2013 Fiscal Year Research-status Report
尾索動物ミトコンドリアゲノムの遺伝子構成・配置多様性の進化と尾索動物の進化
Project/Area Number |
24570113
|
Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
横堀 伸一 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (40291702)
|
Keywords | 尾索動物 / ミトコンドリアゲノム / 分子系統解析 / 遺伝子配置 / tRNA |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、サイヅチボヤFritillaria haplostomaのミトコンドリアゲノムの配列解析を進めた。昨年度見出すことの出来なかったミトコンドリアタンパク質遺伝子候補の一つの部分配列をPCRによって増幅し、その部分配列を決定した。 また、オオグチボヤMegalodicopia hiansを含むホヤ綱腸性目に属するホヤ類について、PCRによる増幅とPCR産物の直接塩基配列決定またはクローニングを介した塩基配列決定(従来法)を試みるとともに、次世代シーケンサを用いたミトコンドリアゲノムの配列決定に関し、検討を始めた。これは、尾索動物ミトコンドリアゲノムの配列が極端にATに富んでいる上に2本のDNA鎖の間で塩基組成に大きな偏りがあるため、AまたはTが連続して出現することが多く(10以上の連続)、塩基配列決定が困難な部位が多いためである。 既に塩基配列解析の終了している3種のタリア綱のミトコンドリアゲノムについては、引き続き分子系統解析を進め、論文の投稿を準備している。特に、サルパ目のRitteriella amboinensisとRitteriella pectetiのミトコンドリアゲノムにコードされるタンパク質遺伝子の進化速度は、元々進化速度の速い他の尾索動物ミトコンドリアタンパク質に比較しても極端に進化速度が上昇している。そのため、サルパ目の系統学的な位置を検討するために、様々な系統解析法(またはモデル)の利用を検討した。また、次に、腸性目ユウレイボヤ科ムネボヤ亜科のDIazona sp.のミトコンドリアゲノムの解析を開始した。 また、尾索動物ミトコンドリアtRNA(とその遺伝子)について、マボヤHalocynthia roretziを中心にその配列の特徴の抽出などの解析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
尾索動物ミトコンドリアtRNA遺伝子に関して、我々の決定したタリア綱のものを含め、再検討を行った。特に、ホヤ綱壁性目のマボヤHalocynthia roretziのtRNAについては、引き続きtRNAそのものの解析も進めている。既にマボヤミトコンドリアtRNAに見られる転写後修飾については報告を行っているが、未解析のtRNAについても、解析を始めている。ミトコンドリアゲノムの構造変化(遺伝子配置の変化)には、tRNA遺伝子の重要性が以前から唱えられており、tRNA遺伝子の発現を確認しつつ、ゲノム構造の進化との関連を議論することは重要である。 また、尾索動物ミトコンドリアゲノムでの最も進化速度が速く、ゲノム構造が大きく変化しているオタマボヤ綱のミトコンドリアゲノムの解析を引き続き行い、他の後生動物ミトコンドリアゲノムには見出されていない特徴的な構造を見出している。
|
Strategy for Future Research Activity |
尾索動物ミトコンドリアゲノムの解析に関しては、引き続き次世代シーケンサによる配列決定を交えて、解析を進める。尾索動物ミトコンドリアゲノムの解析を困難にしている理由の一つが同一塩基(特にAまたはT)の連続した出現のため、上記の様な解析により得られた配列の再確認を、改めて従来のPCR法による部分配列の増幅、塩基配列決定によって行う。
|