2012 Fiscal Year Research-status Report
低分子量Gタンパク質間クロストーク制御による細胞移動と軸索伸長メカニズムの解析
Project/Area Number |
24570226
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
戸井 基道 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究グループ長 (50344213)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 低分子量Gタンパク質 / 細胞移動 / 神経軸索伸長 / 細胞骨格 |
Research Abstract |
これまでの解析から、線虫RIN-1タンパク質が低分子量Gタンパク質の1つRac1(線虫ではCED-10タンパク質)と相互作用する事を明らかにしている。24年度は、哺乳類の相同タンパク質であるRin1が相互作用することが知られているRasおよびRab5のGタンパク質との相互作用に注目して解析した。 まずYeast-two hybridの系を用いて相互作用解析を行った。RIN-1のC末端側の約450アミノ酸領域に、Rasと相互作用するRA domain、Rab5と相互作用するVPS9 domainが存在し、各タンパク質との相互作用に必要な事が推測されていた。その領域の野生型配列や各ドメインを欠失させた変異体配列をベクターに組込み、またGタンパク質側も野生型、不活性型、活性型それぞれを組み込んで、RIN-1とGタンパク質それぞれを酵母に発現させた。その結果、線虫RIN-1は不活性型RAB-5とVPS9 domainで結合すること、しかしながらRASホモログであるLET-60とは相互作用しないことを明らかにした。また、CED-10との相互作用には、VPS9 domainとその直ぐN末側にあるロイシンリッチな配列が必要である事が分かった。 次に、これらの相互作用解析から得られた結果が遺伝学的に個体の中でどの様な意義を持つのかを解析した。まずRIN-1が実際にRAB-5の活性化制御に関わるのかを調べるために、rin-1変異体の表現型解析を行ったところ、rab-5変異体で見られるような強いエンドサイトシス異常や膜タンパク質の局在異常は観察されない。同様に、他のRab5活性化因子であるRme6やRabex5とも遺伝学的相関を示さなかった。これらの結果から、RIN-1はRAB-5活性化ドメインを有しまた相互作用するが、その制御は非常に弱いか、輸送するタンパク質依存的である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各Gタンパク質とRIN-1タンパク質間の相互作用の実態を明らかにし、特にCED-10タンパク質との相互作用に必要なアミノ酸領域を明確にする事が出来た。これにより、CED-10とRAB-5がほぼ同じ領域に結合することが分かった。これらにより、RIN-1が有する生化学的特性の一端を理解すると同時に、クロストーク機構にRasは関与しない事を示している。これにより来年度以降にRIN-1/Rac1/Rab5の関係に焦点を絞り、お互いの機能的相関を解析する事ができ、目的の1つを達成したと言える。 また、もう1つの目的であった各タンパク質群の線虫体内での関係を明らかにすることについても、それぞれのGタンパク質に依存した表現型解析とそれらの間の遺伝的関係を明らかにする事が出来た。これにより、RIN-1を介したGタンパク質群のクロストークについて、生化学的意義と細胞生物学的意義を結び付けるための重要な結果が得られたと言える。これらの結果とこれまでの成果を併せて論文を作製し、投稿する事が出来ているので、当初の目的は順調に達成できていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
RIN-1とCED-10/Rac1、あるいはRIN-1とRAB-5間のクロストーク制御を明らかにするために、各変異体を用いてその生体内でそれぞれのタンパク質の挙動を解析する。各タンパク質にGFPを融合させた遺伝子を導入し、野生型と変異体における局在の変化を観察する。観察するGFP融合タンパク質も、野生型・GTP結合型(活性化状態)・GDP結合型(不活性化状態)を用いることで、各状態のタンパク質がどの様に影響を受けるかを明らかにする。特に細胞移動中や軸索伸長中の神経細胞に注目して、形態変化時にどのような局在変化が起きるのかを明らかにする。また、活性化型あるいは不活性型のタンパク質を過剰発現させた際に細胞形態変化がどう影響するのか、相互作用するタンパク質の局在がどう変化するのかを調べる。 さらに、RIN-1が制御する細胞移動と軸索伸長に関して、それぞれの移動に必要なガイダンス分子とその受容にRIN-1が関与するのかどうかを解析する。RIN-1タンパク質はそのN末端側に細胞膜受容体と相互作用するSH2ドメインを有しており、膜タンパク質と相互作用する可能性が示唆されている。線虫背腹軸に沿った細胞移動に関しては、腹側への誘引シグナルとしてUNC-6とその受容体UNC-40が働いており、逆に背側への反発シグナルとしてSLT-1と受容体SAX-3が働いている。したがって、これらの受容体とRIN-1が直接相互作用しうるのかを生化学的に解析する。また受容体を蛍光タンパク質に融合させて線虫神経に発現させ、細胞膜上での分布パターンを野生型とrin-1変異体で比較し、RIN-1がその動態に関与するのかを調べる。これにより、細胞外からのシグナルがどの様にRIN-1を介してGタンパク質群の活性制御に繋がっていくのかを理解する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究補助員雇用に必要な人件費として160万円を計画している。年間を通じて雇用する。また、学会参加の旅費として10万円、線虫飼育用の培地やシャーレ購入のための消耗品費として15万円、残りを論文投稿時の諸費用として計画している。
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