2012 Fiscal Year Research-status Report
尾部アンカー型膜タンパク質の小胞体への配向性膜挿入と膜構造制御に関する研究
Project/Area Number |
24570157
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山本 泰憲 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30467659)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 小胞体 / 尾部アンカー型膜タンパク質 / 膜挿入装置 / 膜タンパク質生合成 |
Research Abstract |
尾部アンカー型膜タンパク質は細胞内膜系の至る所に局在し、細胞内小胞輸送、タンパク質の合成と分解、シグナル伝達、オルガネラ形成、脂質代謝など様々な重要な機能を担っている。尾部アンカー型膜タンパク質は生合成過程において、シグナル配列がリボソームの外へ出てくる前に翻訳が終了するため、トランスロコンによる翻訳と共役した小胞体膜への挿入が物理的に不可能である。このため、必然的に翻訳後に膜挿入されなければならないが、その分子機構については不明な点が多く、とりわけ高等真核細胞における非トランスロコン型膜挿入装置の実態は長い間不明のままである。そこで本研究では、尾部アンカー型膜タンパク質の膜挿入装置の分子実態を世界に先駆けて解明し、膜挿入装置の駆動機構を解析することで、翻訳後に膜タンパク質を小胞体膜に配向挿入する原理を解明することを目的とする。 本年度は、細胞質において翻訳直後の尾部アンカー型膜タンパク質のC末膜貫通領域を認識するASNA1(TRC40) ATPaseをプローブにして、尾部アンカー型膜タンパク質の膜挿入装置を生化学的に精製、同定することを試みた。その結果、ASNA1(TRC40)結合タンパク質として2つの小胞体膜タンパク質CAMLとWRBを精製、同定し、CAMLとWRBがASNA1(TRC40)と3者複合体(CAML複合体)を形成して尾部アンカー型膜タンパク質を小胞体膜へ挿入していることを明らかにした。従って、長年不明であった高等真核細胞における尾部アンカー型膜タンパク質の非トランスロコン型膜挿入装置の分子実態が、CAML複合体であることが明らかとなった(Yamamoto et al., Molecular Cell (2012))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は長年不明であった高等真核細胞における非トランスロコン型膜挿入装置としてCAML複合体を世界に先駆けて発見することに成功し、その成果を学術論文として発表した(Yamamoto et al., Molecular Cell (2012))。さらにCAML複合体の発見を契機に、膜挿入を制御する可能性がある分子を幾つか既に同定するに至っている。今後、これらの候補分子の生理機能の解析を推し進めることで、膜挿入の制御機構および膜挿入を作用点とする生命の恒常性維持の機構について全く新しいメカニズムの発見と概念の確立に繋がる可能性が高い。従って、本研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
発見した膜挿入装置CAML複合体の駆動機構の解析を推進し、翻訳後に膜タンパク質を小胞体膜に配向挿入する原理の解明を行う。具体的な方策は以下の3つである。 ①膜埋め込みプロセスの試験管内再構成:CAML複合体の全長の組み換えタンパク質を大腸菌、昆虫細胞、動物細胞の発現系を用いて作製して人工脂質膜(リポソーム)に組み込み、膜埋め込み反応を人工膜上で再構成する条件を検討する。リポソーム上での複合体の構成の変化について解析することで、反応遷移状態の分子実態を明らかにし、各分子の作用点を明らかにする。 ②膜埋め込みプロセスの構造基盤:CAML複合体およびその制御分子の結晶を作製し、構造解析を行う。分子単独の構造と複合体の状態の構造を比較することで、膜埋め込みプロセスの各遷移状態における構造変化を捉え、膜埋め込み装置の分子機械としての作動機構を構造レベルで明らかにする。 ③膜構造の制御機構と配向挿入原理の解明:試験管内再構成アッセイ系の各遷移状態を凍結し、クライオ電子線トモグラフィーにより脂質膜構造を含めて解析する。得られた脂質膜を含む3次元解析像にCAML複合体の結晶構造をフィッティングすることで、膜埋め込み装置の作動と脂質膜の構造変化の機能関係を明らかにする。得られた結果を統合し、翻訳後に尾部アンカー型膜タンパク質を小胞体膜に配向挿入する原理を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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