2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞質分裂におけるダイナミンファミリー分子の機能と分子機作
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24570218
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
祐村 恵彦 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70183986)
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Keywords | ダイナミン / 細胞質分裂 / アクチン / ミオシン |
Research Abstract |
ダイナミンは, エンドサイトーシスなどの時に細胞膜から小胞を切り離すのに働く重要なタンパク質である。近年,ダイナミンは細胞質分裂にも重要であることが明らかになったきている。また,ダイナミンの阻害剤は,細胞質分裂をターゲットとした新しいクラスの抗癌剤として注目されてきている。しかし,ダイナミンの細胞質分裂における作用機作の詳細は不明であり, 膜輸送だけでなく細胞骨格との関連が必要であると考えられる。本研究では, 細胞質分裂におけるダイナミンの機能と,その分子機作を明らかにすることを目的とする 。細胞性粘菌では5つのダイナミン様遺伝子が存在するので、すべての遺伝子欠損細胞について細胞質分裂との関連を検討した。3つのダイナミン欠損細胞で細胞質分裂の異常が認められ、細胞は多核化した。このうち2つのダイナミン欠損細胞ではミオシンIIが分裂時に正常に集合できず, 結果的に多核細胞になることが分かった。アクチンについても、GFP-ABDを形質導入することで調べた結果、分裂面への集合量が減少していた。また, 新規のダイナミン阻害剤の効果についても調べ、細胞質分裂を阻害することが分かった。これらの細胞を界面活性剤で処理して細胞骨格だけにしても、ダイナミンは細胞骨格に結合していたことなどから、ダイナミンはアクチンと直接もしくは間接的に結合して細胞質分裂に寄与している可能性が高いことが分かった。ダイナミンは、細胞膜の動態に関与するので、分裂時の脂質の動態を新たに開発された脂溶性の蛍光色素を用いて可視化した。分裂時には、細胞膜脂質が分裂面に向けて流れていることを見いだした。この現象にダイナミンが関与するか今後調べていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画に従い、GFP-ミオシンIIを発現したダイナミン欠損細胞での分裂時のライブイメージングにより,ミオシンIIの集合異常の素過程を調べた。その結果、ミオシンIIは分裂面に量的には正常に集合するものの、分裂面の数カ所に凝集し、分裂溝が正常にできない で、細胞質が分裂面で突出し、最終的に細胞質分裂ができないことが分かった。また、新規のダイナミン阻害剤の細胞質分裂阻害の効 果について調べたところ、同じような細胞質分裂異常が見られた。分裂面にはミオシンIIとともにアクチンも集合するので、ダイナミン欠損細胞でのアクチン繊維の状態についても検討した。その結果、アクチン繊維は分裂面に集合するものの、繊維の長さが短くなっていることが明らかになってきた。ダイナミンの細胞内分布について、蛍光抗体法を用いて調べた。その結果、ダイナミンの2つについて分裂面に局在することが明らかになった。さらにダイナミンのライブイメージングを行なうため、GFP-ダイナミンベクターを作成し、細胞に発現させたところ、分裂面に集合することが分かった。細胞膜の動態についても、観察する方法が確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
ダイナミンは自己集合してらせん構造を形成する。ダイナミン分子の動態を1分子もしくは超分子レベルで追跡することで, 分裂面で のダイナミンの自己集合の詳細を明らかにする。これらの観察には,全反射蛍光顕微鏡を用いる。また、ダイナミンが直接もしくは間接的にアクチン繊維に作用する可能性が出てきたので、こちらについても検討する。また、分裂時の膜脂質の動態を新たに開発された脂溶性の蛍光色素を用いて研究した結果、分裂面に流れていることが分かったので、変異細胞でこれらの定量をすることで、ダイナミンが膜の流動にも関与するのかを確かめる。これまで、細胞質分裂に関与するダイナミン遺伝子3つのうち、2つまで細胞内の分布などを調べてきたが、最後の1つについてもGFP融合タンパク質のコンストラクトを完成させて観察したい。さらにこれら3者の役割分担について今後研究を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究は研究計画に沿って行っている。論文投稿料が必要でない専門誌に論文を掲載したため、出費が少なくすんでいる。また画像処理のアルバイトも今のところ量が少ないので、自分でやっており、出費を押さえた。 細胞培養関連試薬、プラスチック消耗品、分子生物試薬類、蛍光試薬類、顕微鏡関連消耗品、一般試薬などの消耗品と、成果発表のための旅費、画像処理関連のアルバイト代、論文投稿料に使用する。
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