2013 Fiscal Year Research-status Report
Inhibitory factor‐1によるヒトATP合成酵素の制御機構の解明
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24570149
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 俊治 東京工業大学, 資源化学研究所, 東工大特別研究員 (60618809)
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Keywords | F1-ATPase / human / motor protein / 反応素過程 |
Research Abstract |
本研究課題では第一年度に、IF1の阻害対象であるヒトF1の分子特性(回転触媒機構)と、IF1による阻害の概略を明らかにした。そして第二年度では、第一年度に見出した知見を論文出版するために、様々な分析を詳細に行った。ヒトF1の回転触媒機構はバクテリアのものと大きく異なり、さらに高速で回転する特性を持っていたために、分析・解析には一年間の時間を要した。そのため第二年度中での新しい発見は限られるが、第一年度に見出した一つ一つの科学的発見を確実にし、論文投稿(現在revise段階)を行ったという点で重要な一年であったと言える。 第二年度までの研究の結果、ヒトF1は一回転あたり9点ステップし、ATP一分子分で回転する120度中では3点の止まり(dwell)が存在する事が明らかになった。それらのdwellはATP結合を0度とすると、生成物リン酸の解離が65度、加水分解が90度であり、IF1が結合しF1を停止させるのは90度であった。この角度はATP加水分解が起きる角度であり、IF1はF1のATP加水分解過程を阻害する因子であるというウシF1のX線結晶構造解析から得られた知見と一致した。また、磁気ピンセットを用いた解析の結果、IF1はアジ化ナトリウムやMgADP阻害などの阻害様式とは異なり、F1の回転をほぼ完全にロックし加水分解方向には回転できない(無理に回すと構造が壊れる)分子状態に陥らせることが判明した。しかしその一方、ATP合成方向にF1を回転させると、IF1は阻害能を解除する事が明らかになった。これらの特性は、細胞が飢餓状態のときにIF1はF1によるATPの浪費を強力に阻害するとともに、飢餓→栄養状態へと移行した場合、滞りのなくATP合成を開始させる事に繋がっていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はIF1によるヒトF1の阻害の仕組みを明らかにすることである。しかしながら、IF1の阻害対象であるヒトF1はほとんど研究されていなかったために、ヒトF1の回転触媒機構をまず明らかにする必要があった。本申請課題の第一年度では、その解明を行い回転触媒機構とIF1による阻害機構の概略を見出すことに成功した。この点では、初年度としては十分な成果と言える。しかしヒトF1の回転触媒機構はバクテリア由来F1のもととは大きく異なっていることが明らかになり、第二年度はこれらの発見を論文出版するための実験に、予想よりも多くの時間を費やすことになった。しかしながら、2年間の研究により、ヒトF1の回転触媒機構の詳細と、IF1による阻害の概略をまとめる事が出来た事(論文Revise段階)は、その複雑な分子機構を考えると、ほぼ順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は第一年度に、多くの新しい実験事実が明らかになり進展したために、第二年で度は、第一年度に見出された事実を論文出版するために、ヒトF1の回転機構を含めた様々な実験データーを集める事に多くの時間を費やした。第三年度では、これまでに得られた知見をもとに、IF1の阻害機構に限定して深く掘り下げて研究を行う。とくに第二年度に結果を得る事が出来なかった、ヒトF1の回転とIF1の結合解離の同時観測を行う事を計画している。第三年度はこれらをまとめて、IF1の阻害機構に関する研究総括を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第二年度は、第一年度に得られた結果を論文出版するために、既存の設備・試薬を用いて測定を中心とした実験を行った為に、新規に試薬や機器を購入する事が少なかったため。 当初第二年度から開始する計画であった顕微鏡一分子蛍光分析などを、第三年度から開始する事を計画している。これらの実験は、新規に購入する機器・試薬が多いため、第二年度からの繰越金も用い、研究環境を整え実験を行う。
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[Journal Article] Evaluation of intramitochondrial ATP levels identifies G0/G1 switch gene 2 as a positive regulator of oxidative phosphorylation2014
Author(s)
H Kioka, H Kato, M Fujikawa, O Tsukamoto, T Suzuki, H Imamura, A Nakano, S Higo, S Yamazaki, T Matsuzaki, K Takafuji, H Asanuma, M Asakura, T Minamino, Y Shintani, M Yoshida, H Noji, M Kitakaze, I Komuro, Y Asano, and S Takashima
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Journal Title
Proceeding of National Academy of Sciences of USA
Volume: 111(1)
Pages: 273-278
DOI
Peer Reviewed
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