2013 Fiscal Year Research-status Report
ショウジョウバエ雌の生殖行動を制御する性的二型神経回路網
Project/Area Number |
24570081
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
木村 賢一 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (80214873)
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Keywords | 昆虫 / 行動学 / 神経科学 / ショウジョウバエ / 生殖行動 |
Research Abstract |
平成24年度の研究により、dsx発現ニューロン群を強制的に活性化させると、雌の産卵管突きだし行動および産卵行動が誘導されることが明らかになった。そこで25年度には、dsx発現ニューロン群による雌の生殖行動の制御機構について解析をさらに進めることにした。dsx-Gal4系統にMARCM法を適用し、特定のdsx発現ニューロン群をGFPラベルするとともに、dTRPA1(温度上昇によりニューロンを活性化)を強制発現させたモザイク個体を作成した。それらモザイク個体について、温度を上昇により一部のdsx発現ニューロン群を強制的に活性化した時、雌の生殖行動に影響が生ずるか調査した。その際、雌の生殖行動として交尾器の突き出し行動と産卵行動に注目し、温度上昇により雌単独で特定の行動が誘発されるかどうかを解析した。生殖行動に変化が生じた個体について、どのニューロン群が活性化されているか、脳の抗体染色を行い、その標識パターンから関与するニューロン群を同定した。その結果、特定の性的二型ニューロンが雌の産卵管伸展運動を制御していることが明らかになった。一方、産卵行動に関しては、雌特異的に存在するニューロンが産卵を誘導することが示唆された。この雌特異的ニューロンの形成機構を調査したところ、雄型Dsxタンパクの発現により雄では相同なニューロンが細胞死を起こし、除去されることにより、雌だけで形成されることが明らかになった。このように性的二型ニューロンおよび性特異的ニューロンが雌生殖行動の制御に関与してことが明らかになった。 あわせて25年度には、特定のニューロン群をラベルするためにflippase-エンハンサートラップ系統を100系統作製した。これらが有用であるかは、26年度スクリーニングする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究では、dsxを発現する性的二型ニューロンおよび性特異的ニューロンが、特定の雌生殖行動を制御していることを示すことができた。これらは、当初の研究予定にそって進んでいるものである。しかし、今後これらのニューロンがどのような神経回路網を形成しているかについては、dsx発現ニューロンの入出力部域を特定する必要がある。そのためには、前シナプス領域のマーカーとしてヘマグルチニン(HA)で標識したシナプトタグミンを、後シナプス領域のマーカーとしてGFPで標識したDscamタンパクを、特定のニューロン群で発現する系統を作成しなければならない。H24年度の研究結果より、従来の方法では適用が難しいことが示されたため、新たにflip-out法を用いたモザイク作製法を検討した。そのためには、flippase-エンハンサートラップ系統を作製する必要があり、25年度においておよそ100の系統を作製した。これらが有効に機能するかは、今後スクリーニングを行う必要があるが、そのための土台を形成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究では、dsxを発現する性的二型ニューロンおよび性特異的ニューロンが、特定の雌生殖行動を制御していることを示すことができた。そこで平成26年度は、同定されたdsx発現雌生殖行動制御ニューロンの動作作用機構の調査を進める予定である。これらのニューロンがどのような神経回路網を形成しているかについては、dsx発現ニューロンの入出力部域を特定する必要がある。この解析にflip-out法を用いたモザイク作製法を適用するため、まずflippase-エンハンサートラップ系統のスクリーニングを行う。適する系統がみつかったら、それを用いて前シナプス領域のマーカーとしてヘマグルチニン(HA)で標識したシナプトタグミンを、後シナプス領域のマーカーとしてGFPで標識したDscamタンパクを発現する系統を作成し、ニューロンの入出力部域を特定する。 今までの予備実験において、ドーパミン作動性ニューロン群についてdTRPA1(温度上昇によりニューロンを活性化)を用いて活性化させると、雌の生殖行動が誘発されることを見いだしている。そこで、ドーパミン作動性ニューロンをMARCM法により選択的にGFP標識し、投射パターンから同定する。また、それらドーパミン作動性ニューロンのどのニューロンが雌の生殖行動を誘発しているのか、dTRPA1を強制発現させたモザイク個体を作成し、温度を上昇さにより一部のドーパミン作動性ニューロン群を強制的に活性化した時、雌の生殖行動に影響が生ずるか調査する。そこで同定されたドーパミン作動性ニューロンとdsx発現ニューロンとの関係を投射パターンから明らかする。これらを通して、これらの雌生殖行動制御ニューロンの動作作用機構の調査を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費使用計画のうち、謝金に関しては、実験の進行にあわせて動物飼育の実験補助が当初の予定より多く必要となったため、85,000円程度の超過となった。一方、旅費(成果発表)に関しては、他の経費により支出することができ、節約することができた。そのため、謝金の不足分を補うことが可能となった。それらをあわせて次年度物品費に115,166円を繰り入れることとなった。 平成26年度品目別内訳として、物品費(試薬、実験消耗品、画像解析用ソフトなど)515,166円、旅費(研究成果の発表)200,000円、人件費・謝金600,000円(実験補助5万円x12ヶ月x1人)、その他(輸送料、英文校閲代等)100,000円、合計1,415,166円を予定している。
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[Presentation] Formation of footpad during the pupal development in a fruit fly, Drosophila melanogaster,
Author(s)
Kimura, K-I., Minami, R., Sato, C., Yamahama, Y., Hariyama, T.
Organizer
Joint international symposium on "Nature-inspired Technology (ISNIT) 2014" and "Engineering Neo-biomimetics V”
Place of Presentation
Hokkaido University (Sapporo)
Invited
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