2013 Fiscal Year Research-status Report
環境グルコース濃度に応じたトランスポーター分子の機能発現制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
24570221
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
齋藤 成昭 久留米大学, 分子生命科学研究所, 准教授 (30352123)
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Keywords | グルコース / 分裂酵母 / 輸送体 / 糖代謝 / 転写制御 |
Research Abstract |
本研究は、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeをモデル生物として使用し、グルコース輸送体(トランスポーター)の機能発現制御メカニズムを解明することを目的としている。分裂酵母には8つのグルコース輸送体遺伝子(ght1~8)が存在している。分裂酵母は、ヒト血糖値程度(約0.1%)の低濃度グルコースしか存在しない環境でも活発に増殖できるが、昨年度までの研究により、そのような低グルコース環境での増殖にはGht5が必要であり、かつ充分であることが明らかとなった。そこで本年度は、Ght5の転写発現および局在制御について重点的に検討した。 Ght5のmRNA量は、低グルコース環境に移すと速やかに増加するが、それにはCaMKキナーゼ(CaMKK)とAMP依存性キナーゼ(AMPK)が必須であった。ght5遺伝子の発現は、高濃度グルコース存在時にはZn フィンガー型の転写抑制因子によって抑制されていることが判明したが、上述のCaMKK、AMPKは、細胞外部のグルコース濃度に応じてこの転写抑制因子の機能を調節していることも明らかとなった。これらの結果により、環境グルコース濃度変化に応じたGht5トランスポーターの遺伝子発現制御メカニズムの一端が明らかになったものと考えている。 またGht5タンパク質の局在制御についても新たな知見が得られた。このタンパク質は細胞膜上に局在化するが、一様ではなく、高グルコース環境では、細胞中央部の膜上に蓄積していた。低グルコース環境に移すと、細胞両端部に蓄積し、次いで細胞全面に観察されるようになった。低グルコース環境で特異的に生育不全を示す変異体を解析したところ、そのような局在制御には、小胞輸送経路やアクチン骨格制御に関わる遺伝子が必要であることが分かった。これらの因子の役割について、引き続き解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、分裂酵母におけるグルコース輸送体の機能発現制御を、分子細胞生物学的・遺伝学的側面から理解することを目的とする。実績の概要欄に述べた通り、当該年度において、環境グルコース濃度の低下に伴うGht5遺伝子の発現調節機構を明らかとし、また局在制御に関わる遺伝子群を同定した。実験は計画通りに実施できており、またおおむね想定の範囲内に収まる結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、26年度には、グルコース輸送体の局在制御に関わるメカニズムの解析、発現制御機構の解析を引き続き実施する。これまでのところ、研究はおおむね順調に進展しており、計画変更は予定していない。
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Research Products
(6 results)