2012 Fiscal Year Research-status Report
ショウジョウバエ雌の生殖行動を制御する性的二型神経回路網
Project/Area Number |
24570081
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
木村 賢一 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (80214873)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 昆虫 / 行動学 / 神経科学 / ショウジョウバエ / 生殖行動 |
Research Abstract |
平成24年度には、dsx発現ニューロン群の網羅的同定を行った。まず、dsx-Gal4を用いてdsx発現ニューロン群をGFP標識し、抗GFP抗体とneuropile特異抗体を用いた二重蛍光染色をした後、共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析した。dsx発現ニューロン群の細胞体の位置から、雄の脳では10個のニューロン群を雌の脳では8個のニューロン群を同定した。さらに、MARCM法により選択的にdsx発現ニューロン群をGFP標識し、個々のニューロン群の投射パターンを明らかにした。これらの結果、3つの雄特異的ニューロン群および1つの雌特異的ニューロン群に加え、投射パターンが雌雄で異なる4つの性的二型ニューロン群を見いだすことができた。 本研究では、雌生殖行動に注目して解析を進める。24年度には、雌生殖行動を記録・観察し、定性的、定量的に解析できるようなシステムを確立した。そのシステムを用い、fruあるいはdsx発現ニューロンを強制的に活性化し、雌生殖行動が誘導されるか調査した。ニューロン群の活性化を実験的に制御するために、温度受容に関わるレセプターチャネルdTRPA1(高温シフトで活動電位が生ずる)遺伝子を、fru-Gal4あるいはdsx-Gal4を用いて強制発現させ、高温状況下で雌の生殖行動を観察した。その結果、dsx発現ニューロンを強制的に活性化させると、交尾器の突き出し行動と産卵行動が誘導されることが明らかになった。一方、fru発現ニューロン群の活性化は、雌の生殖行動を誘導しなかった。そこで雌の生殖行動の制御の解明には、dsx発現ニューロンに焦点を絞り、解析を進めることが有効であることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究では、dsx発現ニューロン群の投射パターンを明らかにし、個々のニューロン群を形態学的に同定することができた。また、それらのニューロン群を雌雄で比較し、雄特異的、雌特異的、そして性的二型ニューロン群を明らかにすることができた。これらは、当初の研究予定にそって進んでいるものである。しかし、dsx発現ニューロンの入出力部域の特定をするため、前シナプス領域のマーカーとしてヘマグルチニン(HA)で標識したシナプトタグミンを、後シナプス領域のマーカーとしてGFPで標識したDscamタンパクを発現する系統を作成し調査したが、バックグラウンドでGal4が発現するニューロン群が存在し、その投射領域がdsx発現ニューロンの投射と重なってしまい、入出力部域の特定は十分できていない。このため、入出力部域の特定のためには他の方法を検討する必要が課題として残された。 雌の生殖行動を観察するためのシステムを確立することができた。このシステムを用い、fruあるいはdsx発現ニューロンを強制的に活性化し、雌生殖行動が誘導されるか調査したところ、雌の生殖行動の制御にはdsx発現ニューロン群が関わっていることを明らかにすることができた。これにより、今後研究を遂行する上でdsx発現ニューロン群に焦点を絞ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究により、dsx発現ニューロン群を強制的に活性化させると、雌の産卵管突きだし行動および産卵行動が誘導されることが明らかになった。そこで25年度には、dsx発現ニューロン群による雌の生殖行動の制御機構について解析をさらに進めることにする。dsx-Gal4系統にMARCM法を適用し、特定のdsx発現ニューロン群をGFPラベルするとともに、dTRPA1(温度上昇によりニューロンを活性化)を強制発現させたモザイク個体を作成する。温度を上昇させ、一部のdsx発現ニューロン群を強制的に活性化した時、雌の生殖行動に影響が生ずるか調査する。その際、雌単独で特定の行動が誘発されるかどうか、また雄と一緒にした場合に行動に変化が生ずるかを解析する。生殖行動に変化が生じた個体について、どのニューロン群が活性化されているか、脳の抗体染色を行い、その標識パターンから関与するニューロン群を同定する。 平成26年度は、雌生殖行動制御ニューロンの動作作用機構の調査を進める予定である。上記調査により特定されたニューロン群について、その動作を担うトランスミッターやそれらのレセプターの発現を免疫組織化学法により同定する。ショウジョウバエにおいては、トランスミッターやそれらのレセプターに関与する遺伝子は同定されており、その突然変異やRNAi発現により機能阻害が可能である。同定されたトランスミッターやレセプターの機能阻害を引き起こし、雌生殖行動への影響を調査する。これらの解析を通じて、雌生殖行動を制御する神経回路網とその動作機構を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費使用計画のうち、謝金に関しては、当初10ヶ月分を予定していたが、都合により8ヶ月分の依頼となった。また、旅費に関しても、格安航空券を利用することで節約に努めたこともあり、あわせて次年度物品費に154,257円を繰り入れることが可能となった。平成25年度は、次のような使用計画のもと研究を進める予定である。 平成25年度品目別内訳として、物品費(試薬、実験消耗品、画像解析用ソフトなど)654,257円、旅費(研究成果の発表)200,000円、人件費・謝金600,000円(実験補助5万円x12ヶ月x1人)、その他(輸送料、英文校閲代等)100,000円、合計1,554,257円を予定している。
|
Research Products
(7 results)