2012 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災による大型津波の海浜性昆虫群集への影響と復元過程予測
Project/Area Number |
24570094
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大原 昌宏 北海道大学, 総合博物館, 教授 (50221833)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 剛史 北海道大学, 総合博物館, 講師 (00301929)
小林 憲生 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (00400036)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 昆虫 / 津波 / 東日本大震災 / 生物地理 / 生物多様性 / 保全 / 海岸 |
Research Abstract |
【目的】東日本大震災の大型津波が、海浜性生物の分布に与える影響に関して、生物地理学的観点から調査を行った。1)津波前と1~3年後の海浜性昆虫群集を比較し、津波による群集の消失・縮小状況を記載し、2)現在、生存している群集の地理的遺伝的差異を記載し、群集消失地で新たな群集が形成された際の個体の由来(分散・移入の経路)を知るための基礎情報を集積。昆虫の生息環境である浜の海藻・海草塊(群集)の種構成を調べ、3)海藻・海草塊の種構成変化が昆虫群集の形成過程へ与える影響をみることを目的とした。 【実施内容】(1a)津波被害地域とその周辺地域について調査をおこなった。津波前調査を行った地点を含め、計約55地点(北海道9地点, 青森県5、岩手県11、宮城県10、福島県3、茨城県6、千葉県11)において海浜性昆虫および打ち上げられた海藻・海草塊を採集した。調査時期は6月23日から8月8日まで。採集された昆虫、海藻・海草は種レベルまで同定を行うため、乾燥標本の作製を行った。 (1b)津波が海浜性昆虫群集に与えた影響記載の精度を高めるため、過去の情報を「博物館所蔵標本の調査」を岩手県立博物館、青森県郷土資料館において行った。 【意義と重要性】津波後、2年目の海浜性昆虫の生息・分布データの収集は、本研究の最も重要なデータであり、本年度においてデータが問題なく集められたことは、幸いであった。津波直後のデータの生物地理学的、生物多様性保全学的意義は大きく、将来の研究の原点となる。また申請時には予測できなかった防潮堤、砂浜地での盛土などの防災施設の建設事業が急速に進んでおり、特に大規模防潮堤が砂浜域に設置された場合、津波前の海岸環境とは異なる人工環境が創成されることとなり、海浜性昆虫個体群が地域的に絶滅する可能性が高くなっており、生物多様性保全学のモニタリングとしての本研究の重要性が一層増したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では60地点を調査する予定であったが、55地点の調査が行われ、ほぼ順調に計画通りに進んでいる。津波被災地では、海岸線に立ち入りができない地点も多く、致し方ない状況であった。標本の同定については、東北地方の博物館2カ所に関して行い、問題なく行われている。遺伝的変異のデータ収集は順調であるが、解析については、初年度のため、解析を始めたところである。遺伝的変異の成果はまだ見えていないが、次年度以降の解析業務が主であるため計画の進捗状況としては問題ない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、上記平成24年度の調査・研究を再度行い、前年及び津波前の状況と比較、検討する。特に前年の調査実態に応じ、調査地の変更や調査地点数の変更を検討する。 遺伝的変異の推定に関しては、研究を遂行する過程で前述の領域だけでは変異に乏しく解析が困難であると判断される場合、同じくミトコンドリアDNA ND2遺伝子の一部を計画している。この領域は、Cox1ほど一般的に用いられる領域ではないが、研究分担者の小林がいくつかの甲虫の系統解析及び系統地理解析に成功しており、十分な遺伝的変異の検出が見込まれる領域である。また、飛翔力が高いガムシなどは、津波影響後に新たに個体群を形成している可能性がある。新たな侵入が認められた場合は、その地点のガムシのDNA塩基配列を決定し、侵入経路の推定を行う。 震災復興事業で、防潮堤等の建設が始まると現在よりも海岸域への立ち入りがより制限される可能性があり、調査地の減少が予想される。その場合は、調査可能地点のより詳細なデータの収集により、研究精度の劣化の無いよう検討する予定であう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
継続調査の実施のため、旅費を本年度の8割程度使用する。標本の同定のための標本箱や、分子解析のための消耗品費を増やす。
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Research Products
(4 results)