2012 Fiscal Year Research-status Report
東アジアの広域に見られるニホンスッポン種群の個体群分類学的研究
Project/Area Number |
24570110
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
太田 英利 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (10201972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 功一 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (80372035)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 外来個体群 / 交雑 / 遺伝浸透 / 個体群分類 / サテライトDNA / ミトコンドリアDNA / 台湾 / 分子系統地理 |
Research Abstract |
日本、台湾、中国、韓国、ロシアよりこれまでに得られたサンプルに、新たに国内の数カ所で採集されたサンプルを加え、ミトコンドリアDNAとマイクロサテライト分析により、形態的差異の不明瞭なスッポンの2亜種(チュウゴクスッポン: Pelodiscus sinensis sinensis; ニホンスッポン Pelodiscus sinensis japonicus)の間での遺伝的分化、および特に日本国内におけるそれぞれの分布、両者間での生殖的交流・交雑の実態解明に取り組んだ。 ミトコンドリアDNAについては、研究代表者が中心となった先行研究によって、進化速度が早いため指標部位としたND4領域(約900bp)について、すでに利用できるプライマーをはじめ配列決定のための実験手順が確定していたため、その手順にもとづいた配列データの追加を進めた。いっぽうマイクロサテライトについては、チュウゴくスッポンのものに関する文献情報にある24遺伝子座について、日本産サンプルにもとづいて増幅試験を行い、その結果、12遺伝子座で増幅が確認された。そこでこれら12遺伝子座について、データの集積を進めた. 最終的にデータが収集できたのは計96個体分のサンプルで、それらのデータにもとづくassignment test と主座標分析から、日本国内における両亜種間での交雑状況を推定した.またミトコンドリアDNAの解析結果と合わせて検討することにより、ゲノム間での遺伝子浸透の相違についても検討した. まずミトコンドリアDNAのデータを最尤法によって系統解析することにより、おもに大陸の中・南部で圧倒的に卓越するクレードと、日本や朝鮮半島で卓越するクレードが認識され、それぞれチュウゴクスッポン、ニホンスッポンと考えられた.マイクロサテライト分析により、特に日本国内において、両亜種間で大規模な交雑・遺伝浸透が認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね順調に進んでおり、特に先行研究でまったく手つかずであった核DNAの情報の取得、解析については、マイクロサテライトにおいて2桁ともなる12遺伝子座に関するデータ収集の手順を確立でき、予備的なデータの収集、解析を進めることができた.これは当初、初年度に予定していた以上の成果ということができる.また計画段階では予定していなかった、カナダのバンクーバーで開催された国際会議(The 7th World Congress of Herpetology)での本課題の発表が、主催者側のご好意により急遽可能となり、同会議内のSystematics and Taxonomy のセッションで口頭発表を行い、本分野・本課題に近い領域を扱う、世界中のおもだった研究者と討論ことで、課題の進め方や結果の解釈について、建設的な批判やアドバイスを数多くもらえたのは、計画段階ですでに会議での発表申し込みが締め切られていたため期待していなかった、研究の高度化への大きな成果であった. 一方で、当初期待されたほどでなかったと言わざるを得ないののが、研究に活用できた既存サンプルの数で、当初は、すでにエタノール液浸や超低温冷蔵庫にストックされていた計200個体あまり分についてデータ収集を進める予定であったが、長期間保存されている間の変質などから多くのサンプルでDNAの抽出や増幅に難があることがわかり(特にサテライトDNA)、結局、実際にデータが収集できたのは100足らずで、サンプルのさらなる収集が、当初の予定よりも大きな課題として残ってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は初年度、備品費として超低温冷蔵庫を購入して、収集された実験用サンプルの一時保管や、実験に使用したサンプルのバックアップ・追試用試料としてのストックに活用する予定であった.しかしながら実際にこれまで研究代表者が現所属機関に移る前に務めていた機関で長く超低温冷蔵庫に保管されていたサンプルを解凍して実験に用いたところ、上記のように特にマイクロサテライトの実験において成績は、決してよいと言えるものではなく、少なくともこうした超低温冷蔵庫を用いず、当初からエタノールに液浸され冷暗所に保管されていたサンプルによる実験成績を明らかに上回ると言えるものではなかった。 その一方で交付申請時には締めきり時期の関係から断念していた、カナダの国際会議での本課題研究の成果に関する中間発表が、主催者側のご好意により急遽可能になった経緯から、当初、超低温冷蔵庫の購入費として計上していた研究費を、国際会議参加のための旅費に転用するのが研究全体の質の向上・高度化に組めてより望ましいと判断した。そのため、超低温冷蔵庫購入費にあてることを予定していた額と、実際にカナダでの国際時会議参加旅費にあてた学との差が、次年度使用額となった. 上記のように本年度分の研究を実施した時点で、当初計画していたより多くのサンプルの新たな確保が課題として残っており、次年度はこの研究費を、より多くのサンプルを収集して本年度に明らかになった課題を克服し、研究を当初の計画通りに進めるための旅費として使用したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記のように、予備実験の段階で興味深い結果が出ながら、超低温冷蔵庫に長期間保管されていたサンプルの大半が、実験に使えない状態になってしまっているエリア、なかでも台湾の台北を訪れ、新鮮なサンプルを収集することを計画し、すでに先方の協力者にも連絡をとっている。次年度の研究費はそのための旅費として、活用したい.
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Research Products
(2 results)