2014 Fiscal Year Research-status Report
光合成反応中心において2方向の電子移動を制御する分子機構の解明
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24570183
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大岡 宏造 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30201966)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光合成 / 反応中心 / 緑色イオウ細菌 / タイプ1反応中心 / ヘテロダイマー / ホモダイマー / 電子移動 / ESR |
Outline of Annual Research Achievements |
1.緑色硫黄細菌反応中心コアタンパクPscAの変異体作成とFTIR解析 すでに平成24年度には、一次電子供与体P840の近傍にあるアミノ酸残基、L688とV689のCys置換体のFTIRによるデータ収集は完了していた。本年度は収集データの精密化とS/N比の改善を行ったところ、1回目の解析ではノイズに埋もれていたS-H伸縮振動バンドに由来するシグナルをL688C変異体において同定することができた。このL688C変異体は、ちょうどヘリオバクテリア反応中心コアタンパクPshAのCys601に相当する変異体である。我々は1997年、ヘリオバクテリア反応中心において水素結合のネットワークを介してP800と共役しているSH基の存在を明らかにしている。本研究課題を開始するに際し、PS Iとの構造機能相関を基に、当該Cys 残基はP800周辺の近傍の比較的疎水的な膜貫通領域に存在するPshA/Cys601ではないかと推測した。今回、L688C変異体のFTIR解析データは、タイプ1反応中心において、スペシャルペア周辺の構造(フォールディングモチーフ)が極めて似かよっていることを強く示唆する結果となった。 2.ヘリオバクテリア反応中心のP+A1-に由来する電子スピン分極(ESP)信号の検出 極低温下、ヘリオバクテリア反応中心に閃光照射することにより、ESRスペクトルの経時変化を測定した。その結果、P+A1-に由来する電子スピン分極(ESP)信号を極低温下(5-20K)でのみ検出することができた。またこの信号はエーテル処理により消滅した。 3.ヘリオバクテリア反応中心の結晶化・構造解析 回折実験可能な回折強度データが得られたが(未発表)、分子置換法では位相が決定しなかった。PS Iの構造とは大きく異なっている部位の存在も期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は、昨年度からの問題点であったヘテロダイマー型反応中心Strep-PscA/His-PscA型標品の収量改善に向けて取り組む予定であった。しかし、研究実績にも記したように、他の研究面に大きな進展があり、実質的に収量改善に向けて取り組む時間がなくなってしまった。しかし緑色硫黄細菌反応中心コアタンパクPscA変異体のFTIR解析データを再度解析し直すことにより、タイプ1反応中心における構造・機能相関を強く示唆する結論が得られたことは大きな成果である。さらに、ヘリオバクテリア反応中心においてP+A1-に由来する電子スピン分極(ESP)信号を再現性よく検出できる条件を見いだしたことは、今後の大きなbreak throughとなることは間違いない。今年度の成果については、投稿論文を準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を進めていくなかで、ヘリオバクテリア反応中心においてP+A1-に由来する電子スピン分極(ESP)信号を検出することに成功した。キノン分子が一次電子受容体A1として機能していることは間違いない。このことを検証するために、本研究課題の期間延長を認めていただいた。今後、ヘリオバクテリア反応中心に含まれるキノンの分子種を質量分析MSにより同定していくことにする。また、標品からキノン分子をエーテル抽出後、再構成実験を行うことを予定している。緑色硫黄細菌反応中心に含まれるであろうキノン分子の解析も同時に進める予定である。
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Causes of Carryover |
実験計画の変更により試薬購入を控えたことと、標品調製に用いる試薬が製造・販売中止となっていたために、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
製造・販売中止になった試薬に関しては、他社の同等製品で代用できることが判明した。次年度は他社同等製品を購入して検証実験系の構築を行うこととし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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