2013 Fiscal Year Research-status Report
アリ-アリ擬態クモ共生系の食物連鎖構造の解明:多様性創出は生態系安定に寄与するか
Project/Area Number |
24570109
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
橋本 佳明 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (50254454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市岡 孝朗 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (40252283)
遠藤 知二 神戸女学院大学, 人間科学部, 教授 (60289030)
兵藤 不二夫 岡山大学, 異分野融合先端研究コア, 准教授 (70435535)
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Keywords | 生物多様性 / 擬態 / 熱帯林 / ボルネオ / タイ国 / アリ類 / アリグモ |
Research Abstract |
(研究の目的と実施内容)本研究課題は,1)アリ擬態グモ類の多様性がアリ類の多様性を鋳型として創出されていることを,アリ類の多様性が異なる熱帯湿潤林の地表部と樹冠部,熱帯湿潤林と季節乾燥林で,アリ類と擬態グモ類の多様性を比較することで検証する,2)炭素・窒素安定同位体比分析をおこない,アリ類と擬態クモ類の栄養段階上の位置を特定することで,アリ類多様性を鋳型として創出された擬態グモの多様性増大が生態系の安定化に寄与しているのかを明らかにすることである.本目的に基づき,H25年度は8月にタイで熱帯季節乾燥林(サケラート)とプランテーション(ハジャイ周辺),3月に熱帯湿潤林(マレーシア国ボルネオ島)の地表部と樹冠層で以下の調査を実施.1)捕虫網スィーピングによるアリ類と擬態クモ,非擬態クモ類の出現率,多様性調査(111サンプル),2)40mトランセクトによるアリ類と擬態クモ類のバイオマス調査(ボルネオで21トランセクト:420サンプル),3)同調査に合わせて安定同位体比分析のためのアリ類,擬態クモ,非擬態クモ類,落葉,土壌等のサンプリング,4)アリ擬態グモ28個体、非アリ擬態ハエトリグモ40個体で捕食行動の比較実験 (成果)1)H25年度の調査サンプルについては同定作業とバイオマスの計測作業中.2)H24年度サンプルについてはアリ擬態グモ,非擬態クモ類試料の同位体分析を実施.アリ擬態クモ類がアリ類と同じ栄養段階の位置を占める等の結果を得た.3)これまでの成果を,国際クモ類学会(6月:台湾),日本昆虫学会(9月:北大),ANetアジア太平洋アリ学会(10月:マレーシア),日本生態学会(3月:広島)で発表.4)昆虫と自然(11月号)に成果の一部を発表,5)Raffles Bulletin of ZoologyとBiotropicaに論文を投稿(ともに査読中)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度の採集サンプル376個のソート,同定,写真撮影,計測等を進めているが,予想していたよりも多数のアリ擬態クモ等のサンプルが採集できたことと,作業補助員の確保等が十分にできなかったこともあり,その作業が完了できていない.また,同位体比測定機器の新機種への入れ替えのため,ボルネオ調査サンプルの分析は終了できたが,タイ調査分の分析が完了できなかったため.
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Strategy for Future Research Activity |
アリ類とアリ擬態クモ類多様性のアソシエーションを検証するためのサンプルは,これまでの調査で確保できたので,その解析を進めるとともに,本年度前半(8月予定)は,アリ擬態クモ類の多様性が生態系内の栄養段階にどのような影響を与えているのかを検証するためのバイオマス量調査をタイ季節林で実施する.年度後半は,炭素・窒素安定同位体比分析の結果と,これまでの調査結果をとりまとめ,アリ-擬態クモ共生系における多様性創出機構が生態系の安定に寄与しているかの検証を行う.その成果を受けて,国際社会性昆虫学会(オーストリア)や昆虫学会(広島大)等で発表,さらに論文の投稿を行う予定
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
採集サンプルの整理のための作業補助員の確保等が十分にできなかったために,繰越金が生じた. 次年度の研究費の計画としては,1)8月にタイで熱帯季節乾燥林(サケラート)・雨期サンプリング実施のための調査費用.2)採集サンプルの整理・同定,画像撮影,体長,形態測定等の作業を研究分担者と作業補助者で実施するための費用.3)アリ類,擬態クモ,非擬態クモ類,クモ類の餌昆虫,落葉,土壌等の炭素・窒素安定同位体比分析を分担者が実施するための消耗費の使用を予定しており,繰越金については,採集サンプルの整理作業の補助者謝金として使用する.
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