2013 Fiscal Year Research-status Report
新規バイパス変異体を用いたHsk1キナーゼの染色体動態制御における機能解析
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24570205
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
松本 清治 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (40190532)
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Keywords | CDC7 / DNA複製 / 分裂酵母 / hsk1 / mrc1 / rif1 / 複製タイミング / 複製起点 |
Research Abstract |
真核細胞のDNA複製はゲノム上に多数散在するoriの中の実際には一部から開始する。ゲノム領域によりS期内で複製開始される時期も異なり、S期初期、中期、後期複製領域に区分できる。Cdc7は複製開始の部位とタイミングを決める重要な因子と考えられるが、その作用機序は大部分不明である。我々はHsk1(分裂酵母のCdc7ホモログ)変異を相補するMrc1(高等動物Claspinの機能的ホモログ)とRif1の変異を同定し、Rif1とMrc1はそれぞれ異なる機構で複製開始部位選択を制御することを示した。 これら制御機構を具体的に解明する目的でH25年度もMrc1とRif1の部分欠失および点変異を作成し解析した。 Mrc1の782-879aa配列(HBS)を欠失した変異株は、HU耐性(正常なcheckpoint機能)を示し、かつhsk1-89変異を部分的に相補する。Mrc1ΔHBSはHsk1結合能を欠失している。 H25年度はMrc1のcheckpoint機能に必要なSQ/TQ配列3箇所が変異した3A変異とΔHBS変異を同時に持つMrc1変異を作成したところ、hsk1変異相補能はそれぞれの単独変異より強く、Mrc1がcheckpoint依存的機能と非依存的機能の両方でhsk1変異を阻害することを確かめた。Hsk1結合にはSQ/TQ領域は不要で、両側200aaずつの配列(HBSを含む)があれば強く結合した。 Rif1機能に関して、ごく最近複数の別のグループがRif1はプロテインホスファターゼ1(PP1)を介してCdc7機能を阻害することを報告した。我々も、分裂酵母のRif1が分裂酵母の二つのPP1(Dis2とSds21)と強く結合することを確かめた。一方で、Rif1の強発現による細胞増殖阻害能はPP1とは別の機構によることを示唆する結果を得ており、その機構の解明を引き続き進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mrc1あるいはRif1欠損によってHsk1変異が相補されるメカニズムと複製起点選択メカニズムの分子レベルでの解明を目的に、Mrc1およびRif1の変異体を作製し、Hsk1変異を抑圧するのに必要な領域(変異するとバイパスできる領域)を決定しようとしている。 前年度Mrc1の782-879aa配列(HBS)を欠失するmrc1ΔHBS変異株を作成し、この変異は正常なcheckpoint機能を保持しつつhsk1-89温度感受性変異を部分的に相補し、Mrc1のHBS領域がCdc7/Hsk1機能のバイパスに重要であることを確認し、またHBS領域がMrc1-Hsk1結合に必要であることも示した。Mrc1は、HU処理によりHsk1依存的に高リン酸化を受け、mrc1ΔHBSはこの高リン酸化が見られないが、一方でHBS内のリン酸化可能配列の変異では高リン酸化は正常に起きた。そこで、今年度はHBSより前方のcheckpoint機能に重要なSQ/TQ領域のSQ/TQ以外のリン酸化可能な配列に変異を入れたところ、HU依存的に増殖阻害を示した。更にこの増殖阻害にはMrc1のHBS以降の配列が重要であることが分かった。現在、この増殖阻害に必要な領域を狭め、その分子機構を明らかにしようとしている。 Rif1機能に関しては、最近海外の複数のグループからRif1がプロテインホスファターゼ1(PP1)を介してCdc7機能を阻害するという報告があった。我々も、分裂酵母のRif1が分裂酵母の二つのPP1(Dis2とSds21)と強く結合することを確かめた。ただ、分裂酵母のRif1は大部分が複製開始部位以外と結合しており、複製部位のMCMの脱リン酸化によりHsk1機能を阻害する機構が不明である。一方で、Rif1の強発現による細胞増殖阻害能はPP1とは別の機構によることを示唆する結果を得ており、その機構を解明したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までの研究で、Mrc1のHBS領域はMrc1とHsk1との結合に必要で、その領域を欠失してもHU耐性能は維持しているがhsk1温度感受性変異株を相補できるようになる。すなわち、HBS領域がhsk1変異の増殖をcheckpoint非依存的に阻害するのに必要であると予想された。実際にcheckpoint機能に必須なSer/Tre変異とHBS1欠失は、二重にするとそれぞれのhsk1相補能より更に良く相補し上記予想が支持された。HBSを欠失したMrc1は、HU処理時のHsk1依存的な高りん酸化が起こらないが、HBS内のSer/ThrをAlaに変異しても高りん酸化が見られ、HBS領域以外がりん酸化部位であることが分かった。予備的な実験結果から、HBSはこのHBS以外の被りん酸化領域と相互作用することにより、Hsk1機能を阻害していることが考えられた。そこで、今後はHBSとMrc1の他の領域との相互作用を試験管内で結合能を調べ、また細胞内でそれぞれを別々に発現させ、hsk1変異の相補能や複製起点のfiring状態をrealtime PCRや二次元電気泳動法で個々に解析し、ChIP-chip解析でゲノムワイドに解析するなどの方法で確かめ、その相互作用によるHsk1機能阻害(複製開始抑制)の機構を解明する。 一方、分裂酵母Rif1の強発現による細胞増殖阻害能はPP1とは別の機構によることを示唆する結果を得ており、PP1結合部位の変異Rif1を強発現して、細胞増殖(染色体複製起点の複製活性)への影響を詳しく解析することによりPP1非依存的なRif1の機能を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に行う予定であった二次元電気泳動法によるDNA複製起点周辺のDNA構造解析は、解析の流れから次年度にまとめて行うことになった。それに伴い、二次元電気泳動法専用に用いる特殊なアガロースやクロスリンク試薬、UVランプ、検出用プローブ作成のための [α-32P]dCTPなどの購入予定が次年度にずれ込んだ。そのため、次年度使用額が生じた。 消耗品として、酵母組換え体作製、及びその検出のために、制限酵素、Taq、キット類を購入する。また、DNA複製起点周辺のDNA構造を二次元電気泳動法で解析する際、サザンハイブリダイゼーションを行うが、その検出用プローブ作成のための [α-32P]dCTPや二次元電気泳動法専用に用いる特殊なアガロースやクロスリンク試薬、UVランプを、Hsk1やCds1などのキナーゼ活性を測定するために[γ-32P]ATPを、アフィニティ精製や間接蛍光抗体法のための抗タグ抗体や蛍光標識2次抗体、ダイナビーズなどを購入する。また、酵母の培養のための培地類、PCR反応のプライマーとして合成DNAを購入する。 成果発表のために、平成26年度は国内学会と海外の学会へ参加するためのそれぞれの旅費に使用する。 また、論文発表のための英文校正料に使用する。
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Research Products
(3 results)