2013 Fiscal Year Research-status Report
カルシウムポンプにおける静電相互作用の役割と環境による影響の解析
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24570147
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
山崎 和生 旭川医科大学, 医学部, 講師 (60241428)
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Keywords | Ca2+-ATPase / 酵素反応 / 生体エネルギー転換 / 静電的相互作用 / Nanodisc |
Research Abstract |
本年度実施した研究により次の成果が得られた。 1)Ca2+-ATPaseを組み込んだNanodisc(NLPs)の精製:前年度において筋小胞体Ca2+-ATPaseをNanodiscに活性が保持された状態で組み込むことに成功していたが、ゲル濾過カラムによる分析でその純度が低いことが明らかになった。そのためより効率よくCa2+-ATPaseをNanodiscに組み込む条件を探し、さらにゲル濾過カラムによる精製を組み合わせた。得られた標品はCa2+-ATPaseとMSPのモル比が1:2に近く、純度の高い標品を得ることが出来たことが確認された。 2)Nanodiscに組み込まれたCa2+-ATPase標品を用いた静電相互作用解析:Nanodiscに組み込んだCa2+-ATPase標品を用いて、EP転換過程のイオン強度依存性からこの反応ステップにおける静電的相互作用の寄与を見積もった。その結果COS-1で発現させたCa2+-ATPaseとSRV中のCa2+-ATPaseの中間ではあるが、SRV中に近い性質を示した。また脂質のヘッドクループの電荷を変えることにより静電的相互作用の寄与が変化するという結果が得られ、EPの転換ステップにおいて、脂質の電荷が影響を及ぼしていることが明らかとなった。 3)COS-1で発現させたCa2+-ATPaseのNanodiscへの組み込み:COS-1細胞で発現させたCa2+-ATPaseをNanodiscに組み込み、活性を保持していることが確認できた。しかしながらCOS-1から精製したmicrosomeではCa2+-ATPaseの含量が低いためこのままでは精製標品を得ることは難しい。そのため発現したCa2+-ATPaseを精製するためのHisタグを付けたCa2+-ATPaseを発現させるコンストラクトを構築し、発現を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ca2+-ATPaseと脂質の相互作用を研究する上で、Nanodiscに組み込まれたCa2+-ATPase標品という均一であり、膜の裏表の関係しない系が確立し、脂質の入れ替えが自由にできるようになった。そしてこの系を用いて実際にCa2+-ATPaseの部分反応ステップにおける静電的相互作用の見積もりが可能であることが示すことが出来た。また脂質ヘッドグループを変えることによりによりCa2+-ATPaseの活性に寄与する静電的相互作用に影響が出ることが明らかとなった。これらの知見は「Ca2+-ATPase反応の各ステップにおける静電的相互作用の役割を明らかし定量化すること、及びSR膜とmicrosomeでの違いを明らかにし、活性に重要な静電的相互作用に対する脂質環境の影響について調べる」という本研究の狙いが的を射たものであることを示すと同時に、目的達成において不可欠なデータである。また、COS-1細胞で発現させたCa2+-ATPaseのNanodiscへの組み込みが可能であることが示され、今後変異体を用いた解析が可能になることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立したCa2+-ATPaseを組み込んだNanodiscの構築法を基に以下の実験を行う。 1)さまざまな脂質を含むNanodiscに組み込んだCa2+-ATPaseの機能解析:SRVから調製したCa2+-ATPaseをヘッドグループやアルキル鎖組成の異なる脂質を含んだNanodisc中に再構成し、Ca2+-ATPaseの活性を測定する。このとき塩濃度を変化させ、各反応ステップへの静電的相互作用の寄与と、そのうち脂質環境による要因を見積もる。 2)COS-1で発現させたCa2+-ATPaseとSRVから調製したCa2+-ATPaseの比較:COS-1細胞で発現させたCa2+-ATPaseをSRV標品と同様にNanodiscに組み込み、活性への静電的相互作用の寄与を見積もり、SRV由来のCa2+-ATPaseの結果と比較する。最近の研究ではSRV由来のCa2+-ATPase標品には、調節タンパクであるsarcolipinが付いてくる可能性が示唆されている。必要であれば、その影響を見積もるため、SRV由来標品中のsarcolipnの有無をウエスタンブロットで確認し、COS-1細胞中でCa2+-ATPaseとsarcolipinの共発現系を試みる。 3)Ca2+-ATPase変異体を用いた解析:脂質との静電的相互作用の寄与が明らかになった反応ステップにおいて、Ca2+-ATPase側の相互作用相手を見出すため、適当な荷電残基に変異を加え、Nanodiscに組み込んで静電的相互作用のへの寄与をみつもり、脂質との相互作用部位に関する知見を得ることを目指す。
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Research Products
(5 results)