官形成を制御する分子メカニズムを解析するためシロイヌナズナ不稔変異体の探索を行い、花粉表層構造が異常となる新奇変異体を見出した。次いで同変異体の原因遺伝子がERからの小胞出芽に働くSec31のホモログ(ATSEC31A)であることを明らかにし、細胞内小胞輸送が花粉形成に深く関与することを示した。小胞出芽にはSec31以外にSec13、Sec23、Sec24タンパク質が働いている。そこで本研究ではこれら因子のシロイヌナズナホモログの機能について研究を進めることとし、本年度は特にSec24ホモログに着目した。Sec24ホモログはシロイヌナズナに3種(AtSec24A、AtSec24B、AtSec24C)存在し、AtSec24Aの変異でERの形態異常が生じ、破壊により花粉発芽が起こらなくなることが示されている。そのため、本研究ではAtSec24BとAtSec24CのT-DNA挿入は株を用いて機能解析を行った。AtSec24C単独破壊では表現型は観察されなかったが、AtSec24B破壊株では花粉の発芽率が顕著に低下した。さらに、詳細な遺伝学的・細胞学的解析の結果、AtSec24Bと24Cの2重破壊株では花粉の発達が2核期で停止することがあきらかとなった。また雌性配偶体についても解析を行い、AtSec24Bと24Cの2重破壊株では胚嚢が2核から8核になる過程で異常がおこり、発達が停止することが示された。これらの結果より、AtSec24Bと24Cは冗長的に雄性配偶体および雌性配偶体の形成に必要であり、AtSec24Bは花粉の発芽にも関与していることが示された。また、これら遺伝子の機能解析のための複数遺伝子クローニングシステムの開発にも成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナにはSec24ホモログが3種存在しており、それぞれの機能、特に生殖器官に関わる機能を解析することが本研究の目的であった。今年度の研究によりAtSec24BとAtSec24C破壊株の表現型を詳細に調べこれら遺伝子の機能を明らかにすることができた。AtSec24BとAtSec24Cの二重破壊株は致死となるため、植物体を得ることが出来ない。そこでそれぞれの遺伝子座がヘテロの植物を用いて自家充分を行い、両遺伝子が破壊された花粉(雄性配偶体)と雌性配偶体の表現型解析を行うことにした。その際、花粉四分子が分離しないqrt変異を組み合わせることで同じ花粉母細胞から由来する花粉を追跡することが可能となり、それらの表現型の分離パターンを詳細に解析することに成功した。本実験の実施にはAtSec24Bヘテロ/AtSec24Cヘテロ/qrtホモの遺伝子型を持つ植物を作製する必要があり、かなりの時間を要することが予測されたが、幸いなことに順調に実験が進み、研究結果を得ることができた。本実験によりAtSec24BとAtSec24Cの二重破壊において花粉の発達が停止するステージが明らかとなり、これら小胞因子とカロース壁形成との関連について考察することができた。雌性配偶体についても自家蛍光を利用して共焦点レーザー顕微鏡による詳細な観察を行い、発達が停止するステージを明らかにすることができた。これらの研究により、生殖細胞の発達における小胞形成因子の重要性と冗長的な機能を示すことができた。また、これら遺伝子の機能解析のための複数遺伝子を同時にクローニングできるシステムが非常に有効であると考え、複数遺伝子クローニングシステムの開発も行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究でシロイヌナズナの生殖器官におけるSec24ホモログの働きをあきらかにすることができたため、平成25年度以降は小胞形成に働く他の因子、AtSec23sとAtSec31sの解析を進める。AtSec23はシロイヌナズナにホモログが7種存在しそれぞれAtSec23A~AtSec24Gと名付けられている。これらのうち、AtSec23D破壊株において葉の生長が抑制され、AtSec23FとAtSec23Gの2重破壊株において花器官の形成異常が観察されている。そこで今後はこれらの表現型に着目して解析を進める。AtSec23D破壊株では葉における細胞数の減少が見られ、細胞分裂の異常が起こっていることが想定された。また、AtSec23FとAtSec2eGの2重破壊株では花弁の消失、めしべの異所的形成など大きな変化が生じていた。そのため、これら破壊株では葉や花の発達段階で遺伝子発現パターンの大きな異常が起こっていることが考えられた。そこで平成25年度の研究ではマイクロアレイやプロテオームの手法を用いて、野生株と破壊株との比較を行う。 シロイヌナズナにはSec31ホモログが2つ存在し、AtSec31Aが植物体全体で発現して主な機能を担っていることが知られている。このAtSec31Aを破壊するともう一つのホモログであるAtSec31Bの発現が大きく上昇する。この得意な遺伝子発現制御について破壊株におけるマイクロアレイ解析を行い、どのような経路で発現調節が行われているのかあきらかにする。 これらの研究により、植物の発達における小胞形成因子の機能を解明するとともに、それぞれの因子間の発現調節機構についても研究を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
|
Research Products
(7 results)
-
[Journal Article] Development of the Gateway recycling system for multiple linking of expression cassettes in a defined order, and direction on Gateway compatible binary vectors2013
Author(s)
Kimura, T., Nakao, A., Murata, S., Kobayashi, Y., Tanaka, Y., Shibahara, K., Kawazu, T. and Nakagawa, T.
-
Journal Title
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
Volume: 77
Pages: 430-434
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-