2013 Fiscal Year Research-status Report
補酵素B12関与ラジカル酵素の活性維持システムの動作原理の解明
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24570161
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森 光一 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (50379715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飛松 孝正 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30188768)
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Keywords | アデノシルコバラミン / ビタミンB12 / ラジカル触媒酵素 / 酵素の不活性化と再活性化 / メチルマロニルCoAムターゼ / MMAA蛋白質 / グリセロールデヒドラターゼ / ジオールデヒドラターゼ |
Research Abstract |
1.ヒトメチルマロニルCoAムターゼ(MCM)およびMMAAの大腸菌での発現系の構築。前年度の研究においてヒトMCMおよびMMAAの大腸菌での発現系の構築を行ったが、MCMは産生量は多いものの大部分が不活性な封入体として存在しており、一方MMAAは可溶性画分に産生されるものの量が少なく、いずれも機能解析に充分な量の精製蛋白質を得られていなかった。そこで、本年度は発現系の改良を主に行った。MCMに関しては高溶解性蛋白質であり、大腸菌のシャペロン蛋白質の一種であるトリガーファクター(TF)との融合蛋白質として発現させるためのプラスミドを構築し、低温で発現させることで可溶性蛋白質として大腸菌で大量に産生させることに成功した。発現したTF-MCM融合蛋白質は、そのままでは酵素活性が低いものの、プロテアーゼによってTFタグを切り離すことで高いMCM活性を示すことが確認出来た。MMAAに関しては、発現プラスミドはそのままで、宿主の大腸菌を変更することで産生量の改善を検討した。その結果、いくらかの改善が見られたものの、現在のところMCMほどの大量発現を行うことは出来ていない。 2.ジオールデヒドラターゼ再活性化因子(DDR)によるジオールデヒドラターゼ(DD)の再活性化の分子機構の解明。変異型DDRおよびDDを用いた生化学的研究により、DDとの相互作用や再活性化におけるDDRのヌクレオチドスイッチの分子機構を明らかにした。また、DD・DDRの間のサブユニットスワッピングに関与する両蛋白質のβサブユニットのアミノ酸の役割を明らかにした。 3.新規グリセロールデヒドラターゼ類似酵素の発現系の構築。既知のグリセロールデヒドラターゼ(GD)およびDDとは異なる特徴を有する補酵素B12関与デヒドラターゼの発現系構築を行った。封入体の形成やサブユニットによる発現量のばらつきなどの問題があったので、現在発現系の改良を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の実験計画ではMCMおよびMMAAの発現系の構築はすでに完了しているはずである。実際に幾つかの発現プラスミドの構築を行い、宿主や発現条件の検討も行った。その結果、MCMに関しては目処が立ったのに対し、MMAAに関してはまだ改良する必要があり、現在、別のタイプの2種類の発現プラスミドを構築中である。これまでのところ、十分な量の精製MCMおよびMMAAが得られておらず詳細は明らかに出来ていないものの、以前の結果でMMAAがMCMを再活性化することが示唆されているので、あと1年でこれを明らかにすべく研究を進めている。 DDRによるDDの再活性化機構の研究は、ATP結合型DDRの結晶構造解析は出来ていないが、変異型DDRおよびDDを用いた生化学的研究により、再活性化に重要なアミノ酸残基の役割を明らかにすることが出来たことでほぼ目的が達せられたと考えられる。 エタノールアミンアンモニアリアーゼ(EAL)の再活性化および補酵素B12再生系酵素に関する研究は、MCMの実験を優先させたために昨年度はあまり進めることが出来なかったが、すでにある程度の結果は得られているので、完成させることは可能であると考えている。 また、当初の実験計画にはなかったものであるが、新規GD類似酵素についての研究を始めている。これまでに大腸菌での発現系の構築を行ったが、上記の問題があったので、現在発現系の改良を行っている。この酵素は幾つかの特徴から既知酵素のような不活性化を受けにくい可能性があると考えられ、これを調べることで不活性化や再活性化を含む補酵素B12関与ラジカル酵素の活性維持システムを理解する上で重要な知見が得られると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.MMAAの発現量を改善する方法として、グルタチオン-S-トランスフェラーゼとの融合蛋白質として発現させるプラスミドおよび、コールドショックプロモーターを利用した発現プラスミドの構築を進めている。これらが完成したら発現用宿主や発現条件の検討を行う。充分な量のMMAAの発現が得られたら、MMAAがMCMの再活性化能を有することをより明らかな形で示し、どのような機構で再活性化が行われるのかを調べる。具体的には、ゲル濾過クロマトグラフィーや非変性ポリアクリルアミドゲルゲル電気泳動などを用いてMCM-MMAA複合体の形成やGTPやGDPの効果を検討する。さらに不活性化されたMCMのMMAAによるアポ化の有無などを調べ、MMAAによるMCMの再活性化機構を明らかにする。さらに、cblA型メチルマロン酸尿症の患者に見られる変異型MMAAについても同様に機能解析を行い、変異が機能にどのように影響するのかを明らかにする。 2.精製EALおよびEAL再活性化因子(EALR)を用いて、EAL-EALR複合体の形成とEALの再活性化やアポ化の関連、さらにそれらに対するATPやADPの効果を調べることで、EALRによるEALの再活性化機構を明らかにする。また、EALRの立体構造解析を行い、再活性化の分子機構を明らかにする。 3.PduOとDD、EutTとEALなどの組合せで、B12アデノシル化酵素とB12補酵素関与酵素の相互作用の有無を調べ、どのようにして各アデノシル化酵素が特定の酵素系に特化しているのかを検討する。 4.新規GD類似酵素についての発現系の改良を完成させる。この酵素は既知のGDやDDのような不活性化を受けにくい可能性があるので、精製酵素を用いてこれを確かめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では、低温での蛋白質発現を大きなスケール行うために平成24年度経費にて冷却機能付きの恒温振盪培養装置の購入を計画していたが、研究の進捗状況および設置場所の確保の関係で購入を延期し、その結果平成24年度経費に未使用額が生じた。恒温振盪培養装置は設置スペースの確保が困難であったため平成25年度予算において、すでに研究室にあった中型低温恒温庫内に設置可能な中型振盪機を購入することで、これに代えた。また、それとは別の中型振盪機を購入し、37℃恒温庫内にも設置した。当初購入を予定していた冷却機能付きの恒温振盪培養装置は約100万円であり、平成25年度に購入した中型振盪機は二台合わせても44万円であった。これが主な理由で次年度使用額を生じることとなった。 低温でのカラム等の操作用に45万円程度の中型低温チャンバー、または55万円程度のPCR用サーマルサイクラーを購入予定である。その他は試薬,器具,消耗品や外注のDNAシークエンス解析に使用予定である。
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