2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24570072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉国 通庸 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50210662)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ホルモン / 生理活性物質 / 卵成熟 / 海洋資源 / 神経ペプチド |
Research Abstract |
マナマコの神経系から分泌される神経ホルモン「クビフリン」は、マナマコの卵巣組織に作用して新たに2次成分を分泌させる事により卵の成熟・排卵を誘起しているが、その2次成分の化学的実体は不明である。本課題では、クビフリン作用後に卵巣組織で新たに分泌される2次成分の同定を軸として、マナマコのホルモンによる生殖の制御機構の解明を目指すものである。 24年度の研究では、排卵誘発活性を指標にして、クビフリン刺激後に卵巣から培養液中に分泌される成分の精製・構造解析を進め、14アミノ酸からなる新規ペプチド断片を見いだした。過去の課題で作成済みのマナマコ卵巣ESTライブラリの探索から、20アミノ酸からなる単純ペプチドであると予想されたことから、同配列を化学合成して生理活性を確認したところ、10-5Mの投与で卵成熟を伴わない排卵現象のみを誘発する事が確認された。本課題の2年目である25年度春期において、同活性の確認実験を実施する予定である。これまで排卵の誘発機構の詳細は不明であったが、一般に卵成熟と連鎖した現象として考えられており、排卵のみを誘発する生理活性ペプチドの発見は初めてである可能性が高い。同ペプチドの詳細な作用機構の解明と共に、他動物種での類似ペプチドとその作用が見いだされれば、広く動物一般の排卵現象の理解が進むと思われる。 培養液中の卵成熟誘起活性画分中に、クビフリン誘導体が見いだされた。クビフリン分子の酵素代謝物であると考えられる。25年度には、同代謝反応の阻害実験等を踏まえて、同代謝物が卵成熟誘起ホルモンの化学的実体である可能性を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クビフリン分泌の下流で働いて、卵成熟・排卵を誘導するホルモンカスケードの内、排卵を司る生理活性ペプチドを発見する事ができた。 様々な動物を用いたこれまでの長い卵成熟研究史において、排卵を誘発する生理活性ペプチドの存在の可能性は予想されていたかも知れないが、本研究で示されたように、「卵成熟の開始の有無に関わらず、未成熟な卵も含めて、それらの排卵のみを誘発する」ことは全く新奇の発見であった。 ナマコ類の生殖現象の解明という範囲を越えて、広く動物一般の生殖における排卵現象の意味とその生体制御の仕組みの解明に繋がる重要な手掛かりを得たという意味で、本課題24年度の成果は十分なものであったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、予定したクビフリン下流で産生される卵成熟誘起ホルモン分子が未だに未解明である。同ホルモン活性は、生理活性を追跡し精製を進めているが、24年度は出発材料である卵巣培養液の量が不十分であったと思われることから、25年度以降、精製出発材料を増量して再度、精製を実施する。 24年度に卵巣培養液中から新たに発見された排卵誘発ペプチドの生理作用の解析を進める。同ペプチドの発見は想定外ではあったが、卵成熟誘起ホルモン解明の実験系と同じもので実施できることから、当初の計画を変更する必要はない。 また、卵巣培養液中からはクビフリンの代謝物が検出されており、クビフリンの生理作用発現の機構と関連する可能性が考えられる。25年度には、当該酵素反応の阻害実験等により、クビフリンによる卵成熟の誘導とクビフリン代謝との関連を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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