2013 Fiscal Year Research-status Report
細菌の感染と共生における消化管の糖脂質受容体と細菌の糖脂質抗原の役割
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24570141
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
岩森 正男 近畿大学, 理工学部, 教授 (90110022)
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Keywords | 糖脂質 / フコース転移酵素 / 消化管上皮 / 硫酸化糖脂質 / フコシル化糖脂質 / 免疫不全 / 共生細菌 / 細菌受容体 |
Research Abstract |
マウス消化管上皮に高濃度に分布するGA1は細菌感染によってフコシル化を受け、FGA1に変換されることが知られている。この現象はα1,2フコース転移酵素遺伝子の転写によってもたらされるが、細菌による宿主遺伝子の転写誘導であるのか、あるいは宿主免疫システムの細菌感染に対する応答であるのかが明確になっていない。そこで、免疫不全マウスを用いて、消化管のGA1とFGA1の含有量およびフコース転移酵素の活性を対照マウスと比較した。免疫不全マウスとして、T細胞B細胞不全Scidと対照CB17マウス、T細胞不全nudeマウスと対照Balb/cマウス、IgA分泌不全pIgR(-/-)と対照(+/+)マウスを用いた。MRS乳酸菌培地で生育できる細菌は、ScidとpIgR(-/-)がLactobacillus murinus、対照CB17とpIgR(+/+)はL. johnsoniiであり、nudeはEnterococcus feacalis、対照Balb/cはLactococcus garvieaeであった。いずれの免疫不全マウスにおいてもFGA1の含有量とGA1を基質としたα1,2フコース転移酵素活性は増加しており、細菌感染によるFGA1の誘導には免疫システムは関与せず、細菌による転写誘導であることを示していた。FGA1とFGM1の濃度に関しては、nudeマウス回腸、盲腸、結腸のフコシルGA1は対照マウスの1.6~2.5倍であったが、Scidマウスのこれらの部位の濃度は対照マウスの4~6倍に達していた。盲腸のフコシルGM1濃度はnudeマウスが対照マウスの1.4倍、Scidマウスが対照マウスの0.5倍であることから、盲腸におけるGA1のフコシル化はGM1のフコシル化に比べて亢進している事が分かった。消化管上皮糖脂質は細菌受容体活性を持ち、また消化酵素で分解されないことから、細菌を結合したまま体外に排泄されることを示している。受容体糖脂質は消化管内で細菌の拡散を防ぎ、速やかに体外に送り出す役割を担っている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖鎖特異的抗体を用いた免疫検出法により、抗原糖脂質を定量的に検出するための検量線を作製した。Lactobacillus属、Staphylococcus属、Streptococcus属より分離した糖脂質の構造解析の結果、細菌属特異的2糖糖脂質として、それぞれGalα1-2Glcα1-3DG、Glcβ1-6Glcβ1-3DG、Glcα1-2Glcα1-3DGを決定した。Lactobacillus属については、2糖糖脂質に糖鎖修飾を受けた3糖および4糖糖脂質が含まれていた。腸内細菌はGalαがα1-6結合、発酵食品の細菌はGlcβがβ1-6結合した構造であった。腸内細菌の検出には、4糖糖脂質Galα1-6Galα1-6Galα1-2Glcα1-3DGを用いて検量線を作製した。代表的な腸内細菌Lactobacillus johnsoniiに含まれる4糖糖脂質の含有量は1億個当たり0.22 μgであった。10~250 ngの抗原量を測定できるようになったことから、より簡便に定量化でき、計画は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫不全と対照マウス糞便中の優性細菌は全く異なっていることから、それぞれの細菌の糖脂質抗原の構造を決定する。免疫不全マウス糞便中の優性細菌の糖脂質は正常免疫系によって識別拒絶される構造であると考えられる。細菌属特異的2糖糖脂質に糖が結合した構造は、より強い抗原活性を示すため、宿主免疫システムによって識別される構造は3糖以上の構造である可能性がある。3糖以上の構造に着目して解析を進める。また、当該構造を認識する免疫担当細胞がT細胞、B細胞、NK細胞のいずれであるのかを明らかにする。IgA分泌不全およびNK活性不全マウスについても消化管糖鎖の変化と共生細菌の種類を調べる。
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