2012 Fiscal Year Research-status Report
甲虫化石を用いた最終氷期最寒冷期における気温低下の推定
Project/Area Number |
24570120
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Museum of Natural History |
Principal Investigator |
初宿 成彦 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (80260347)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 最終氷期 / 昆虫 / 化石 / 古気候 / アラスカ / 礼文島 |
Research Abstract |
本研究の目標は、最終氷期における日本列島の気候を推定することであり、そのためにはまず、正確な同定が要求される。初年度はまず、北海道以南にかつて分布していた甲虫が現存している可能性の高いアラスカにおいて、野外調査を実施した。現地での実質滞在日数は5日程度であったが、北海道の最終氷期から記録されているシコタンハンミョウモドキなどが得られたほか、Olophrum 属のハネカクシ、ハンミョウモドキ属(Elaphrus)など、北海道以南には分布しない甲虫類が多数、得られた。また、国内では北海道の大雪山のみに分布が知られるシラクモアナアキゾウムシなどの標本が得られた。これらは次年度以降、国内の最終氷期から産出した化石標本を同定する際、形態比較に用いられる予定である。また、島全体が氷河時代の遺存であるといわれる礼文島においても、野外調査を実施した。オオルリオサムシ、イワハマムシなど、東アジア北部や北太平洋を象徴する甲虫類が得られた。 最終年度に予定している気象データを用いた古気候解析にそなえ、気象測候所におけるデータを、インターネットを用いて収集した。本年度は東経100度、北緯20度以北の東アジアおよびアラスカに焦点を絞り、1,520か所のデータを得た。 大型植物、花粉、哺乳類など、他の材料を用いた最終氷期の日本の植生や気候に関する文献を多数、収集した。これらは昆虫を用いた結果を導いたのち、相互比較による考察を実施するのに用いる予定である。また、甲虫類をはじめとした標本の同定や整理を進め、化石標本の産出の際にすぐ同定作業ができるように、環境を整備した。 初年度は当初予定していた化石の発掘による作業を実施できなかったが、2年目以降は行い、アラスカなどで現存する在外種など、新たな化石産出種を追加したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アラスカおよび礼文島における野外調査で無事に成果を得ることができ、また気候解析のための基礎データである測候所データが、ほぼ計画どおりに得ることができた。しかし、化石調査を実施することができなかった点で、全体としては、やや遅れているといわざるを得ない。できるだけ当初の計画に追いつけるようにしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
野外ではまず、前年度に行えなかった化石調査を実施する。最終氷期の化石種のさらなる産出追加を目指す。 また、化石産出種の現在での詳細な分布データを得るために、国内において、野外調査および文献調査を実施する。これらにより、化石産地によっては、実際に古気候解析を開始し、具体的な数値データを得はじめたいと考えている。 当初は国外での分布データを得るため、野外調査(ロシア・マガダン州)を考えていたが、限られた予算内でデータを得るには標本調査のほうが効率がよいので、ロシア・ウラジオストクおよびサンクトペテルブルグにおいて、実施したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終氷期最寒冷期の地層(青森県つがる市、滋賀県彦根市)において、昆虫化石の発掘調査を行う(夏季~秋季)。 国内での最終氷期産出種について、文献を入手し、それらに基づいて整理をする(春季)。 北海道、岩手県、長野県の山地において、野外調査を行う(6~8月)。 ロシアのウラジオストクおよびサンクトぺテルブルグにおいて、標本調査を行う(冬季)。
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Research Products
(2 results)