2013 Fiscal Year Research-status Report
ビリン還元酵素二状態の高分解能中性子構造解析によるビリベルジン水素化反応の解明
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24570122
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
海野 昌喜 茨城大学, 理工学研究科, 教授 (10359549)
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Keywords | 中性子結晶構造解析 / ビリン還元酵素 / 水素 / 反応機構 / 光合成色素 / 光反応 |
Research Abstract |
開環テトラピロール骨格を持つphytobilinは、光合成生物において光合成色素としてのみならず光受容体色素としても用いられる重要な化合物群である。シアノバクテリアのphytobilinの一つ、フィコシアノビリン(PCB)は、ヘムオキシゲナーゼによるヘムの開環で生じるビリベルジン(BV)がフェレドキシン依存的な酵素phycocyanobilin:ferredoxin oxidoreductase (PcyA)によって還元され生成する。PcyA反応の特徴は、BVの2箇所に位置選択的2電子供与・2水素添加し、しかもこの二段階反応が一定の順序で起こる点にある。また、補因子を持たず、反応の過程で比較的安定なラジカル中間体が生成することも知られている。このような特徴を有するPcyAの反応機構の解明には多くの研究者の興味が注がれており、PcyAの触媒反応において、各反応段階での「立体的な」水素位置を同定することは極めて重要である。本研究では、PcyA-BV複合体の中性子結晶構造解析により水素化状態を明らかにすることを目指した。我々は、PcyA-BV複合体の中性子結晶構造解析を行い、世界に先駆けて、水素原子を含む確かな構造情報を1.95Å分解能(Bragg回折角での換算)で得た。その結果、基質BVや周辺アミノ酸の水素化状態が明らかになった。そこから第一段階の反応機構を推定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、ビリン還元酵素PcyAがビリベルジン(BV)をフィコシアノビリン(PCB)にまで還元する反応を、水素原子レベルで完全解明することが目的である。そのために、BVとPcyAの複合体だけでなく、中間体である18EtBVとPcyAの複合体の中性子結晶構造解析を行うのが目標である。二状態のうち、PcyA-BV複合体の一状態のみしか終了していない。PcyA-18EtBV複合体の良質な結晶ができていないため、進展度としては、まだ50%程度である。3年間の二年目ということを考えると、やや遅れているといわざるを得ない。 中性子用にPcyA-BV複合体結晶を成長させるのが、計画以上に大変だったことや、J-PARCのビームタイムをなかなか獲得できなかったことなどが複合的に関連して、進展が滞った。 しかし、PcyA-18EtBV複合体の結晶を得る条件は報告されており、中性子用に大きく成長させる戦略は、PcyA-BV複合体結晶の成長での経験があるため、地道に取り組んでいけば、光が見えてくる可能性が高い。
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Strategy for Future Research Activity |
特に飛躍的に研究を進展させる方法はないと考えている。 ゆえに、地道にPcyAを大量に精製し、結晶化条件をできるだけたくさん試す。PcyA-BV複合体の場合は、まずスモールスケールで結晶化条件を詳細に検索していった。蛋白質濃度をできるだけ上げて、塩濃度をできるだけ下げた結晶化条件を探した。その中で、再現性もある程度高く、大きな結晶を得る条件に絞り、次にドロップの大きさを10倍程度に大きくした。そのような条件でも必ずしも大きな結晶を得られるわけではなかったが、たくさん仕込むことによって、数多いドロップの中で、稀に非常に大きな結晶を得ることがあった。 PcyA-18EtBVの結晶でも、まず、スモールスケールで条件を絞っていき、ドロップサイズを大きくする方策で進んでいく。ただし、18EtBVは市販されていないため、現在ある試料を、結晶を大きく成長させる前に、使い切ってしまう可能性もある。そのように、18EtBVが不足してしまった場合は、有機合成をしてくれる研究協力者を改めて探すか、または中間体構造解析をあきらめて、変異体や、他のBV誘導体とPcyAとの複合体の中性子結晶構造解析を目指し、水素レベル構造から、別の視点で反応機構を解明していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外製品の金額がレートの関係などから少額だが見積額と変わってしまったため。 マイクロチューブなどの消耗品に充てる。
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Research Products
(6 results)