2013 Fiscal Year Research-status Report
結晶構造解析と新規NMR法を組み合わせた植物ホルモン複合体の相互作用解析
Project/Area Number |
24570133
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
大木 出 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (80418574)
|
Keywords | 構造生物学 / 植物 / X線結晶解析 / 植物ホルモン / NMR / 花成 |
Research Abstract |
フロリゲンは花が咲く時期を決定している植物の花成ホルモンであり、2007 年に奈良先端大の島本らによって同定された。最近になって、我々は島本らのグループと協力してフロリゲンの細胞内受容体を発見した(Taoka, Ohki ,Tsuji et al., Nature 2011)。この受容体はフロリゲン経路において中心的な役割を担っていることが現在明らかになりつつあり、従来の開花制御機構の概念を新たに組み直す必要が出てきている。本研究では構造解析の手法を駆使し、世界に先駆け、この新規受容体を含めたイネフロリゲン複合体の立体構造解析を行い、開花の分子制御機構の全貌を解明することを目的としている。 本年度はさらに花成リプレッサーによる開花の「抑制」機構を明らかにするために、花成リプレッサー、フロリゲン受容体、花成転写因子からなる「フロリゲン抑制複合体」の機能構造解析を昨年度に引き続き進め、花成リプレッサー蛋白質の高分解能構造の決定に成功した。また、詳細なin vitro pull-down実験を行い、受容体上でフロリゲンと花成リプレッサーが競合する事で花成の促進・抑制が実際に切り替わっている事をつきとめた。 また、申請書の25年度計画に記載した「結晶構造解析と組み合わせて用いる事が可能な新規NMR相互作用解析法の開発」についても研究を進めた。これは、蛋白質を安定同位体の炭素13(13C)を含むアルデヒドで修飾することでリジン残基特異的に13C標識したメチル基を導入し、NMRで解析を行う手法の開発である。標識の実験条件の検討を行い、手法をいくつかの標準蛋白質に適用し、分子量の大きな蛋白質複合体の相互作用解析に有効であることを示した(Hattori, Ohki et al., J.B.NMR, 2013)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は花成リプレッサー蛋白質を含むフロリゲン転写抑制複合体の解析を行い、より詳細な立体構造の解明に成功した。またNMR法を用いた新規の蛋白質間相互作用解析法の確立も行う事が出来た(Hattori, Ohki et al., J.B.NMR, 2013)。 これらにより、ほぼ研究実施計画書とおりの成果を上げることが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られた花成抑制複合体の立体構造を基に、受容体上でフロリゲンと花成リプレッサーが競合する分子機構の解析を進め、構造から得られた情報を基にした改変フロリゲンを用いた植物体への応用や阻害化合物のスクリーニングも行っていく予定である。 また、NMRを用いた新規の蛋白質間相互作用解析法についても、次年度は高感度化に向けた技術改良を加え、より汎用的に利用できる手法として確立していく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額が生じた要因は、研究の進捗状況に合わせ予算執行計画を変更したことに伴うものである。 主な研究費の用途としては、研究推進のために必要となる結晶化試薬や生化学実験のための試薬試薬など消耗品の購入を予定している。
|