2012 Fiscal Year Research-status Report
藻類におけるカロテノイドを用いた化学分類と系統分類
Project/Area Number |
24570115
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
高市 眞一 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40150734)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カロテノイド / α-カロテン / シアノバクテリア / 藻類 / 紅藻 / 化学分類 / 系統分類 |
Research Abstract |
原核生物の中ではシアノバクテリアのAcaryochloris, Prochlorococcusの2属のみからα-カロテンの存在が報告されていた。なぜこの2属にのみ存在するかを調べるために、先ず立体構造を測定したところ、Prochlorococcus 3株のα-カロテンは藻類・陸上植物と同じ (6'R)-typeであったが、Acaryochloris 2株のは他の生物からは見つかっていない逆の立体構造である (6'S)-type であった。また近縁種のProchlorothrix, Prochloronからはα-カロテンは見いだせなかった。α-カロテンを合成するリコペン・シクラーゼはProchlorococcusでは同定されているが、Acaryochlorisについてはゲノム情報では相同性がある遺伝子が見つからないので、同定方法を含めて検討中である。 紅藻におけるα-カロテンの分布を分析した。紅藻は7綱に分類されるが、その内、単細胞性の4綱はβ-カロテンとゼアキサンチンのみを持っていた。多細胞性の1綱と真正紅藻綱の中の2亜綱は、さらにアンテラキサンチンをもち、ゼアキサンチン・エポキシダーゼをさらに持っていることになる。多細胞性の1綱と真正紅藻綱の大部分はα-カロテンとルテインも持っていたので、リコペン-ε-シクラーゼとα-カロテン-ε-ヒドロキシラーゼを持っていることになる。これらの遺伝子の起源を検討中である。 近縁の灰色藻はβ-カロテンとゼアキサンチンのみを、クリプト藻はさらに三重結合を含むアロキサンチンなどを含むので、アセチレン合成酵素を持つが起源は不明である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、本研究に必須の HPLC 装置はまだ充分に稼動し、またメーカーによる修理も可能と考えていた。9月に故障が生じ、メーカーの技術者が修理に来て、制御基板の故障で部品の保管期間を過ぎているので修理が不可能とのことであった。急遽、2年の分割払いでHPLC 装置を購入せざるを得なくなった。 一時的にHPLC装置が使用できなかったために研究の停滞があったが、その間に共同研究者による藻類の培養はほぼ順調に進んでいた。HPLC装置が納入されてからは分析が順調に進み、遅れをほぼ解消できた。科研費が基金化されて予算の弾力的な使用が認められたために、今回は主要装置の故障に対応が可能となった。ありがたいことである。 研究の内容は「研究実績」に書いたような達成度で、シアノバクテリアのα-カロテンの異常な立体構造と分布などは論文にまとめることができた(Takaichi et al. (2012) Plant Cell Physiol. 53: 1881-1888)。また二次共生した渦鞭毛藻はペリジニンを主成分とすることが知られているが、カロテノイドの二糖配糖体であるP457が必ず伴って存在することを見いだしたが、機能は未知である(Wakahama et al. (2012) J. Phycol. 48: 1392-1402)。また関連した共同研究を含めていくつかの論文と多数の学会発表をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
紅藻におけるα-カロテン・ルテインとアンテラキサンチンの分布を系統分類と比較しながら分析を続ける。単細胞性の4綱は代表的な種を既に分析したのでβ-カロテンとゼアキサンチンのみの存在は間違いないと思われる。多細胞性の1綱(オオイシソウ藻綱)と真正紅藻綱の中の2亜綱(サンゴモ亜科、マサゴシバリ亜科オゴノリ目)はさらにアンテラキサンチンをもっていた。特にマサゴシバリ亜科オゴノリ目におけるアンテラキサンチンの存在は系統分類と一致しない面もあるので、オゴノリ目と近縁目における分析種を増やすと共に、系統分類についても精査を試みる。多細胞性の1綱(ウシケノリ藻綱)と真正紅藻綱の大部分はα-カロテンとルテインも持っていることを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記のように急遽購入したHPLC装置は2年の分割払いとしたために、残額を支払う必要がある。ただし26年度分を減額して消耗品費用を均等に分配する前倒し請求が認められたので、全体としては研究に大きな支障が出ずに遂行できると考えている。また急遽購入した新しいHPLC装置は有機溶媒の使用量が故障した装置よりも少なくてすみ、分析時間も早くなるので、25年度の消耗品も必要量を購入でき、26年度分の減額は研究の遂行に影響がないと考えている。 消耗品として藻類株の購入、HPLCカラムと関連消耗品、有機溶媒、薬品、ガラス器具などを予定している。 国際光合成シンポジウムに参加して、シアノバクテリアのカロテノイドと、それが二次共生した紅藻や緑色植物のカロテノイド組成には大きな違いが見られるので、系統分類とカロテノイド合成系の不連続性を論じたいと考えている。
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Research Products
(36 results)
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[Journal Article] Structural confirmation of a unique carotenoid lactoside, P457, in Symbiodinium sp. strain NBRC 104787 isolated from sea anemone and its distribution in dinoflagellates and various marine organisms2012
Author(s)
Wakahama T, Lazxa-Martinez A, Taha AIBHM, Okuyama H, Yoshida K, Kogame K, Awai K, Kawachi M, Maoka T, Takaichi S
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Journal Title
J Phycol
Volume: 48
Pages: 1392-1402
DOI
Peer Reviewed
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