2014 Fiscal Year Research-status Report
不安定な鉄硫黄クラスターの生合成を担う超分子マシナリーの作動機構
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24570148
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高橋 康弘 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10154874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福山 恵一 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 招聘研究員 (80032283)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鉄硫黄クラスター / 鉄硫黄タンパク質 / 生合成 / マシナリー / 分子生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄硫黄(Fe-S)クラスターは、複雑な多成分酵素系(マシナリー)の働きによって形成されることが知られている。大腸菌はiscオペロンにコードされるISCマシナリーと、sufオペロンにコードされるSUFマシナリーという2種類のFe-Sクラスター生合成系を有しており、これらが独立してクラスターの形成を担っている。近年私たちは、大腸菌のイソプレノイド代謝経路を改変することによってFe-Sクラスター生合成マシナリーの必須性を回避し、両マシナリーをコードする遺伝子群を自在に操作できる実験系を開発した。H26年度はこのin vivo実験系を駆使して、sufオペロンを欠失したバックグランドでiscオペロンの7種類の遺伝子をそれぞれ破壊した二重破壊株を構築し、それらの表現型を詳細に比較・解析することによって以下の新知見を得た。すなわち、IscS, IscU, IscA, HscB, HscA, Fdxの6つの因子は、好気条件下でISCマシナリーの機能に必須だが、嫌気的な条件下ではIscAとFdxは必ずしも必要ではないことを見出した。また、これらの変異株において、種々のフェレドキシンにおけるFe-Sクラスターの形成量を調べた結果、好気条件下でISCマシナリーの機能に必須な6つの因子は、いずれも4Fe-4Sクラスターの形成に必須であることが分かった。それらのうちIscS, IscU, HscB, HscA, Fdxの5種類は4Fe-4Sクラスターだけでなく2Fe-2Sクラスターの形成にも必須だが、興味深いことに、IscAは2Fe-2Sクラスターの形成には関与しないことが判明した。したがって、このマシナリーでは、IscS, IscU, HscB, HscA, Fdxの5種類の成分で2Fe-2Sクラスターを形成した後、IscAの働きによって4Fe-4Sクラスターに変換されると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究がスタートして3年間、関連遺伝子群をin vivoで自在に操作することによって、マシナリー成分それぞれの重要性や役割、また機能領域、機能残基などを明らかにすることができた。さらにそれらの知見に基づいて、野生型と変異型タンパク質を比較しつつin vitroでの反応を解析することにより、マシナリー成分間の相互作用について新たな知見を得ることができた。これらの新知見から、マシナリーの作動機構の理解を大きく深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
3年間の研究で得られた知見を2-3報の論文にまとめて発表する。一方、計画した項目のひとつ、Fe-Sクラスター生合成マシナリーの成分とクラスターを受け取るアポタンパク質との相互作用については、これまで捉えることができていない。今後、架橋試薬の種類や反応条件などを広げて検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた状況については、野生型/変異型タンパク質の精製条件の検討が予想より順調に進んだため、クロマト用樹脂の多くを既存のものでまかなうことができたのが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3年間の本研究で得られた知見を2-3報の論文にまとめて発表する予定であり、次年度使用額のほとんどはページチャージ代に充てる計画である。
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