2012 Fiscal Year Research-status Report
やわらかなタンパク質Bachのリガンド分子による制御機構の解明
Project/Area Number |
24570175
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村山 和隆 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (40400452)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 天然変性タンパク質 / 構造変化 / ヘム結合 |
Research Abstract |
本研究課題においてはまず、高純度の精製サンプルを調製することが重要である。Bach2全長タンパク質は大腸菌による発現系でのサンプル調製が困難であったため、安定して調製可能なコンストラクトを検討したところ、331-520という領域で比較的良好に精製サンプルが調製できることがわかった。この領域はプロテアーゼ限定分解解析でバンドとして検出された部分とほぼ一致する部分であり、かつヘム結合に重要であると考えられるCPモチーフを3か所含む領域である。実際、ヘムの結合を調べたところ、331-839という長い領域での結合実験の結果と非常によく似た結合パターンを示した。これはこの領域がヘムの結合において非常に重要であることを示していると考えられ、Bach2タンパク質の解析を進めるうえで有意義な領域であると思われる。この領域に注目して物理化学的解析を進めた。分析超遠心を用いた解析では、Bach2(331-520)は溶液中でヘムの有無にかかわらず単量体で存在することが示された。システインをターゲットとした化学修飾解析では、化学修飾後のタンパク質について質量分析計を用いて修飾の有無を解析したが、いずれのシステインにも修飾が確認できることからジスルフィド結合の形成は否定的である。動的光散乱ではヘムの有無の比較において粒子径に大きな変化は見られないものの、温度プロファイルの解析から、Bach2(331-520)はヘムが結合することにより変性温度の低下が観測された。この結果よりヘムの結合による不安定化が予想され、Bach2の機能を考えるうえで非常に興味深い知見が得られた。またSAXS(X線小角散乱)実験を行い、ヘムの結合と構造の変化について検討を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ、タンパク質の発現領域を330-520とすることで、大腸菌発現系を用いて安定して試料の調製が進められることがわかった。精製プロセスをさまざまに検討し現在では高純度のサンプルが得られる精製条件を決めている。タンパク質の収量がやや低くこの点ではもう少し改善の余地があるものの、通常の物理化学的分析が可能な量のタンパク質の調製は可能としている。当該年度においてタンパク質の調製に成功し基礎的な物理化学的解析(分析超遠心、動的光散乱、CDスペクトル、ヘム結合解析、SAXS解析など)について進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
Bach2タンパク質は非常に不安定であり、現在用いている試料(331-520)であっても長期間の保存や測定は難しい。よって調製後すぐに測定可能である溶液状態での分光解析をメインに解析を進める予定である。また構造解析手段として結晶化を進める一方、X線小角散乱などもさらに推し進め、溶液状態での測定で構造情報の取得ならびにBach2の本質的性質の解明を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度内における研究の使用としては、研究を推進するにあたっての実験室の整備はほぼ整っているので主に消耗品を予定している。その他、成果を公にするための学会発表(旅費)や論文としての成果報告の際の費用(英文校閲、投稿費用)としての使用を見込んでいる。
|
Research Products
(1 results)