2012 Fiscal Year Research-status Report
走化性情報システムの理解を目指した細胞極性、運動の分子機構の解明
Project/Area Number |
24570224
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上村 陽一郎 独立行政法人理化学研究所, 細胞シグナル動態研究グループ, 上級研究員 (20321599)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 走化性 / 細胞極性 / 細胞運動 / TorC2 / PKB / Ras |
Research Abstract |
本研究では、走化性における細胞極性形成と細胞運動の分子機構を細胞性粘菌のTORC2-PDK-PKB(以下、TPP)モジュールの解析から明らかにする。そこで、以下3つの研究課題を計画した。1. 細胞極性と適応反応(RasCを介した適応機構の解明)。RasCは走化性物質の刺激により適応的な反応ダイナミクスを示す。この機構を詳細に理解するには、試験管内での再構築が必須となる。そこで今年度は必要となる試料の調製を行った。RasCはGST融合タンパク質として大腸菌で発現、大量精製することに成功した。また、RasCのGEFであると示唆されるAleA複合体は、細胞性粘菌の抽出液から精製する方法を確立した。これらを用いてRasCの活性状態を検出できる条件が整いつつあり、今後予定している細胞抽出液からのGEF、GAP同定につながる結果である。また、高純度のRasCはRasC結合タンパク質の同定にも使用可能であり、非常に有用となる。2. TPPモジュールの自己組織化と自発運動の関与。TPPモジュールの自発活性化はRasC依存的、PIP3非依存的であった。また、TPPの活性は自発運動で観察される重合アクチンの濃縮する領域近傍に観察された。さらに、Latrunculin処理した細胞ではTPPの自発活性が顕著に減少した。この結果は、TPPの活性化と自発運動と深く関わることを示唆する。3. 細胞運動を制御するTPPモジュールの下流因子の解析。PKB基質のうちRasGEFN, RasGEFS, GAPQの破壊株を作製しそれらの走化性能を調べたが、現在のところ顕著な異常は観察されない。この結果は、PKBの基質であるRasGEFN, RasGEFS, あるいはGAPG、GAPQが重複した機能を持つ可能性を示唆する。PI5Kに関しては破壊株が得られず、増殖に必須である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
走化性における細胞極性と細胞運動の分子機構を明らかにするため、以下3つの研究課題を実施している。1. 細胞極性と適応反応(RasCを介した適応機構の解明)については、低分子量Gタンパク質RasCの活性制御を生化学的に調べるため、RasC 、AleA、細胞抽出液の調整を完了している。これらを用いた試験管内での活性測定の予備実験もすでに終了した。2. TorC2-PDK-PKB(TPP)モジュールの自己組織化と自発運動の関与については、予定していたTPP活性化のRasC、PIP3依存性と、自発運動の際に観察される重合アクチンとの共局在と阻害剤を用いたTPP活性の影響を調べた。3. 細胞運動を制御するTPPモジュールの下流因子の解析では、計画通りPKBの基質であるRasGEFN, RasGEFS, GAPQの破壊株を作製し、基本的な解析を終えた。PI5Kに関しては破壊株が得られず、増殖に必須である可能性が考えられた。このように、ほぼ予定通りに研究計画は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 細胞極性と適応反応(RasCを介した適応機構の解明)については、低分子量Gタンパク質RasCの試験管内での活性測定を確立し、AleAあるいは細胞抽出液中のGEF、GAP活性の有無を検討する。また、同時に、RasC結合因子を細胞抽出液中から探索し、GEF、GAPの候補因子を同定する。2. TorC2-PDK-PKB(TPP)モジュールの自己組織化と自発運動の関与については、生細胞でその活性を検出するため、TorC2各サブユニットの細胞内局在について蛍光タンパク質を用いて検討する。さらに、全反射顕微鏡を用いた一分子観察をおこない、細胞膜上での拡散係数や解離係数を定量的に取得、解析する。3. 細胞運動を制御するTPPモジュールの下流因子の解析では、計画通りPKBの基質であるRasGEFN, RasGEFS, あるいはGAPG、GAPQが重複した機能を持つ可能性がある。そこで、各々の二重破壊株を作製し、走化性における機能を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)