2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24570158
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木村 行宏 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20321755)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 金属タンパク質 / 光合成細菌 / 耐熱性 / カルシウム / ストロンチウム |
Research Abstract |
Thermochromatium(Tch.) tepidumは紅色光合成細菌の中で唯一の耐熱菌であり、そのアンテナである光捕集1反応中心膜蛋白質複合体(LH1-RC)は光合成電荷分離に必要なバンドギャップエネルギーよりも低い位置に光吸収特性を示す。本研究代表者らはこれらの異常な特性にCa2+が関与することを見出したが、その詳細な分子機構は不明である。本研究ではCa2+を生合成的にSr2+置換したSr2+変異体を用いて、蛋白質、色素、金属、アミノ酸を標的とした4通りの分析アプローチを試みる。Ca2+がどの部位に結合し、どのような構造変化を誘発して巨大な膜蛋白質複合体の耐熱化および低エネルギー吸収特性を実現しているのか、その分子機構の解明を研究目的とする。具体的には、①ATR-FTIRを用いた蛋白質のプローブ、②近赤外(紫外)ラマンを用いた色素(Trp)のプローブ、③原子吸光及び蛍光X線を用いた金属のプローブ、④プロテアーゼ及びLC-MSを用いたLH1蛋白質C末端アミノ酸のプローブを行うことにより、野生型LH1-RC複合体とSr2+変異体の分光学的特性の違いを明らかにする。 今年度は①のATR-FTIR計測システムを構築し、金属置換に伴うタンパク質やアミノ酸の構造変化を検出することに成功した。②については、近赤外ラマン測定より、色素とタンパク質の静電的な相互作用に金属イオンが関与していることを見出した。また、紫外ラマン測定による解析を進めている。③については実験系を確立し、理論値に近い値が得られている。現在、データの収集および再現性を含めて、測定を進めている。④についても予備的な実験を開始しており、各種プロテアーゼ処理によるLH1蛋白質C末端アミノ酸残基の役割について検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①ATR-FTIRを用いた蛋白質のプローブでは、計測装置の構築、測定条件の最適化を達成し、タンパク質由来の有意な信号を検出することに成功した。現在、種々の条件でデータを集積しており、研究計画通りに進んでいる。②近赤外(紫外)ラマンを用いた色素(Trp)のプローブでは、近赤外ラマンの解析は終了し、色素とタンパク質の静電的な相互作用に金属イオンが関与していることを見出した。また、紫外ラマンを用いて、特定のアミノ酸をプローブする解析も順調に進んでいる。当初の計画では266nmのレーザー光を用いる予定であったが、有意な信号が得られなかった。一方、より短波長の214nmのレーザー光を用いることにより、有意な信号が検出されている。③原子吸光及び蛍光X線を用いた金属のプローブでは、蛍光X線による解析に克服すべき問題点があり、現在検討中ではあるが、原子吸光による解析は順調に進んでおり、金属の濃度に関する新たな知見を見出している。今年度も引き続き計測を重ねることにより、信頼性の高いデータを得ることが可能であると考えられる。④プロテアーゼ及びLC-MSを用いたLH1蛋白質C末端アミノ酸のプローブは本年度以降に着手する予定であったが、実験系が確立できたので、並行して解析を進めており、Thermochromatium(Tch.) tepidum由来光捕集1膜蛋白質複合体の特異的な性質において、そのC末端部位が重要であることを示唆する結果が得られている。 以上の理由により、本研究目的の達成度の評価としては概ね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は15N、13C同位体置換した細胞を培養し、光捕集1反応中心複合体を単離精製する。これらを用いて、振動分光学的な解析を進める。①ATR-FTIRを用いた蛋白質のプローブでは、引き続きデータの取得を行い、上記同位体置換試料を用いて、得られた信号の詳細な解析を進めていく予定である。既に15Nに関しては一部データが得られている。②近赤外(紫外)ラマンを用いた色素(Trp)のプローブでは、主に紫外ラマンによる測定を進める。本手法では、トリプトファンやチロシンを選択的にモニターすることが可能である。従って、上記同位体置換試料を用いることにより、これらのアミノ酸由来のラマン信号を解析することが可能である。③原子吸光及び蛍光X線を用いた金属のプローブでは、原子吸光測定に注力する。また、新たに等温滴定カロリメトリーによる測定を取り入れ、タンパク質と金属イオンの結合比から金属結合数に関する情報を獲得する予定である。④プロテアーゼ及びLC-MSを用いたLH1蛋白質C末端アミノ酸のプローブについては、トリプシンを用いた解析からLH1のC末端が重要であることを示唆する結果が得られていることから、次年度はリシルプロテアーゼやV8プロテアーゼ等を用いてリジンやアスパラギン酸を選択的に切除し、C末端の中でも特に重要な役割を担っている部位を特定する。また、プロテアーゼ処理とATR-FTIRを組み合わせた解析も試みる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
備品類は本年度購入済みであり、装置の最適化も完了した。従って、次年度は消耗品類に研究費を使用する。具体的には、各種界面活性剤や同位体試薬、カラム剤、窒素ガスなどの試薬類およびその他の消耗品類に予算を計上した。 旅費等については、連携研究者との研究打ち合わせ及び国内学会発表の機会を設けた。また、次年度は国際光合成会議が開催されるため、その予算も計上した。 その他の項目では外部の研究機関で利用可能な等温滴定カロリメーターについて、複数回の利用を考慮し、その使用料を計上した。
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[Presentation] Detection of pigment-protein interactions in photosynthetic purple bacteria by Near Infrared Raman Spectroscopy2012
Author(s)
Mumata, T., Inada, Y., Yong Li, Arikawa, T., Wang, Z.-Y., Ohno, T., and Kimura, Y.
Organizer
Japan Analytical & Scientific Instruments Show
Place of Presentation
幕張メッセ国際展示場
Year and Date
20120904-20120907
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