2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24570158
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木村 行宏 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20321755)
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Keywords | 金属タンパク質 / 光合成 / 耐熱性 / カルシウム |
Research Abstract |
Thermochromatium(Tch.) tepidumは紅色光合成細菌の中で唯一の耐熱菌であり、その光捕集1反応中心膜蛋白質複合体(LH1-RC)は光合成電荷分離反応に必要なエネルギーよりも低いエネルギーの光を吸収する特性を示す。本研究代表者らはこれらの特性にCa2+が関与していることを見出したが、その詳細な分子機構は不明である。本研究では、Tch.tepidumのCa2+結合能を利用して、蛋白質、色素、金属、アミノ酸を標的とした4つアプローチにより、Ca2+がどの部位に結合し、どのような構造変化を誘発して巨大な膜蛋白質複合体の耐熱化および低エネルギー吸収特性を実現しているのか、その分子機構の解明を研究目的としている。今年度は以下の項目について研究を実施した。 (1)ATR-FTIRによる蛋白質のプローブ:金属置換に伴うタンパク質やアミノ酸の構造変化を検出し、同位体置換によるバンドの帰属により、その一部を同定した。 (2)紫外ラマンによる色素(Trp)のプローブ:Trpの振動を選択的に検出することに成功し、金属イオンにより変化する色素分子とトリプトファンの相互作用を観測した。 (3)原子吸光によるCa2+のプローブ:LH1-RC以外からのCa2+の汚染を防ぐ方法を検討し、再現性を含めてデータの収集を行っている。 (4)プロテアーゼ及びLC-MSを用いたLH1蛋白質C末端アミノ酸のプローブ:LH1-RCのリシルプロテアーゼ処理による選択的なリジン残基の断片化を確認し、それらの耐熱性や吸収特性を検証し、リジン残基の重要性を示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ATR-FTIRによる蛋白質のプローブでは、装置の立ち上げ及び信号の検出についてまとめた内容を欧文雑誌に掲載した。更に、現在、15Nおよび13C同位体置換試料を用いて金属置換に伴うタンパク質由来のバンドを解析している。 紫外ラマンによるTrpのプローブでは、224nmのレーザー光を用いることにより、バクテリオクロロフィルとTrpの相互作用を示すラマン信号の変化を捉えることに成功した。現在、より詳細な条件での解析を進めている。 原子吸光によるCa2+のプローブでは、LH1-RC以外からの汚染があることが判明した。この課題をクリアするため、バッファー類のCa2+除去を含めた分析方法の確立を進めており、予測値に近い結果が得られてきている。 プロテアーゼ及びLC-MSによるLH1蛋白質C末端アミノ酸のプローブでは、リシルプロテアーゼを用いることにより、Tch.tepidum由来LH1-RCの耐熱性及び吸収特性が変化すること、その変化がC末端のリジン残基に由来している可能性があることを見いだした。現在、ATR-FTIRによる解析と組み合わせた実験系を確立している。 以上の理由により、当初の研究目的に沿った形で計画が進んでおり、その達成度も概ね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ATR-FTIRによる蛋白質のプローブでは、15N、13C、及び重水置換の効果を分析し、金属結合に伴う構造変化を明らかにし、学術論文にまとめる予定である。 紫外ラマンによるTrpのプローブでは、観測されたトリプトファン由来の信号が金属置換に伴ってどのように変化しているのかを詳細に解析し、その相互作用の変化と吸収特性の変化の相関関係を明らかにする。 原子吸光によるCa2+のプローブでは、Ca2+の汚染がない分析手法を確立し、LH1-RCに含まれるCa2+の濃度の絶対値を明らかにする。また、等温滴定カロリメトリーによる測定を取り入れ、タンパク質と金属イオンの結合比から金属結合数に関する情報を獲得する予定である。 プロテアーゼ及びLC-MSによるLH1蛋白質C末端アミノ酸のプローブでは、リシルプロテアーゼを用いた解析からLH1のC末端リジン残基が重要な役割を担っていることが強く示唆されたので、再現性を含めた更なる検証を進めていく。また、V8プロテアーゼを用いてCa2+結合サイトを破壊した場合の効果について調べる。加えて、プロテアーゼ処理とATR-FTIRを組み合わせた解析を実施する予定である。
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[Presentation] Molecular mechanisms for the enhanced thermal stability and unusually red-shifted Qy transition of light-harvesting 1 complexes from thermophilic purple sulfur bacterium Thermochromatium tepidum as revealed by vibrational spectroscopy2013
Author(s)
Kimura, Y., Yong Li, Arikawa, T., Inada, Y., Wang, Z.-Y., and Ohno, T.
Organizer
16th International Congress on Photosynthesis
Place of Presentation
Hyatt Regency at The Arch
Year and Date
20130811-20130816
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