2013 Fiscal Year Research-status Report
大型シンクロトロンによる後期白亜紀の被子植物初期進化群の花化石の構造解明
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24570097
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高橋 正道 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00154865)
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Keywords | 被子植物 / 白亜紀 / APS / マイクロCT / Mesofossils |
Research Abstract |
白亜紀の被子植物の「花化石」は,いくつかの堆積条件がそろっている特殊な地層に限って保存されており,国際的には炭化した「花化石」を単離できるのは,わずかの地点に限られている。これまでに、被子植物の起源とされる熱帯地域から発見されたことがない。このような地層は,白亜紀に氾濫原であった地域で,炭化した「花」「果実」「種子」がシルト層の中に保存され,その後,高温や高圧の影響を受けてなく、しかも固結していない柔らかい状態であることが必要である。熱帯地方で、これらの条件が整っている白亜紀の地層を探すことは容易なことではないが、25年度には,マレーシアにおいて炭化した小型化石を含んでいるジュラ紀~白亜紀の地層の探索を行った。その結果、これらの条件にあっており、しかも炭化化石を含んでいる可能性のある地層を探しあてた。今後、この地層およびその周辺で詳細な調査を行う予定である。 モンゴルと福島県いわき市の白亜紀の地層から発見された花や果実の小型化石の内部構造を解明するために、約30個以上の炭化化石を大型シンクロトロン(APS シカゴ)で高分解能マイクロCT撮影を行った。これらのCTデータに基づいて、3Dレンダリングを実施している。1サンプルあたりの2000x2000x2000 pixelに達する巨大サイズのレンダリングには、2週間以上の日数を必要としている。これまで3D構築したデータは、全サンプル数の約半分である。今後とも、レンダリングを続けていく予定である。 その中で、白亜紀のクスノキ科の花化石の内部構造を明らかにした結果、これまでに発見されていない新種であることが分かり、論文をまとめて、投稿中である。モンゴルの前期白亜紀から発見した炭化化石については、新種のシダ種子植物のものであることが明らかになった。今後、内部構造をさらに詳しく解析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
その理由の一つは、熱帯アジアで、植物の炭化小型化石を含んでいる可能性のある地層を発見したことである。白亜紀の花化石は、いくつかの堆積条件がそろった特殊な地層でないと保存されることはなく、国際的にも炭化した花化石を単離できる地点は、極めて少ない状況である。その中でも、被子植物の起源の地域とみなされてきた東南アジアは、熱帯多雨林で広く地表が被われている上に、高温のために、有機物が分解されやすく、多くの地層は、Mesofossilsを含むことのないRed bedであることが知られている。マレーシアにて、固結度の低い柔らかい黒っぽい地層を探し回った結果、これらの条件を満たす地層を発見することができた。しかも、その近辺から、マレーシアで初めて恐竜化石も発見されていることにより、この地域がジュラ紀~白亜紀に、多様な生物群が生育していたことを示唆するものであり、今後のMesofossilsの研究を推進するために有力な手がかりとなる。マレーシアで、炭化植物化石を含む固結度の低い地層が発見されたことは、今後の研究の展開のために、意義深いものである。 2つめは、Mesofossilsで大型加速器によるマイクロCTで得られたデータを3次元構築する技術が確立しできたことである。もともと、炭化物でできているMesofossilsのCT像から3次元構築することは容易なことではないとされてきた。しかし、撮影条件を検討し、3次元解析のやり方を変えることによって、小型化石の3Dデータ解析が可能となった。このことにより、炭化小型化石の内部構造を明らかにすることができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
シカゴの大型放射光施設APSにて、残りの小型炭化化石のマイクロCT撮影する。これらのデータを3D構築し、内部構造を解明し、ジュラ紀~白亜紀の炭化小型化石についての植物学上のデータと比較する。これまでに,発見された多くの被子植物の「果実」「種子」「花」の小形化石の内部構造を解明するために,引き続き、大型放射光施設(APS,シカゴ)のビームライン2-BM-Bにて,マイクロCTによる解析を行う。すでに,このための応募者のAPSの認可申請は承認されており,APSの継続利用者として登録されており,マイクロCTの撮影条件設定などに必要な基礎データの準備は整っている。シカゴの大型放射光施設では,マルチチャンネル方式が採用されているために, 短時間での高輝度撮影が可能であり, 0.75umと言う高分解能で高コントラストなCTデータを得ることができる。 熱帯地域で白亜紀の小型炭化化石を探るために、引き続き、マレーシアのジュラ紀~白亜紀の地層の探索を続ける。これまでの調査で、小型炭化化石を含んでいる可能性のある地層が見つかっており、特に、このoutcropを中心に、大量の堆積岩を採取する予定である。採取した岩石サンプルを日本に輸送し、日本で、岩石の処理を行う。洗浄後、炭化化石の状態を確認しながら、被子植物の果実や花化石の探策を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまで、東南アジア地域での小型炭化化石が含まれている可能性のある地層を探ってきた。これらの地域は、福島県双葉層群よりも古く、しかも、被子植物の起源の地と言われてきた地域である。東南アジアから白亜紀の小型炭化化石が発見することができれば、被子植物の起源と初期進化に関する研究に大きなインパクトを与えることができる。この地域は、熱帯多雨林に覆われているので、露出しいている地層を探すこと自体が難しい状況であり、予備調査に多くの日数を要した。 日本国内で発見した小型炭化化石については、これまで、多くの炭化物の中から保存性のよい被子植物の果実や花化石を顕微鏡下で探してきた。白亜紀の炭化物のほとんどは、材や葉片であり、その中から花化石を探すには、数か月の間、ソーテングが必要であった。 2014年度から2015年度にかけて、シカゴの大型放射光施設APSにて、集中的に、マイクロCT解析をやるので、そのための旅費や経費が必要である。また、東南アジアにおける小型炭化植物化石の探索のための旅費などを使う予定である。
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[Journal Article] Pinaceae-like reproductive morphology in Schizolepidopsis canicularis sp. nov. from the Early Cretaceous (Aptian-Albian) of Mongolia2013
Author(s)
Leslie, A. B., Glasspool, I., Herendeen P. S., Ichinnorov, N., Knopf, P. Takahashi, M. Crane, P. R.
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Journal Title
American Journal of Botany
Volume: 100
Pages: 2426-2436
Peer Reviewed