2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24570092
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 徹 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80374198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DICK Matthew H 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80374205)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子系統 / ショウジョウバエ / Scaptomyza |
Research Abstract |
Scaptomyza属のショウジョウバエは約6割の種がハワイ固有で、残りが世界中に広く分布するが、これらがハワイに起源を持ち、その一部が各大陸に分散したのか、あるいは大陸のどこかに起源を持ち、その一部がハワイで適応放散したのかが、ショウジョウバエ系統学における長年の疑問の一つである。本研究課題は、核およびミトコンドリアゲノムの両者を指標とした分子系統学的解析を行なうことで、ショウジョウバエ科におけるScaptomyza属の起源を推定するとともに、ハワイと大陸を介した、本属に特異的な適応放散の過程を明らかにしようと試みる。今年度は、大陸産のScaptomyza属11種に対して、アルコール脱水素酵素(Adh)、16S ribosomal RNA (16S)、cytochrome c oxidase I (COI)、cytochrome c oxidase II (COII)、およびNADH dehydrogenase subunit 2 (ND2)の塩基配列を新たに決定し、既に報告されているショウジョウバエ種の塩基配列を併せて系統解析を行った。その結果、本属のハワイ固有種も大陸産種もそれぞれ複数のクレードに分かれ、何れも単系統群を形成しなかった。また、小笠原固有種のS. boninensisは、S. anomala、およびS. palmaeからなるハワイ固有の系統との近縁性が強く示唆された。これらの系統関係から、本属のハワイ固有種と大陸種の関係は今まで考えられていたよりも複雑であり、過去に移動が複数回起きた可能性や、ハワイ-大陸間の相互で移動があった可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、大陸産のScaptomyza属ショウジョウバエを中心に、5つの遺伝子領域について塩基配列を決定することが出来た。そして、得られた結果は、本属の適応放散の過程が今まで考えられていたよりも複雑であるという興味深い見解を与える。従って、現在までの達成度については、おおむね順調に進展していると判断される。ただし、今年度は既知のプライマーを用いた系統解析に終始し、新規プライマーを用いた解析までには至らなかったことが反省点として残される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度、および平成26年度とも、原則として24年度の作業を継続するが、次年度以降は試料採集の地域を離島まで拡大するとともに、新規プライマーを用いた塩基配列決定および分子系統解析の作業に力を注ぐ。 1.試料収集およびDNA抽出:今年度は大陸産の中でも日本を含む東アジア産のScaptomyza属を中心に試料収集を行なった。そこで来年度は、今年度採集できなかった大陸産種の採集を行なうとともに、大陸から離れたいくつかの海洋島に固有に生息するScaptomyza属の採集に力を注ぐ。 2.塩基配列決定:今年度は既知のPCRプライマーを用いた塩基配列決定の作業に時間を要したため、来年度以降は、新規プライマーを用いた塩基配列決定の作業に力を注ぐ。具体的には、ショウジョウバエゲノムのデータを利用して核ゲノムの塩基配列を決定するためのPCRプライマーを新規に設計し、設計できたものについては順次PCR反応を行なって塩基配列を決定する。また、ミトコンドリアゲノムを指標とした分子系統解析の作業も同時に行なう。 3.分子系統樹の構築と分岐年代の推定:得られた塩基配列データに前年度のデータを併せて分子系統樹を構築し、Scaptomyza属の系統学的位置、およびScaptomyza属内における大陸産種とハワイ固有種間の系統関係を推定する。そして、系統樹の各枝が分岐した絶対年代をそれぞれ推定する。なお、分子系統解析を行なう際には、従来のcomplete deletionによる情報のみならず、最近普及しつつあるsuper matrixを用いた解析も併せて行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は既知のPCRプライマーを用いた分子系統解析に時間と手間を要したため、新規に開発したプライマーを用いて解析を行うまでには至らなかった。そのため、新規プライマーを発注するために確保していた予算が当該研究費として生じたので、これを同じ使用目的の予算として、次年度の消耗品費に併せて計上する。
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Research Products
(3 results)