2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24570173
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
鴫 直樹 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディシナル情報研究センター, 主任研究員 (20392623)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | tRNA / sulfur / ubiquitin / thermophile |
Research Abstract |
RNAは転写後にスプライシングや修飾などのプロセシングを経て成熟し機能を発揮する。転移RNA (tRNA) はタンパク質合成においてコドンとアミノ酸を結び付ける分子であるが、本研究ではtRNAが機能する上で必須である、立体構造の安定化やコドン認識に関わる硫黄修飾塩基の生合成機構の解明を目的とする。 理化学研究所横山茂之グループによる先行研究により、好熱菌tRNA54位硫黄修飾酵素であるTtuAについてすでに結晶構造を得ていた。決定した構造をもとに、活性部位の3つの保存されたシステイン残基やATP結合部位と推定される部位について、高度好熱菌Thermus thermophilusの相補系を構築し、変異体解析を共同研究により行った。その結果、ATP結合部位や3つのシステイン残基いずれも硫黄修飾反応に重要であることが明らかになった。上記の結果は国際誌Proteinsに投稿、受理された。 また試験管内でより詳細に反応機構を解析するために、放射性同位元素や高速液体クロマトグラフィー装置を用いて反応効率を定量する手法を確立した。特に高速液体クロマトグラフィー装置については、本研究費によりオートサンプラーを追加設置し、迅速に自動で反応効率を定量する系を構築することができた。これらの系を用いて硫黄修飾反応機構について初歩的な解析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
好熱菌内での変異体解析系を立ち上げ、重要なアミノ酸残基の特定に成功したことと、さらに詳細に反応機構を解析するための手法を構築することができた。特に前者については国際誌で発表することができた。以上により当初掲げた計画に対しておおむね順調に研究を進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築した好熱菌内と試験管内の系を活用して、複数の生合成因子間の活性化硫黄種の授受についての解析を進める。また最終段階の修飾酵素TtuAがどう基質を認識および活性化し、硫黄を導入するかをあきらかにする。また共同研究により複数の生合成因子およびtRNAの複合体の構造の決定を試み、構造に基づいた生化学的解析も行う。 修飾酵素TtuAに鉄硫黄クラスターが結合しそれが酵素活性に重要であることが示唆されている。鉄硫黄クラスターはtRNAへの硫黄導入反応に直接関与していると予想しているが、TtuAの構造安定化や、tRNAの認識に寄与している可能性もある。そこでTtuAに結合する鉄硫黄クラスターの種類や状態を分光法(紫外-可視、電子常磁性共鳴、メスバウアーなど)により決定し、鉄硫黄クラスター結合型TtuAを用いてtRNAへの硫黄の転移機構を解析する。tRNAはアデニル化中間体を経て硫黄化されることが予想されるので、32P標識ATPや質量分析により中間体を同定する。TtuAの保存されたアミノ酸の変異体タンパク質を作成し、鉄硫黄クラスター・活性化硫黄種・ATPの結合定数を測定し、反応速度、TtuAの安定性、tRNA結合への影響を解析する。さらにTtuAとtRNAのフットプリント実験も行いTtuAによるtRNAの認識機構をあきらかにする。 一連の解析から反応機構を推定することにより、RNA硫黄修飾の一つの代表的な系の詳細をあきらかにする。さらに他の系との比較をおこなうことにより、生体内の硫黄化合物の生合成機構に共通する原理を考察する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(次年度に使用する予定の研究費が生じた状況) 機器(オートサンプラー)を予定より安く購入することができたため。 (次年度の研究費の使用計画) 研究設備は私が所属する(独)産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 次世代ゲノム機能研究グループおよび部門共用の現有設備でおおむね賄うことができる。従って、研究費は主に実験用試薬及び消耗品、学会参加等のための国内旅費として使用することを計画している。
|