2013 Fiscal Year Research-status Report
ストレス応答に関与するシャペロン/プロテアーゼを介した細菌細胞表層の品質管理機構
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24570152
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Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
成田 新一郎 盛岡大学, 栄養学部, 准教授 (30338751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 芳展 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (10192460)
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Keywords | タンパク質品質管理 / 細菌細胞表層 / シグマE / リポ多糖 / BAM複合体 / 外膜タンパク質 / ジスルフィド結合 / プロテアーゼ |
Research Abstract |
大腸菌などのグラム陰性細菌は細胞質膜(内膜)の外側にもう一つの膜構造(外膜)を持っている。外膜を構成する因子はすべて細胞質または内膜上で合成され、専用の輸送装置の働きで外膜まで輸送される。外膜の機能が保たれていることはグラム陰性細菌の生存に重要で、細菌は表層ストレス応答機構を備えて外的環境の変化に対応している。大腸菌は複数の表層ストレス応答機構を備えているが、中でもσE経路は最も重要な表層ストレス応答機構の一つと考えられている。これまでに114の遺伝子がσEによる制御を受ける遺伝子(σEレギュロン)のメンバーとして同定されているが、機能が明らかでない遺伝子も多く含まれている。細胞表層の品質管理機構を理解するため、これらの遺伝子の働きを解明することが求められている。σEレギュロンのメンバーであるyfgC遺伝子を欠失する大腸菌は多くの薬剤に対して感受性化するほか、化学物質に対する感受性のプロファイリングから、yfgC遺伝子は外膜の生合成あるいは品質管理に働いていると考えられている。研究代表者らはYfgCの機能解析を行い、YfgCが外膜タンパク質のアセンブリと分解を促進することを見出し、この結果に基づきYfgCをBepA (β-barrel assembly-enhancing protease)と改称することを提唱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで未知であったYfgC (BepA)の機能に関して、現在までの研究により以下に記す事象を明らかにするとともに、成果を国際誌に発表することができた。BepAは亜鉛メタロプロテアーゼの典型的な活性部位モチーフHEXXHを持つが、実際にプロテアーゼ活性を持つかどうかは不明であった。精製したBepAを用いてα-カゼインの切断を観察し、金属キレーターの添加やプロテアーゼ活性部位モチーフへの変異導入によって切断活性が阻害されることを確認した。BepAの活性部位モチーフ変異体はbepA欠失株の薬剤感受性を相補できず、野生株で発現させると薬剤感受性を亢進させた。これらの結果から、BepAのプロテアーゼ活性は細胞表層の機能維持に重要であることが明らかになった。一方、これらの変異体は特定の条件ではbepA欠失株の薬剤感受性を相補することから、BepAはプロテアーゼ活性に依存しない機能も持つと考えられた。 bepA欠失株の薬剤感受性はLptEの過剰発現によって抑制された。LptEはリポ多糖の輸送に関わる外膜タンパク質LptDの生合成に関与することが知られている。LptDは合成されると2組のジスルフィド結合を持つ前駆体の状態で外膜にターゲットされ、LptEとの相互作用が引き金となって成熟体へと変換される。bepA欠失株ではこの変換の遅延が見られたことから、BepAはLptDのジスルフィド結合の組換えを伴うフォールディングを促進すると考えられた。また、LptEを枯渇させるとLptDの前駆体が蓄積したが、これらはBepAによって分解されることも明らかになった。架橋実験およびプルダウンアッセイの結果、BepAは外膜タンパク質の生合成に関与するBAM複合体と相互作用することもわかった。以上よりBepAはBAM複合体の近傍で外膜タンパク質のアセンブリを促進する一方、フォールディングが阻害された際はそれらを取り除く働きをするシャペロン/プロテアーゼであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はBepAのin vivoにおける基質を網羅的に同定するために、部位特異的in vivo光架橋法を用いてBepAと物理的に近接する因子の探索を行う。 BepAはC末端側にTPRモチーフを含むドメインを持つことが予測されている。TPRモチーフは細菌からヒトに至るまで非常に幅広い生物種において見出されたタンパク質間相互作用モジュールである。TPRモチーフはコンセンサス配列(-W4-L7-G8-Y11-A20-F24-A27-P32-)を持つ、配列保存性の低い約34アミノ酸残基から構成される。また、TPRドメインはC末端にキャッピングへリックスと呼ばれるヘリックスを持つことが多い。このヘリックスはTPRドメインの親水性や安定性に非常に重要と考えられている。TPRモチーフのアミノ酸配列は高度な多様性を示し、そのために、多種多様なリガンドと特異的に結合することができると考えられている。部位特異的in vivo光架橋実験には、光反応性のアミノ酸アナログp-benzoyl-L-phenylalanine(pBPA)を組み込んだタンパク質を細胞内で発現させる方法を用いる。pBPAはベンゾフェノン基を有しており、350-360 nmの近紫外光の照射によって励起されて、C-H結合と非特異的に共有結合を形成する。pBPAを導入したタンパク質の発現は、古細菌由来の変異型amberサプレッサーtRNAと、そのtRNAにpBPAを付加する変異型チロシルtRNA合成酵素を利用して、標的遺伝子のamberコドン(TAG)にpBPAを取り込ませる。これにより、任意の部位にpBPAを持つタンパク質を細胞内で発現させる。BepAのTPRドメインおよびキャッピングヘリックスを構成するアミノ酸残基をpBPAに置換し近紫外光の照射後、イムノブロッティングや架橋複合体の精製、MS解析によって、架橋相手を同定する。この手法により、BepAが細胞内で働いている状態において、一過的な相互作用を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度はYfgC (BepA)の機能に関する研究成果を論文にまとめ公表する作業や、研究代表者の異動に伴う研究環境のセットアップを行う期間が必要であったため、この期間に使用する予定にしていた助成金を次年度に使用することとした。 公表した論文の内容を受けて、YfgC (BepA)の機能および構造に関する解析を更に進めるために、TPRドメインを構成するアミノ酸残基の一つ一つを非天然アミノ酸に置換する実験を推進中である。次年度使用額は、翌年度分と請求した助成金と合わせて、これらの置換変異体の作製・保存・測定を完遂させるために必要な物品の購入費、人件費等に充当する。
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Research Products
(6 results)