2013 Fiscal Year Research-status Report
情報欠落のない3次元再構成ソフトの生物トモグラフィへの応用
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24570076
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
馬場 美鈴 工学院大学, 付置研究所, 研究員 (80435528)
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Keywords | 電子線トモグラフィ / 電子顕微鏡 / 画像処理 / 急速凍結置換法 / ニューラルネットワーク / テクスチャ解析 / 酵母 |
Research Abstract |
電子顕微鏡による3次元的な細胞内の膜動態解析に、電子線トモグラフィ法が有益な手段として使用されている。2次元観察で離れている構造体でも、3次元化して観察すると繋がりを見いだせるからである。しかし、生物構造体の電子顕微鏡画像は複雑である。膜で囲まれた構造体の3次元的な解析を行う手段として、画像の中で膜構造の追跡を人為的な作業により行うため、人によっても判断できない、追跡不可能な領域が残される。微細な領域の膜動態観察には、電子顕微鏡画像の濃度値を、そのまま表現可能な3次元化が必要とされる。連携研究者により、全く新しい概念の新再構成法が開発された。最大の利点は情報欠落がなく、電子顕微鏡画像そのものから3次元像が再構成されることである。生物材料にこの手法を応用するためには、現時点では、まだ多くの要素技術を開発、整備しなければならない。 そのための手段として、標準試料となるものを考案し、新たな連続傾斜シリーズ像を取得した。その3次元再構成による観察を実現するために、画像解析法及び生物学的情報を学習させることが可能なコンピュータによる機械学習(ニューラルネットワーク)を導入にして、実際の動作状況の確認と高性能化を進めた。また、内腔をもつ細胞内小器官の繋がりは、テクスチャ解析法が有効であることがわかり、その手法を3次元再構成像に導入することを試みた。生物試料に対して必要な要素技術の開発を順次進めている。 連携研究者により、電子顕微鏡による連続傾斜画像の分解能に影響を及ぼす要素技術が新たに成功し、3次元再構成画像の精度が向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
撮影された画像は、電子顕微鏡の機械精度、および電子線の特性により、様々な歪を生じる。どのような再構成法を用いても、これが解像度の劣化の原因の一つである。 連携研究者により、連続傾斜シリーズ像撮影時に生じる軸ズレを補正するソフト開発が成功したため、3次元画像の解像度が金コロイドのようなマーカーを用いずに高精度に位置合わせすることが可能となった。金コロイドを必要としないことは、生物材料にとって手法の煩雑さを回避できる最大の利点であり、新規アルゴリズムによる新再構成法を実行するために必須の条件である。その手法を適用した。 昨年度試作されたニューラルネットワークのソフトが大幅に改良され、精度が向上した。ユーザーが、ソフトを使用し易くするためのGUIが作られた。 細胞内の比較的大きな構造体の膜領域を、機械学習により半自動化で抽出するソフトの基盤が作られた。半自動化で可能であることの意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
電子顕微鏡による連続傾斜画像の取得を継続し、3次元再構成像の構築の実行とその完成度にたいする評価を繰り返す。新たに必要となった要素技術も、その基盤を作り上げる。その後のソフトの改良と高性能化、半自動化を進め、これまでに蓄積された要素技術をさらに整備する。電子顕微鏡画像の3次元連続傾斜画像は、2軸方向も含めると膨大なデータ量の演算となるため、東京大学のスーパーコンピューター、及び、研究室に設置されているクラスタマシンを使用して実行してきた。しかし、それは、使用者が限られるため、今後は、一般のPCで演算可能にするためのソフトの改良を行い、高速化を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
プログラム作成のための人件費として、充当されていたが、それが比較的順調に進んだため、その検証過程を先行して進めた。 今年度の繰り越し分は、次年度の物品費に充当する。
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