2014 Fiscal Year Research-status Report
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24570204
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
木下 和久 独立行政法人理化学研究所, 平野染色体ダイナミクス研究室, 専任研究員 (60447886)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 染色体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、真核細胞のM期染色体構築に中心的役割を果たすタンパク質複合体「コンデンシン」を組換えサブユニットから再構成し、その分子機能と制御機構を解明することである。これまでの研究で研究代表者はコンデンシンIとIIの二種類の複合体をそれぞれ発現・精製できる発現系を構築し、さらなる最適化によって生化学的アッセイに用いるのに十分なレベルの高濃度かつ高純度の精製コンデンシン複合体の再構成に成功している。平成24年および25年度の間にコンデンシンI特有の機能の解析が飛躍的に進んだため、研究開始時当初の実施計画を変更してコンデンシンI複合体の分子解剖を中心に据えて研究を推進した。当該年度(平成26年度)においては、コンデンシンI特有のサブユニットのうちCAP-D2とCAP-Gという二つのHEATサブユニットに注目し、その働きがSMCサブユニットのATPaseサイクルとどのようにカップリングしているか調べた。その結果、ダイナミックな染色体軸構築を生み出すCAP-D2とCAP-Gの拮抗的作用に対してSMCサブユニットによるATP加水分解のサイクルが積極的に関与していることが明らかになった。すなわちATPの加水分解のエネルギーが二つのHEATサブユニットによる軸構造の形成に必須であると考えられる。またSMCサブユニットのATPaseサイクルが染色体形成のみならず、形成後の染色体の構造維持に必要であることも明らかにした。以上の結果から、コンデンシンIはSMC ATPaseサイクルと二つのHEATサブユニットの拮抗的作用を通して染色体構造の形成および維持を担うと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初の目的の通り、組換えサブユニットから再構成したコンデンシン複合体を用いた生化学的アッセイを確立し、この独自のアッセイ系による解析から従来の遺伝学的アプローチからは得られなかった全く新しい知見が明らかになった。これまで予想されていなかったSMC ATPaseサイクルの貢献とHEATサブユニットの拮抗的作用のカップリングによる新たな染色体軸形成機構が解明されつつあり、研究目的をほぼ達成出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで三年間に得られたコンデンシンIの解析の結果を論文としてまとめたので、この研究成果を国内外の学会およびワークショップにおいて積極的に発表し、関連する研究者およびコミュニティの中で議論を深めフィードバックを得ながらさらに研究を推進する。途中コンデンシンIの解析を中心に据えた研究計画に変更したために、解析途中になっているコンデンシンII複合体についてもコンデンシンIと同様の解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
コンデンシンI複合体の解析が先行して進み、その解析結果がコンデンシンI固有の特異的機能を明らかにするものであったため、この結果についての論文発表を優先する計画に変更したために未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文としてまとめた研究成果を国内外の学会およびワークショップにおいても発表し、内外の研究者およびコミュニティとの議論を深める。そのための学会発表および議論のための出張に研究費を使用する。またコンデンシンII複合体の解析のためのタンパク質の発現および精製にかかる分子生物学実験用の試薬、実験器具および消耗品の購入に研究費を使用する予定である。
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