2015 Fiscal Year Annual Research Report
周波数領域蛍光偏光法によるアクトミオシン動作中の水和層粘性変化の反応速度論的解析
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24570178
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和沢 鉄一 大阪大学, 産業科学研究所, 特任准教授(非常勤) (80359851)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 蛍光偏光 / アクチン / 回転拡散 / 水和 / 周波数領域蛍光 / オリゴエチレングリコール / 局所粘度 / wobbling-in-cone model |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,アクチンに係留された蛍光色素Rhodamine 6G (R6G)の周波数領域蛍光偏光測定データの解析をwobbling-in-coneモデルを使って行い,R6Gの回転拡散運動についての情報抽出を行った.この解析により,アクチンに係留されたR6Gの局所回転運動速度(回転拡散係数)と回転運動可能な角度範囲,そしてG-アクチンの分子回転の回転拡散係数を算出することができた.アクチン・R6G間リンカー長が異なる3種類のR6G標識アクチン(R6G-アクチン)の解析結果から,R6Gの回転拡散係数はアクチン近傍の局所粘度を反映することが明らかになった.さらに,R6G-アクチン/水/グリセリンの3元溶液系(グリセリン濃度,8-24 wt%)を用いてアクチン周囲の水和層に摂動を加えて周波数領域蛍光偏光測定を行ったデータの解析から,バルク溶媒とアクチン近傍の水和層では,グリセリン添加による粘性変化は異なる挙動を示すことが明らかになった. 本研究課題の実施を通して得られた主たる成果は以下の通りである:(1)LN光変調器を使った新規的な方式による周波数領域蛍光偏光測定技術の開発によって,時間分解蛍光異方性の精密測定を実現した.(2)周波数領域蛍光偏光測定データの解析にwobbling-in-coneモデルを適用することにより,蛋白質周囲の水和層の流体的性質の情報抽出を行う手法を確立した.(3)蛋白質・蛍光色素間リンカー長の異なるいくつかの蛍光標識蛋白質を併せて測定することで蛍光色素の回転拡散運動情報を高い信頼性で得る手法を確立した.(4)アクチン周囲の溶媒層と,バルク溶媒が異なる流体的性質を示す溶媒和の効果を実験的に明らかにした. 本研究で確立した手法は,モーター蛋白質等が動作するときに,蛋白質周囲の場が,どのように変化し,どのように動作メカニズムに寄与するかを今後研究する上で有用である.
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