2012 Fiscal Year Research-status Report
出芽酵母Hansenula polymorphaにおける細胞核分配機構の解明
Project/Area Number |
24570214
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前川 裕美 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80399683)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 微小管 / Hansenula polymorpha / SPB / 出芽酵母 / 非対称分裂 |
Research Abstract |
本研究では、S. cerevisiaeとは比較的遠縁のメタノール資化酵母Hansenula polymorphaの細胞核分配の分子機構とその制御を解明することを目指し、本年度は主に細胞核分配様式を明らかにすることと細胞内構造の可視化を試みた。 1.DAPI染色によりH. polymorphaの細胞核はS. cerevisiaeとは異なり G1期から分裂期開始まで母細胞中にランダムに位置していることが分かった。そこで、間接蛍光抗体法を用いて細胞周期に於ける微小管配置を検討したところ、特にG1期からG2期初期にかけてS. cerevisiaeと比べて細胞質微小管が著しく少ないことが分かった。 このことから、H. polymorphaとS. cerevisiaeは同様の細胞核分配機構を持っているものの、細胞周期における微小管配置に違いが見られることが示唆された。 2.細胞核分配を生細胞中で観察するためには蛍光蛋白質を用いた細胞内構造の可視化が重要であると考えられる。H. polymorphaのドラフトゲノム配列から alpha-チューブリン(HpTUB1)、ヒストンH3(HpHHT1)、セントロメア特異的ヒストンCENP-Aのホモログ相同遺伝子(HpCNP1)を見いだし、蛍光蛋白質との融合遺伝子をゲノムに挿入することにより微小管、ゲノムDNA、セントロメア領域を可視化することができた。GFP-CNP1は核内で一つの点を形成しており、S. cerevisiaeやS. pombeと同様に全染色体のセントロメア領域が核内でクラスターを作っていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はH. polymorphaを細胞増殖モデルとして確立する為に、(1)ヘテロタリック株の構築、(2)遺伝子破壊やタグの導入に利用できるツールの構築、(3)蛍光蛋白質を用いた細胞内構造の可視化を行う計画であった。 (1)我々のグループが独自に決定したドラフトゲノム配列中の接合型遺伝子座の塩基配列が別のグループが公開している配列と一部異なっている可能性を示唆する結果を得た。そこで、ヘテロタリック株の構築を行う前に、接合型遺伝子座のクローニングと塩基配列の解析を行っている。 (2)H. polymorphaにおいて遺伝子破壊を効率よく行うためにはKu80遺伝子破壊などにより非相同性組換えを抑制することが有効であるとの報告がある。しかし、Ku80遺伝子破壊株では減数分裂後の胞子生存率が著しく低いことが分かった。この性質は劣勢であったため、Ku80遺伝子破壊二倍体株を親株として目的の遺伝子破壊を行った後、野生型Ku80遺伝子を再導入するという手順を確立した。このことにより生育に必須の遺伝子の破壊株の作成が可能となった。 (3)H. polymorphaのドラフトゲノム配列から alpha-チューブリン(HpTUB1)、ヒストンH3(HpHHT1)、セントロメア特異的ヒストンCENP-Aのホモログ相同遺伝子(HpCNP1)を見いだし、GFPとの融合遺伝子を含むプラスミドを作成した。これらをゲノムに挿入したところ、微小管、ゲノムDNA、セントロメア領域を可視化することができた。また、Sfi1蛋白質など一部のSPB構成因子と相同性のある蛋白質の細胞内局在の解析から、既に複数のSPB局在蛋白質を見いだしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究からH. polymorphaの細胞核の細胞内配置は細胞周期の初期には厳密な制御を受けていないことが分かった。 S. cerevisiae と比べてG1期からG2期初期の細胞質微小管が少ないことが明らかとなり、このことが細胞核のランダムな核内配置の原因であると考えられる。細胞質での微小管形成活性が細胞周期で変化している可能性が考えられる。今後は、細胞質微小管形成能がどのように制御されているかを明らかにすることを目指す。そのために、まず、γチューブリン複合体がどのようにしてSPBの細胞質側に結合するかを明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(B-A)が生じた状況 PCRに用いるプライマーを注文予定であったが、鋳型とするプラスミドの構築が遅れたため。 次年度の研究費の使用計画 主に分子生物学実験試薬や生化学実験試薬、PCR用のプライマーの合成などの物品購入に使用する。一式の価格が50万円以上の物品購入は計画していない。また、学会に参加し研究成果を発表するために国内旅費を支出する計画である。
|