2014 Fiscal Year Research-status Report
大型シンクロトロンによる後期白亜紀の被子植物初期進化群の花化石の構造解明
Project/Area Number |
24570097
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高橋 正道 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00154865)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | APS / マイクロCT / 白亜紀 / 被子植物 / 初期進化 / 小型化石 / 3次元構造 / 東南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
白亜紀における小型植物化石と言う新しいタイプの植物化石によって、被子植物の起源と初期進化に関する研究を推進している。これらの新しいタイプの植物小型化石は、1億3000万年前から6500万年前の白亜紀の年代に生育していた被子植物の初期進化群の果実および種子と花の構造を解明することにより、被子植物の進化のプロセスを形態学的に明らかにしていこうとするものである。 白亜紀の被子植物の花化石は、複数の堆積条件がそろっている特殊な地層に限って保存されており、このような地層は、これまでに、世界的にもわずかの地点に限られている。26年度では、引き続き、マレーシアでのジュラ紀~白亜紀の地層の調査を行った。これらの堆積岩サンプルを過酸化水素水で処理し、クリーニングした炭化小型化石の探索を行った。マレー半島の中央部で、炭化植物化石を含んでいる地層で約70㎏の堆積岩のサンプリングを行い、日本に輸送した。これらの堆積岩を化学処理し、中から多くの炭化物を抽出した。これらの炭化物を実体顕微鏡下で個別にソーテングをした結果、堆積時に波などの力が加わり、かなり摩耗されていたことが分かった。同一の地層から、カメ化石も発見されていることにより、おそらく、海成層であった可能性がある。 これまでにアジア地域で発見した炭化化石をシカゴのAdvanced Photon Source (APS)の2-BM-Bビームラインで、広視野・高分解能のマイクロCT像撮影を行い、このデータに基づいて、3Dレンダリング処理を行った。その中で、福島県の上北迫植物化石群から発見された後期白亜紀のクスノキ科の花化石は、腺体が外側の雄蕊の基部についており、外花被片が内花被片よりも小さいことなど、現生のクスノキ科植物には見られない特徴をもつことが明らかになり、Microlaurusと言う新属新種の花化石として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
被子植物の起源の地とされている東南アジアでの炭化植物化石の研究の可能性探ってきた。従来、熱帯地域は、有機物の分解が速く、植物化石の研究には向いていないとされてきた。それにもかかわらず、現生の被子植物の多様性が熱帯地方で顕著であることにより、被子植物の起源や初期進化を解明するために、重要な地域として注目されてきた。従来、熱帯地域では多湿と高温にさらされているために、地質としては酸化鉄を含む赤色のラテライトが多く分布しており、炭化物を含む黒灰色の非固結成の堆積岩は、ほとんどないとされてきた。今回の研究で、熱帯地域にも非固結成の黒灰色の堆積岩が存在していることが明らかになり、今後の研究を大きく展開できる可能性を示唆している。 さらに、大型シンクロトロンでの高精度でのマイクロCT像を得ることが可能になり、花構造の部分抽出・切断などの加工ができるようになった。この新たな方法で、白亜紀の新属新種のクスノキ科の花化石の構造を解明できた。現生のクスノキ科では見られない花の特徴があることを明らかにし、初期進化段階において、現生植物とは異なる初期進化のプロセスがあったことを示唆している。現生の植物の比較だけでは解明できない白亜紀における被子植物の初期進化群を明らかにした。 これまでの研究を通じ、白亜紀の被子植物の多くは、現生の被子植物に比べて、非常に小さな花をつけていたことが明らかになってきて、被子植物の初期進化のプロセスの一端を明らかにしてきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
大型放射光施設APSで得られたCT像の3Dレンダリング解析を進める。この解析は、多容量のデータを扱うために、かなりの時間を必要とする。このことにより、小型炭化化石の内部の微細構造を解明することができ、白亜紀の被子植物の果実や花などの構造に関する詳しいデータを得ることができる。 さらに、熱帯地域の白亜紀の地層での小型植物化石の探索を進める。具体的には、タイのコラート層の東側や、ミャンマーを野外調査の研究対象として計画している。これらの地域には、非固結性の白亜紀の陸成層が存在している可能性がある。特に、ミャンマーの白亜紀の地層から、琥珀に包まれた被子植物の花化石などの発見もあり、被子植物の初期進化を探るために、興味深い地域である。
|
Causes of Carryover |
これまでのこの分野の研究は、主に北半球の中緯度地域を中心とするものであった。本研究では、被子植物の起源の地として特に注目されている東南アジア地域の前期白亜紀の地層から、植物の小型炭化化石を含む層順を探すことを目指している。熱帯地域での研究が進めることができれば、インパクトの強い研究となることが期待される。特に注目して、研究の準備をしていたのが、ミャンマーである。2014年度は、ミャンマー内での少数民族との紛争が続いている状態で、充分な調査活動が困難であると判断した。そんか中で、2015年3月に、ミャンマー国内での和平協定が仮調印され、5月には、正式な合意がされることになっている。2014年は、ミャンマー国内が不安定であったために、調査を控えていたが、2015年には実施できると期待している。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまで、大型加速器で撮影している断層CTデータの解析を進めるとともに、東南アジアでの前期白亜紀の野外活動を実施する。この研究対象として、ミャンマーおよび白亜紀のコラート層を有するタイを研究対象として、進めていく予定である。
|