2012 Fiscal Year Research-status Report
環境ストレス適応植物アカシアが生産するフラボノイドの生合成と生理生態機能の解明
Project/Area Number |
24570059
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
内山 寛 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (40232871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綾部 真一 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (40050679)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アカシア・マンギウム / 懸濁培養細胞 / フラボノイド生合成 / 5-デオキシフラボノイド / 酸性ストレス |
Research Abstract |
平成24年度は,アカシア・マンギウムAcaia mangiumの懸濁培養細胞を用いてフラボノイド生合成に関わる酵素遺伝子のクローニングとストレスに対するフラボノイドの生産応答の解析を中心に研究計画を立てた。 遺伝子クローニングでは,ポリケチド還元酵素(PKR),I型およびII型カルコン異性化酵素(type I and II CHI),フラバノン3-水酸化酵素(F3H),フラボノイド3'-水酸化酵素(F3’H),フラボノド3' 5'-水酸化酵素(F3'5'H)の6種類の遺伝子のcDNAクローニングを行うことができた。これにより,カルコンからロイコアントシアニジンの生合成に関わる主要な酵素遺伝子のすべてをクローニングできたことになった。これらの遺伝子のうち,2つのCHIとF3Hについては大腸菌発現系を用いて酵素タンパク質を調製して,基質に対する反応性を調べたところ,type II CHIとF3Hは5-ヒドロキシ型に加えて5-デオキシ型のフラボノイドを基質にできることが分かった。 フラボノイドの生産応答では,細胞および培地から酢酸エチルにより抽出された化合物をHPLCで分析したところ,pH 5.8の培地で培養された細胞をpH 3.0の培地で培養することにより,低pHストレスに応答して増加した可能性のある化合物(ピーク)がいくつか検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Acacia mangiumのフラボノイド生合成に関わる酵素遺伝子のクローニングに関しては計画通りに行われ,type Iおよびtype II CHIとF3Hについては組換え酵素を用いた酵素機能解析を行うことができた。さらに,平成25年度以降に計画をしていたフラボノイド生合成の下流で働く還元酵素のクローニングに関して,ジヒドロフラボノール4-還元酵素(DFR)とロイコアントシアニジン還元酵素(LAR)の遺伝子をクローニングすることができた。 フラボノイドの生産応答では,培養細胞の低pHとアルミニウムに対する応答を調査する計画であったが,低pHに応答して増加する化合物の候補を得ることができたが,そのプロファイルを明確にするには至らなかった。また現在までにアルミニウムストレスに対する応答の調査は行っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進展しているので,計画通りに研究を進めて行く。 フラボノイド生合成に関わる酵遺伝子の分析に関しては,さらなる関連遺伝子のクローニングを行い,これまでにクローニングした遺伝子とあわせてそれらの機能解析を行う。また,クローニングできた遺伝子を用いて過剰発現あるいは発現抑制する組換え体(培養細胞または植物体)の作製を中心に研究を進めて行く。これにより,Acacia mangiumにおける5-デオキシフラボノイド生合成系と,フラボノイド成分のストレス耐性への寄与について明らかにして行く。 フラボノイド成分の生産応答については,培養細胞に加えてフラボノイド代謝の組織特異性を考慮して実生を用いた実験系を確立して,低pHやアルミニウムストレスに応答して生産されるフラボノイド成分のプロファイルを明らかにして行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究協力者への謝金の支出が年度末まで確定できなかったため若干の次年度使用額が生じた。当該研究費は次年度に消耗品の購入に当てる。次年度の研究経費は計画通り消耗品の購入と研究協力者への謝金として支出する。
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