2014 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア「温帯域」に分布するアシナガバチ類の起源・分散・種分化に関する研究
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24570096
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
小島 純一 茨城大学, 理学部, 教授 (00192576)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アシナガバチ類 / アジア東部温帯域 / 系統関係 / 生物地理 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯起源と言われるアシナガバチ類の中で、アシナガバチ属とホソアシナガバチ属は東アジア「温帯域」にも分布する。両属の東アジア「温帯域」に分布するアシナガバチ類の分散・種分化の過程を考察することを本研究の目的とした。最終年度の平成26年度は、アシナガバチ属については系統関係解析と系統仮説に基づく起源地と分散過程の考察、またホソアシナガバチ属のParapolybia indica種群の分類学的整理と各種の分布パターンを比較し温帯域への分散を考察した。 アシナガバチ属の3亜属の単系統性は表形形質ならびにDNAシークエンスデータを用いた解析によって支持されたが、Polistella亜属内の2種群の構成種は、表形形質、DNAシークエンスデータそれぞれを用いた解析で完全には一致しなかった。 系統樹上への現在の分布地のマッピングと最適化解析により起源地と分散経路を推定した。熱帯域には分布しないPolistes亜属の起源地は旧北区で、祖先種において温帯環境(越冬が必要)に適応していたといえる。キアシナガバチのみ冷温帯域まで分布するGyrostoma亜属の起源地はアジア熱帯域で、ごく一部の種が北方へ分散する過程で温帯環境に適応してきたものといえる。Polistella亜属には、ヤマトアシナガバチを含む種群とコアシナガバチを含む種群が認められた。前者の起源地はアジア熱帯域であり、北方への分散過程で温帯環境に適応し、一方、後者の起源地は、「冬」があるインドシナ半島北部で、祖先種においてすでに温帯環境に適応していたといえる。Parapolybia indica種群の分類学的整理を行い、4新種を含む9種を認めた。台湾固有のP.takasagonaを除き、いずれの種もヒマラヤ山脈から東に延びる「斜面」(温帯性の気候をもつ)に分布し、この地域が本種群の種分化の中心地であり、北方への分散前に温帯環境へ適応していたといえる。
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