2013 Fiscal Year Research-status Report
C―マンノシル化糖修飾による新規細胞増殖制御の分子機構研究
Project/Area Number |
24570137
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
井原 義人 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70263241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井内 陽子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20316087)
池崎 みどり 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40549747)
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Keywords | 糖質 / 糖ペプチド / TGF-β / シグナル伝達 |
Research Abstract |
(1)研究の目的:本研究では、我々が発見したC-Man化ペプチドによるトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)誘導性細胞増殖に対する抑制制御の知見をもとに、C-Man化ペプチドあるいはTSRドメインのTGF-βシグナルに対する新たな作用機構を明らかにすることを目的とする。 (2)研究実施内容:C-Man化TSRペプチド(C-Man-Trp-Ser-Pro-Trpなど)と誘導体は化学合成により調製した。C-Man化TSRペプチドやC-Man化TSRドメインが、TGF-β誘導性の細胞増殖やシグナル伝達に与える影響については、Smad 経路を中心にラット線維芽細胞NRK49Fを用いて解析した。Smadの活性化状態や核移行については、イムノブロット法などの生化学的手法や、免疫蛍光染色法を用いた形態学的解析法などにより評価した。C-Man化TSRペプチド特異的に結合する分子については、合成ペプチドビオチンに結合したものをアビジンビーズで単離し、マス-フィンガープリンティング解析を行った。 (3)研究結果:C-Man化TSRペプチドが、線維芽細胞株におけるTGF-β誘導性の細胞増殖を抑制することに関連して、そのシグナル伝達機構への影響について解析を行った結果、C-Man化TSRペプチドはTGF-βによるSmad2/3のリン酸化と核内移行を抑制することが明らかとなった。C-Man化TSRペプチド特異的に結合する分子を探索したところ、Hsc70, Myosisn 1cが同定、特異抗体により確認された。Hsc70はSmad2と細胞内で相互作用しており、Hsc70はTGF-βによるSmad2のリン酸化と核内移行の制御に促進的に作用することが示唆された。これらの知見は、C-Man化TSRペプチドが新規な経路を介してTGF-β誘導性細胞増殖を制御する可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従って研究は進捗している。C-Man化TSRペプチドが新規の経路を介してTGF-β誘導性細胞増殖を抑制する分子機構の存在を発見した。C-Man化TSRペプチドは、NRK49F細胞においてTGF-βによるSmad2/3のリン酸化と核内移行を抑制することが明らかとなった。C-Man化TSRペプチド特異的に結合する分子としてHsc70, Myosisn 1cが同定された。Hsc70はSmad2と細胞内で相互作用しており、Hsc70はTGF-βによるSmad2のリン酸化と核内移行の制御に促進的に作用することが示唆された。これらの結果は、C-Man化TSRペプチドがTGF-βシグナルを抑制する新たな分子機構を示唆しており、当初目的の一部は明らかになったと考えられるが、その詳細はいまだ不明である。
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Strategy for Future Research Activity |
C-Man化TSRペプチドが新規の経路を介してTGF-β誘導性細胞増殖を抑制する可能性が示唆された。今後は、C-Man化ペプチドの機能発現の構造特異性や、標的結合分子との相互作用と細胞機能における役割等についての解析を進める。具体的に、C-Man化TSRペプチドとSmad2/3との相互作用の異同に着目した解析を進めることで、C-Man化TSRペプチドの増殖制御の作用点にあたる分子機構を明らかにする。また現在、当初計画にあるマウス創傷治癒モデルを用いたC-Man化TSRペプチドの生理作用解析実験を準備中であり、動物個体レベルでのTGF-βシグナル制御についての解析へと展開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度研究中に使用する糖ペプチド合成の調整段階で一部遅延が生じた。マウス創傷治癒モデルを用いたC-Man化TSRペプチドの生理作用解析実験に必要なペプチド等の材料供給量が十分でなかったため本実験の実施を次年度に持ち越すこととした。このため、動物実験関連経費を中心に繰越が生じ次年度使用額が生じることとなった。 本研究では、精密化学合成により調製する各種糖ペプチドと、遺伝子組み換えにより調製するC-Man化モデルタンパク質を研究試料として細胞生物学実験や動物実験に応用していく。そこで次年度も、研究費の主たる部分は、モデルペプチドやタンパク質の合成、調製のために必要な研究試薬、材料に使用する。さらに、マウス創傷治癒モデルを用いたC-Man化TSRペプチドの生理作用解析実験の準備と開始にあたって、研究用マウスや動物実験における研究材料の調達にも研究費を充当する。
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