2013 Fiscal Year Research-status Report
出芽酵母Hansenula polymorphaにおける細胞核分配機構の解明
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24570214
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前川 裕美 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (80399683)
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Keywords | SPB / Hansenula polymorpha / 出芽酵母 / 細胞質微小管 / 非対称分裂 |
Research Abstract |
本研究では、S. cerevisiaeとは比較的遠縁のメタノール資化酵母Hansenula polymorphaの細胞核分配の分子機構とその制御を解明することを目指している。本年度は2013年度の研究ではS. cerevisiaeと比べて細胞質微小管数が少ないという特徴があることを明らかにした。本年度はこの特徴をもたらす分子的な違いを明らかにしようと試みた。 先ず、H. polymorphの細胞質微小管数がS. cerevisiaeより少ないのは微小管重合中心であるSPBの構造又は機能に違いがある為である可能性を検討した。S. cerevisiaeの微小管重合蛋白質及びSPB構成蛋白質のH. polymorphのドラフトゲノム配列中を基に相同蛋白質を検索したところ、ガンマチューブリン複合体の構成因子であるTub4、Spc98、Spc97及びSPB構成蛋白質であるSfi1、Mps3、Spc72蛋白質を見出した。これらの因子とGFP蛋白質の融合蛋白質をH. polymorph細胞内で発現させ、細胞内局在を調べたところ、全てSPBへの集積が見られた。更に、細胞周期におけ局在変化を調べたところ、Sfi1、Mps3、ガンマチューブリン複合体は細胞周期を通じて常にSPBへの局在が見られるのに対して、Spc72はG1期からG2期まではSPBへの局在は見られず、分裂後期が開始する数分前にSPBに集積するという細胞周期に依存した局在制御を受けることが明らかになった。また、SPC72遺伝子を構成的な発現プロモーターを用いて野生型細胞中で発現させたところ、G1期においてもSPBに局在が見られ、細胞核の細胞内配置に変化が見られることから細胞質微小管機能の亢進が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は 細胞核分配の生細胞観察及び 細胞核分配の生細胞観察を行う計画であったが、昨年度中に先行して行った細胞核分配の生細胞観察の実験結果に基づいて、平成25年度に予定していたSPB構成因子の同定及び機能解析を行った。また、昨年度より継続している接合型遺伝子座の解析ではホモタリズム機構の概要を明らかにした。 (1)SPB構成因子の同定:S. cerevisiaeのガンマチューブリン複合体の構成因子(Tub4、Spc98、Spc97)及びSPB構成蛋白質であるSfi1、Mps3、Spc72蛋白質と相同性がある蛋白質をコードする遺伝子を見いだし、細胞周期での細胞内局在の解析を終了している。細胞周期依存的に局在変化する因子を見いだしている。 (2)SPB構成因子の機能解析:細胞周期依存的に局在変化することから細胞質微小管形成能制御の鍵となる分子の候補としてSpc72に注目し、機能解析を行った。SPC72遺伝子を構成的なプロモーターから発現させたところ、細胞質微小管機能が亢進していることが示唆される表現型がみられることから、H. polymorphaに特徴的な細胞質微小管構成に重要な因子としてSpc72蛋白質を同定した。 (3)接合型遺伝子座の解析:既知の接合型遺伝子座の近傍に第二の接合型遺伝子座を見いだした。この2つの接合型遺伝子座間の染色体領域には低頻度に逆位が見られること、この逆位が接合型転換のメカニズムとして働いていることを示唆する結果を得ている。この知見は達成目標の1つであるホモタリズム(自家接合性)の分子機構の解明に繋がると期待できる。 以上のように、計画よりも早く関連因子の同定が進んでおり、当初計画以上の進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究からH. polymorphaの細胞質微小管の機能制御にはSpc72のSPBへの局在の有無が重要であることが明らかになった。構成的な発現によりG1期にもSPB局在が観察されることから、SPC72遺伝子の転写が細胞周期で制御を受けている可能性が考えられる。そこで、先ずSpc72蛋白質の細胞周期での発現制御の解析を進める。その為にはH. polymorphaの細胞周期を同調する手法を確立することが必要である。細胞周期制御因子のON/OFF、またはエルトリエーションによる同調を試みる。また、Spc72蛋白質の局在がSPB構造にどのような変化をもたらすかについて電子顕微鏡観察法を用いて検討する。 更に、SPB構造変化がSPB複製により生じる2つのSPB(古いSPBと新しいSPB)の間で偏りが見られるかを検討し、H. polymorphaにおける非対称分裂の制御にどのように関与しているかを明らかにすることを目指す。S. cerevisiaeでは複数の独立した制御によりSPBの非対称性が保証されることが明らかになっているが、H. polymorphaでの制御機構と比較することによってより根源的な制御機構が明らかになると期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
電子顕微鏡観察用の試料作製の為の物品購入を予定していたが、試料作製の条件を検討する予備実験が遅れたため。 主に分子生物学実験試薬や生化学実験試薬や電子顕微鏡観察用試薬、PCR用のプライマーの合成などの物品購入に使用する。一式の価格が50万円以上の物品購入は計画していない。また、学会に参加し研究成果を発表するために国内旅費を支出する計画である。
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