2012 Fiscal Year Research-status Report
ジアシルグリセロールキナーゼγを介するがん抑制機構の解明
Project/Area Number |
24570166
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
甲斐 正広 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80260777)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ジアシルグリセロールキナーゼ / 大腸がん / エピジェネティクス |
Research Abstract |
予備的実験によって推測されていた通り、DGKγ遺伝子DGKGがDNAメチル化により発現抑制されていることを確認した。具体的な結果を以下に詳述する。まず RT-PCR解析法により、正常大腸上皮細胞に比べて大腸がん由来細胞株ではDGKGの発現が著しく減少していることを示した。Bisulfite Pyrosequencing法を用いてDGKGのプロモーター領域内CpGアイランドのメチル化を定量したところ、正常細胞では10%程度の低いDNAメチル化率であったが、多くの大腸がん細胞株では極めて高いDNAメチル化率を示した(9株中6株で60%を超える)。さらに大腸がん検体中のDNAを用いてDGKGのメチル化率を定量すると、メチル化率20%を超える検体が半数を超えた一方、非がん部検体のDNAは全てメチル化率10%以下であった。以上の結果より、DGKGは大腸がんにおいてDNAメチル化により発現抑制されていることが明らかとなった。次に大腸がん細胞におけるDGKγの役割を明らかにするために、DGKG発現抑制細胞株(HCT116、DLD1など)にDGKγを過剰発現させて細胞のフェノタイプの変化を観察した。遺伝子導入効率の影響を無視できるようにDGKγの過剰発現にはアデノウイルスを使用した。MTTアッセイ法ではDGKγの発現が細胞増殖速度を有意に減少させた(コントロールの約80%)。また細胞浸潤能、細胞運動能もDGKγ発現によりコントロールの約50%に減少した。興味深いことに、これら全てのフェノタイプ変化はDGK活性を失った変異体の発現によっても観察されており、DGKγの酵素活性によらないことが示唆されている。次年度は大腸がんとDGKG発現抑制の関係についてさらに詳細に検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DGKGのDNAメチル化による発現抑制が大腸がんで起こっているという結果が極めて順調に実証された。当初予定していた実験計画を全て実施する事はできなかったが、ここまでの結果には全く問題は無い。おおむね計画通りに研究を遂行できていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目標通り、DGKγの発現抑制が細胞のがん化にどのように関与しているかを検討する。既にDGKγの発現が細胞増殖・浸潤・運動に影響を与えることが明らかになっているので、既知のシグナル伝達系におけるDGKγ発現の効果を調べる。細胞増殖系ならばMAPKの活性化、細胞運動系ならばRhoやRac、Cdc42などの低分子量Gタンパク質の活性化、刺激に応答したアクチン再構成など、様々な要素についてDGKγ過剰発現の影響を観察し、大腸におけるDGKγの細胞内機能を探る。これとは別に、DGKG発現抑制が他の遺伝子発現に影響を与える可能性も考えられる。そこでDGKG発現抑制細胞を用いたマイクロアレイ解析法により、DKGγ発現の有無による他遺伝子の発現量変化を解析し、DGKG発現抑制が細胞に与える影響を包括的に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額15575円が生じた理由としては、この残額が比較的少額であることがあげられる。前年度末に当面必要ではない安価な試薬類やプラスチックディッシュなどの消耗品を購入することも考慮したが、次年度はマイクロアレイアッセイやRac活性、Rho活性のアッセイなどやや高価なキットの利用を予定しており、この残額分を合わせた方がより有効に研究費を使用できると判断した。
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