2013 Fiscal Year Research-status Report
環境ストレス適応植物アカシアが生産するフラボノイドの生合成と生理生態機能の解明
Project/Area Number |
24570059
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
内山 寛 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (40232871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綾部 真一 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (40050679)
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Keywords | アカシア・マンギウム / 懸濁培養細胞 / フラボノイド生合成 / 5-デオキシフラボノイド / 酸性ストレス |
Research Abstract |
マメ科ネムノキ亜科のAcacia属植物は,一般の植物では珍しい5-デオキシ型のプロアントシアニジン(縮合型タンニン)を主に樹皮に蓄積し,そのことがこの木本植物のストレス抵抗性と関連している可能性がある.そこでアカシア・マンギウムAcacia mangiumの懸濁培養細胞を用いて,フラボノイド生合成に関わる酵素遺伝子のクローニングとその酵素機能の解明,および酸性ストレスに対するフラボノイド生産応答および遺伝子発現の変化の解析を行っている. 遺伝子クローニングでは,新たにフラボノイド生合成の下流で働くジヒドロフラボノール4-還元酵素(DFR)とロイコアントシアニジン還元酵素(LAR)のcDNAクローニングを行うことができた.大腸菌発現系を用いてこれらの酵素タンパク質を調製して基質に対する反応性を調べたところ,DFRは5-ヒドロキシ型に加えて5-デオキシ型のフラボノイドを基質にできることが分かった. フラボノイド生産応答のHPLC分析では,低pHストレス(pH 3.0)およびアルミニウムストレス(pH 3.0, 0.1 or 1.0 mM AlCl3)に応答して細胞内外に増加した代謝物(ピーク)を複数検出した.細胞内に増加する代謝物の一つにカフェ酸を同定することができた.生物ストレス(yeast extract)に対しては,これらと異なる代謝物が増加した.また,実生を用いて培地中へ分泌される代謝物の分析も行い,培養細胞とは異なる代謝物の生産応答を確認した.一方,酸性ストレスに応答して発現が上昇する遺伝子を多数同定し報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Acacia mangiumのフラボノイド生合成に関わる酵素遺伝子のクローニングに関しては計画通りに行われ,これまでに8種類の酵素遺伝子のcDNAクローニングを行うことができた.そして,カルコン異性化酵素(type I and II CHI)については,一般の5-ヒドロキシ型フラボノイド合成に関わるI型(type I)に加えて,マメ科ソラマメ亜科で5-デオキシ型(イソ)フラボノイド合成に関わることが知られているII型(type II)が存在することがわかった.またフラバノン3-ヒドロキシラーゼ(F3H),DFRについても,組換え酵素を用いた酵素機能解析により5-デオキシフラボノイド生合成に関与していることが明らかになった.このようにAcacia属植物の5-デオキシ型フラボノイド生合成に関わる酵素とその遺伝子が解明され,今後そのストレス耐性との関わりを検討する基盤が整いつつある. フラボノイド生産応答では,培養細胞の低pHおよびアルミニウムストレスに対する代謝物生産応答のプロファイルを明らかにすることができたが,代謝物の同定は一部にとどまっている.しかしそれらの中にフラボノイド骨格の要素であるフェニルプロパノイドが見出されたことより,フラボノイド系が変動している可能性は示唆された.また酸性ストレス応答遺伝子が多数同定されたことにより,今後の解析でそれらの中に代謝に関係することが明らかになるものがあると期待される. 遺伝子組換え体に関しては,クローニングされたポリケチド還元酵素(PKR)とtype II CHI遺伝子を用いてベクター構築を行い,遺伝子組換え体の作製に着手した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進展しているので,計画通りに研究を進めていく. 酸性ストレス(低pHおよび高Al)に応答する代謝成分の同定を試みるとともに,フラボノイド生合成遺伝子の発現解析を行って,フラボノイド生産と遺伝子発現の関係を明らかにしていく.また比較のためにエリシターなど生物ストレスに対する応答も検討する. フラボノイド生合成に関わる酵素遺伝子のうち,5-デオキシ型フラボノイド生合成に必須と考えられるPKRとtype II CHI遺伝子について,Acacia mangiumへの遺伝子改変を行って,これらの遺伝子を過剰発現あるいは発現抑制する培養細胞の作製を試みる.形質転換細胞が得られれば,培養細胞の成長に対する酸性ストレス応答を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究協力者の学位申請時期と重なり平成26年1月から3月の謝金の支出が計画よりも少なくなったため次年度使用額が生じた. 該当研究費は次年度に消耗品の購入および酸性ストレス応答性代謝物の外注構造解析に当てる.次年度の研究経費は計画通り消耗品の購入と研究協力者への謝金として支出する.
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