2013 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災による大型津波の海浜性昆虫群集への影響と復元過程予測
Project/Area Number |
24570094
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大原 昌宏 北海道大学, 総合博物館, 教授 (50221833)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 剛史 北海道大学, 総合博物館, 講師 (00301929)
小林 憲生 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (00400036)
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Keywords | 昆虫 / 津波 / 東日本大震災 |
Research Abstract |
【目的】東日本大震災の大型津波が、海浜性生物の分布に与える影響に関して、日本の生物地理学的観点から調査を行った。1)津波前と1~3年後の海浜性昆虫群集を比較し、津波による群集の消失・縮小状況を記載し、2)現在、生存している群集の地理的遺伝的差異を記載し、群集消失地で新たな群集が形成された際の個体の由来(分散・移入の経路)を知るための基礎情報を集積。昆虫の生息環境である浜の海藻・海草塊(群集)の種構成を調べ、3)海藻・海草塊の種構成変化が昆虫群集の形成過程へ与える影響をみることである。 【実施内容】(1a)津波被害地域とその周辺地域について調査をおこなった。津波前と2012年、13年に調査を行った計55地点のうち20地点(北海道太平洋海岸4地点, 青森県2、岩手県7、宮城県7)において海浜性昆虫および打ち上げられた海藻・海草塊を採集した。調査時期は7月13日から11月3日まで。採集された昆虫、海藻・海草は種レベルまで同定を行うため、乾燥標本の作製を行った。 (1b)津波が海浜性昆虫群集に与えた影響記載の精度を高めるため、過去の情報を「博物館所蔵標本の調査」を千葉県立中央博物館、青森県郷土資料館において行った。 【意義と重要性】津波後、3年目の海浜性昆虫の生息・分布データの収集は本研究の重要なデータであり、そのデータが本年度において問題なく集められたことは、幸いであった。また申請時には十分に予測できなかったことであるが、東北地方の沿岸部の津波対策として、防潮堤、砂浜地での盛土などの防災事業が急速に進んでおり、特に大規模防潮堤が砂浜域に設置された場合、津波前の海岸環境とは異なる人工環境が創成されることとなる。多くの海浜性昆虫個体群が地域的に絶滅する可能性が高くなっており、生物多様性保全学のアセスメント、モニタリングとしての意義もある本研究の重要性が一層増したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では60地点を調査する予定であったが、昨年度55地点の調査が行われ、本年度はそのうちの20地点の詳細な調査がなされ、ほぼ順調に計画通りに進んでいる。多くの津波被災地では、海岸線に立ち入りができない地点も多く、致し方ない状況であった。標本の同定については、問題なく行われている。
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Strategy for Future Research Activity |
震災復興事業で、防潮堤等の建設が始まると現在よりも海岸域への立ち入りが制限される可能性があり、調査地の減少が予想される。その場合は、調査可能地点のより詳細なデータの収集により、研究精度の劣化の無いよう検討する予定であう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
継続的に現地でのフィールド調査を行うため経費が必要。個体群間の遺伝的多様性を分子レベルで把握する解析を、本年度中にある程度終了させる必要があることから、分子解析関連の消耗品が必要となる。採集されたサンプルの標本化も行うため標本箱などの経費も必要となる。 継続調査の実施のため、旅費を本年度の8割程度使用する。標本の同定のための標本箱や、分子解析のための消耗品費を増やす。
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Research Products
(3 results)