2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24570208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八代田 英樹 東京大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (20311425)
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Keywords | プロテアソーム / ミトコンドリア / タンパク質分解 / 出芽酵母 |
Research Abstract |
1)酵母からヒトまで真核生物においては共通に保存されている、タンパク質分解酵素複合体プロテアソームが持つ3種類のペプチダーゼ活性の意義 2)ミトコンドリアが正常に機能するために必要とされるプロテアソーム機能 3)真核生物にのみ存在する19Sプロテアソーム制御因子の機能解析、以上3点の項目に重点を置いて原核生物においては増殖に必須ではないプロテアソームが、何故真核生物において増殖に必須となったのかということを明らかにすることを目的に研究を行っている。 20Sプロテアソームは真核生物のみならず、古細菌と一部の真正細菌にも保存されているが真核生物のプロテアソームはサブユニットの種類を増やすことでその複雑さをまして保存されている。原核生物のプロテアソームはキモトリプシン様活性のみを持つが、真核生物においてはカスパーゼ様活性、トリプシン様活性、キモトリプシン様活性の3種類が保存されている。 また、ミトコンドリアは真核生物特有の細胞内小器官であるが、ミトコンドリア機能の維持に、やはり真核生物で保存されているユビキチン-プロテアソームシステムが必要であることが分かってきている。 さらに19S複合体は真核生物がもつ20Sプロテアソーム制御因子で19種類のサブユニットからなるが、このように多種多様なサブユニットからなる大きな複合体が20Sプロテアソームと協調してどのような働きを持っているのかよくわかっていない。 1)に関してはβ1サブユニットが持つカスパーゼ様活性に注目し、スクリーニングを開始した。過剰発現することによってβ1変異株の増殖を阻害するようなタンパク質を同定する。2)に関してはプロテアソームの変異でミトコンドリアの変異が抑圧されるために必要な遺伝子をさらに同定した。3)に関してはリッドサブユニットの変異株を作製し、その変異を抑圧する多コピーサプレッサーや偽復帰変異を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
真核生物のプロテアソームに保存されている3種類の活性に関する実験においてはβ1の活性部位に変異を持つ出芽酵母のβ1変異株を作製し、遺伝子過剰発現プラスミドライブラリーを用いて、その株内で出芽酵母の遺伝子を網羅的に過剰発現させる系を作製出来た。そして、野生型株内で過剰発現させても増殖抑制がかからず、β1変異株内で過剰発現させた場合にのみ増殖が遅延するものを単離中である。 プロテアソームとミトコンドリアとの関係に関する実験においてはプロテアソーム変異によってミトコンドリア変異が抑圧されている状態からさらにスクリーニングを行った。増殖の良くなった株が再び増殖不全となるような変異を探索した結果、ミトコンドリア融合に関わるタンパク質などを同定出来た。これらの遺伝子産物はプロテアソームの変異によってミトコンドリア変異を抑圧するのに必要なタンパク質と言える。 真核生物にのみ存在する19Sプロテアソーム制御因子の解析に関してはリッドサブユニットであるRpn8の変異株以外にRpn3に対しても変異体を作製し解析を行った。この株を用いてマルチコピーサプレッサーの単離、合成致死を示す変異の単離を行いRpn3と遺伝学的関連を持つ遺伝子を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
真核生物のプロテアソームに保存されている3種類の活性に関する実験においては、β1変異株の増殖を過剰発現で抑制する遺伝子候補をまず確定後、増殖抑制がβ1変異にのみ依存する特異的なものなのか、それとも他のプロテアソーム活性が減弱した場合においてもそれらの遺伝子の過剰発現が増殖抑制を引き起こすのか調べる。また、β1変異株の増殖抑制を引き起こす遺伝子産物がβ1活性に依存して分解される基質であるかどうかも調べる。 プロテアソームとミトコンドリアとの関係に関しては既に得ている関連遺伝子を元に引き続きプロテアソーム変異によりミトコンドリア変異による増殖遅延が抑制されるのか解析を継続する。さらにミトコンドリアの変異を抑圧する変異を他にも多数単離しているので、それらの変異がプロテアソーム活性に与える影響を調べる。またプロテアソームの変異株から、ミトコンドリア機能が変化して増殖が良くなった株を単離する。これらの解析によりミトコンドリアの状態とプロテアソームの状態を感知し、ミトコンドリアとプロテアソームの活性が最適になるように調整するようなシステムを明らかにする。 真核生物にのみ存在する19Sプロテアソーム制御因子の解析に関してはこれまで解析を行ってきたRpn8関連遺伝子とRpn3とで単離されたRpn3関連遺伝子との関係を調べ得られた関連遺伝子の効果がサブユニット特異的なものなのか、リッド全体に影響を与えるものなのか調べる。また、必須遺伝子欠損株をプラスミド上の遺伝子で増殖可能にしておき、この株に変異原処理を行う。プラスミドはURA3 マーカーのものを用い、5-FOAによるカンターセレクションを行い、必須遺伝子を欠損させたまま増殖出来る株の候補を得る。得られた株の解析によりプロテアソームが増殖に必須である手がかりを得る。
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Research Products
(8 results)