2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒストン修飾酵素複合体による植物ゲノム基盤の構築と制御
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24570065
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
金 鍾明 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (90415141)
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Keywords | エピジェネティクス / 植物ゲノム / ヒストン修飾 |
Research Abstract |
本研究の目的は、シロイヌナズナのゲノム維持および遺伝発現調節に機能するヒストン脱アセチル化酵素 Hda6 複合体の構成因子探索を中心として、これら因子が植物ゲノムのクロマチン状態変化および遺伝子発現におよぼす影響を明らかにし、植物のゲノム基盤構築に必須なエピゲノム構造と因子を同定することである。 プレートで生育させたシロイヌナズナ野生株およびhda6変異株に対して、抗ヒストンH4アセチル化修飾抗体を用いたChIP-on-chip法およびChIP-seqg法により、Hda6がゲノムの基本構造構築に寄与するゲノム領域の検出を行った。その結果、HDA6は、これまでに同定したGypsyおよびLINEに属するトランスポゾン群を介したペリセントロメア領域のヒストンH4アセチル化に対するゲノムワイドな影響だけでなく、ゲノム上の遺伝子タンデムリピート領域および、遺伝子クラスター領域における遺伝子抑制に機能していることを示唆する結果が得られた。また、HDA6の標的遺伝子はトランスポゾン様の配列、およびシングルエクソンの遺伝子群を多く含むことが明らかとなった。これは、エピジェネティック因子による新しいゲノム制御研究のきっかけとなる発見である。 また、新規に試みている抗HDA6モノクローナル抗体作成では、複数の高アフィニティーモノクローナル抗体が獲得されており、これらを用いた免疫共沈降法により、HDA6タンパク質と相互作用する因子の検索を進めることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ChIP-seq法を用いることにより、HDA6タンパク質が直接的、間接的に影響するゲノム上の領域についてさらに詳細なターゲット同定ができた。これらの標的領域の中には、これまでに予想していなかったゲノム制御機構および真核ゲノムの進化的の解明に繋がる、新規のゲノム、遺伝子構造領域を含むことが明らかとなった。これらのことから、本研究成果は、エピジェネティクス研究が今後のゲノム制御学およびゲノム進化学を切り開くための、大きな布石となると考える。また、HDA6複合体の同定に用いる、高アフィニティーモノクローナル抗体が作成できたことから、ChIP-seq法を用いて、HDA6の機能解明について、さら詳細な解析が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
ChIP-seq法を用いて、HDA6タンパク質が直接的、間接的に影響するゲノム上のターゲット領域についてさらに詳細なクロマチン状態の変化を同定する。 これらの標的領域に含まれる、タンデムリピート領域および遺伝子クラスター領域の遺伝子発現変化を、シロイヌナズナ野生株およびhda6変異株を用いて調べる。 作成できた高アフィニティーモノクローナル抗体を用いて、免疫沈降実験により、HDA6複合体の構成因子を調べるとともに、ChIP-seq法を用いて、標的領域におけるさらに詳細なHDA6の制御機構について、さら詳細な解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに得た高速シーケンサーを用たた結果の情報解析に時間がかかるとともに、モノクローナル抗体作成に予想外の時間を要したため、高速シーケンサーを多用する次実験に進めなかったため。また、所属する研究室において、高速シーケンサーの機体入れ替えおよびアップグレードが行われたため、使用する試薬およびキットの大幅な変更が生じたため、使用計画中にある試薬等を先行して期間内に購入できなかった。 現状において、申請計画中にある新型の高速シーケンサーを用いた実験が全て実施可能となったため、生じた使用金額を全て用いて、これら実験を進める予定。
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