2014 Fiscal Year Annual Research Report
甲虫化石を用いた最終氷期最寒冷期における気温低下の推定
Project/Area Number |
24570120
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Research Institution | Osaka Museum of Natural History |
Principal Investigator |
初宿 成彦 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (80260347)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 最終氷期 / 姶良Tn火山灰 / 甲虫化石 / 古環境復元 / 古気候推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
化石の発掘調査を北海道道北地方(5月)、滋賀県東近江市(9月)、滋賀県彦根市(10月)、青森県つがる市(11月)で4回実施し、2か所について昆虫化石が産出した。 このうち、青森県つがる市の調査地について、姶良Tn火山灰が降下した最終氷期最盛期の前後に産出した昆虫化石の種の、その分布や生態から、当時の古気候・古環境を推定することができた。当地ではオサムシ科、ゲンゴロウ科、ハネカクシ科、ハムシ科、キクイムシ科にわたる甲虫類が産出し、当時は針葉樹とスゲを伴った湿地環境で、開水面のある池沼も存在していたことがわかった。また現在は北海道以北にしか分布しないクロヒメゲンゴロウが産出したことから、当時は現在よりも寒冷であったことが推定された。この成果については平成27年8月に名古屋市で開催される国際第四紀学会連合(INQUA)において発表を行う予定となっており、すでに講演要旨を提出した。然る後に論文として、学会誌で発表を行うこととしている。 気候解析の際には、産出種の現生での分布状況の把握が必要となる。勤務する大阪市立自然史博物館に所蔵される甲虫類のうち、ハネカクシ科(一部)、コメツキムシ科、テントウムシ科について、標本に付された地名ラベルを一覧できる目録を作成し、出版した。 昆虫化石として産出する可能性のある種について、化石との比較を行ないやすいように、パーツ別に分解して台紙に貼りつける「分解標本」の作製も行なった。今年度はオサムシ科、エンマムシ科、タマムシ科、ゴミムシダマシ科、ハムシ科などについて、32種を追加した。これにより、分解標本は合計200種を超え、今後の化石同定に幅広く役立てることができると考えている。 第四紀学の国際誌「Quaternary International」に前年度に投稿し、受理されていた論文が印刷になったほか、大阪府八尾市の遺跡で産出した昆虫の同定を行い、当時の環境などについて推定を行なった。
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