2013 Fiscal Year Research-status Report
錐体・桿体視細胞に特異的な光応答をもたらす分子環境の解析
Project/Area Number |
24570085
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橘木 修志 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (70324746)
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Keywords | 動物生理化学 / 視細胞 / 錐体 / 桿体 / 光応答 |
Research Abstract |
本研究では、錐体・桿体の光受容部(外節)でのi)脂質組成の違い、ii)発現しているタンパク質の違い、の2つの違いに着目し、これらの違いが錐体・桿体の光応答特性の違いをもたらすのかどうか明らかにすることを目的としている。 着目している2つの項目のうち、前者(脂質組成の違い)に着目した理由は、この違いが視細胞における視物質のGタンパク質活性化の効率に影響を及ぼし、最終的に錐体・桿体の光応答の感受性の違いの原因となりうるためである。前年度までに、錐体・桿体の外節における脂質組成や脂肪酸組成に違いがあることを示唆するデータを得た。そこで、今年度は、この違いが視物質のGタンパク質活性化の効率に影響を及ぼすかどうかを検討する系を確立することを試みた。その結果、リポソーム系およびナノディスク系で予備的な結果を得ることに成功した。しかしながら、得られた結果は、現段階では再現性に乏しかった。おそらく、均一な試料が得られていないことが理由と考えられるので、さらなる改良を行い、確定的な結果を得たい。 着目している2つの項目のうち、後者については、前年度までに、精製した錐体、桿体外節膜試料を二次元電気泳動にかけ、それぞれの試料に特異的に現れる泳動ゲル上のスポットを複数個同定することに成功した。これに加え、今年度、電気泳動法の改良を行い、さらに錐体・桿体特異的なスポットが見出された。しかし、その後のMSによるタンパク質の同定に失敗した。この失敗は、試料の量・純度に起因するものではなく、MSのスペクトルからタンパク質を同定する際に用いたデータベースに起因すると考えている。そこで、コイ桿体・錐体のmRNAライブラリを次世代シーケンサで解析し、コイ視細胞に発現しているタンパク質配列の網羅的リストを作成した。このリストを用いることにより、今後、同定が進むものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画では、平成25年度において、(計画1)錐体・桿体の紙誌つ組成の違いが視物質のTr活性化に与える影響の評価、(計画2)錐体・桿体いずれかの外節のみに存在するタンパク質の評価、を予定していた。 (計画1)錐体・桿体の外節部細胞膜でのTr活性化の解析については、この解析を行う上で重要な前提となる知見(Tsutsui et al, BGRC, 2013, Koshitani et al, JBC, 2014)を学術誌に発表することができた他、測定のための実験系の構築も進んでいる。しかしながら、現在、結果の再現性が得られておらず、今後、実験条件、実験試料の均一性を得るべく実験法の改良を行い最終的な結果を確定したい。本来、今年度で解析が終わっている予定であったので、やや遅れ気味であるが、十分に次年度中に終了する見込みである。 (計画2)錐体、桿体いずれかの外節にのみ発現しているタンパク質の探索について、昨年の段階で、すでに、錐体・桿体の外節膜特異的に存在するタンパク質に由来すると思われる二次元ゲル電気泳動ゲル上のスポットをそれぞれ10個前後同定していた。そこで、MSを用いてこれらのスポットに含まれるタンパク質の同定をおこなったところ、1例を除いて同定に失敗した。これは、使っている実験動物がコイであり、標準的な実験動物でないことに起因していることが理由であると考えられた。既存のタンパク質配列データベースにはコイのデータが乏しく、このため、MSでの解析結果を十分に評価できなかったものと考えられる。そこで、本年度には、計画の遂行のため、精製した錐体・桿体からmRNAを抽出してそれぞれのライブラリを構築し、次世代シーケンサで解析することにより、既存のデータベースを補完する情報を得た。今後は、目的タンパク質の同定がすみやかに行えるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の計画1)脂質組成の違いが視物質のGタンパク質活性化に与える影響の評価:錐体・桿体の外節における脂質組成や脂肪酸組成が視物質のGタンパク質活性化の効率に影響を及ぼすかどうかを検討する。系としては、主に2つの再構成系を用いる。1つはリポソーム系であり、もうひとつはナノディスクと呼ばれる系である。ナノディスク系では、リポソーム系でアッセイする際に問題となるinside-out等の問題が解消できると期待される。どちらの系についても、すでに予備的な結果が得られているので、次年度での早い段階での計画の遂行をする。 (今後の計画2)錐体・桿体いずれかの外節のみに存在するタンパク質の評価: これまでに、精製した錐体、桿体外節膜試料のどちらか片方にしか存在しないタンパク質を二次元電気泳動ゲル上のスポットとして複数個見出した。さらに、今年度、MSのスペクトルからタンパク質を同定する際に用いる実験動物であるコイのタンパク質配列情報を、次世代シーケンサを用いることで得ることが出来た。そこで、今後、すみやかにタンパク質の同定を行う。次に、同定されたそれぞれのタンパク質について組織内局在・および細胞内局在を免疫組織染 色法で確認し、本当に外節特異的なタンパク質であるかどうかを検証する。その確認が取れ次第、同定されたタンパク質の機能について速やかに検討を開始する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Substrate Specificity and Subcellular Localization of the Aldehyde-Alcohol Redox-coupling Reaction in Carp Cones2013
Author(s)
Sato, S., Fukagawa, T., Tachibanaki, S., Yamano, Y., Wada, A. and Kawamura, S.
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Journal Title
Journal of Biological Chemistry
Volume: 288(51)
Pages: 36589-36597
DOI
Peer Reviewed
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