2012 Fiscal Year Research-status Report
1分子蛍光観察手法を用いた分化初期化の単一細胞エピジェネティクス
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24570191
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
藤田 英明 独立行政法人理化学研究所, 先端バイオイメージング研究チーム, 客員研究員 (50318804)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分化 / 蛍光イメージング / 筋肉 |
Research Abstract |
本研究の目的は細胞のエピジェネティカルな変化を、1分子蛍光観察手法を用いて捉えることにある。最終的な目標は細胞初期化時のエピジェネティカルな変化を、1分子蛍光観察手法を用いて核タンパク質の動きの変化として捉えることであるが、本年度は実際にエピジェネティカルな変化が核タンパク質の動きの変化として現れるかをモデル細胞系を用いて調べた。筋芽細胞C2C12は分化誘導に伴い筋管細胞を形成するが、この分化過程で大きなエピジェネティカルな変化が起きることが知られている。そこで、本年度はH2B-GFPを発現したC2C12細胞を用い、分化に伴いヒストンタンパク質H2B動態に変化が起きるかを調べた。細胞核内でのH2B分子の移動度を調べるために光褪色後蛍光回復法(FRAP)を、局所でのH2B分子の揺らぎの大きさを調べるために蛍光相関分光法(FCS)を行った。すると、FRAPでは筋管形成後の分化誘導7日目に大きな変化が観察されたが、一方、FCSを用いた場合は分化誘導3日目に大きな変化が観察された。以上の結果から、エピジェネティカルな変化により核タンパク質の動きに変化はあるが、移動度の変化と局所でのゆらぎは別の事象を反映していることが示唆された。以上の結果をBiochemical and Biophysical Research Communications誌に発表した(Higuchi et al., BBRC, 2012)。以上の結果を踏まえ、ヒストン分子の動きではなく蛍光分子そのものの動きが核内状態を反映する可能性を考え、核以降シグナルを付与した蛍光タンパク質を恒常的に発現するES細胞を作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は細胞のエピジェネティカルな変化を核タンパク質動態を1分子蛍光イメージングによって捉えることを目標とする。このためには、細胞のエピジェネティカルな変化を反映する核タンパク質の候補が重要であり、研究提案時はヒストンタンパク質を提案していた。筋芽細胞を用いた予備的な実験により、細胞の分化に伴ってH2B動態に変化があることがわかったが、分化の程度によってその動態変化の質が異なりエピジェネティカルな変化をどのように反映しているかの解釈が難しい。ヒストン分子動態は細胞のエピジェネティカルな変化を反映する可能性が高いが、1分子観察実験に入る前に他の分子種についても細胞分化によって動態が変化するかどうかを調べることが重要と考え、現在その準備を行っている。また、クロマチンのパッキング状態が変われば、一定の大きさ以上の核内分子の拡散に影響が出るはずである。そこで、蛍光タンパク質単量体、または蛍光タンパク質2量体の拡散が細胞分化によってどのように変わるかをES細胞を用いて調べている。この実験は当初計画にはなかったが、目標達成に必要なことである。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度における研究でヒストンタンパク質と結合させた蛍光タンパク質の細胞核内での動きは細胞の分化度によって大きく異なることが示唆された。そこで、本年度はH2B-GFPの細胞核内一分子追跡を行う。一方、初年度での研究結果はH2B-GFP動態が細胞のエピジェネティカルは変化をどのように反映しているかはっきりしない面もあった。そこで、本年度は蛍光タンパク質そのものの動きが核内で細胞分化によって変わるかも調べる。クロマチンパッキング状態の変化は細胞核内のメッシュワークを変化させ、核内分子動態が分子サイズ依存で変わることが考えられる。そこで、蛍光タンパク質mKate2に核内移行シグナルを付与し、その動態が細胞の分化によって変化するかを調べる。現在、mKate2単量体とmKate2をタンデムに2つ、及び4つ繋げたコンストラクトを準備し、ES細胞分化過程における動態変化を調べる。また、4量体で発光するDsRedは、分子量はmKate2をタンデムに4つ繋げたものと大きく変わらないが、そのストークス半径は大きく異なる。そこで、DsRedをの動きが細胞分化によってどのように変わるかを調べ、mKate2の結果と比較する。もし、動きの変化が観測され、その変化が細胞核内のメッシュワーク変化を反映しているようであれば、mKate2の核内一分子動態計測を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究遂行に必要な設備備品は既にそろっているため、本年度の研究費も消耗品の購入にあてる。本年度はES細胞を用いる予定であるが、ES細胞培養に用いる培地は高額なため研究費の大部分は試薬購入に充てる。 前年度の未使用学は170円であり、誤差の範囲である。
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Research Products
(11 results)